目覚めの感覚
あの後、俺は自主練を行う事にした。
何か悩み事がある時は身体を動かして頭をスッキリさせる。
前世の僕もそうやってきた。
いつも通りの訓練だと意味がない。なので俺は少し内容を変えることにした。
今回、俺の目的は様々な地形での訓練だ。
森林、岩場、村の中。
俺は様々な場所を走り回り、剣を振るう。
魔法を使いたかったのだが、流石に街中で魔法を使うわけにはいかない。流れ弾が当たるかもしれないからな。
「……やっぱ少し動きづらいな」
やはり地形も環境も違うせいで動きにくい。
林の中で爆走出来るのだから今回もいけると思ったのだが、現実はそう簡単にうまくいかないらしい。
まあ、あの林は大体道を覚えてしまったから、歩けるのは当たり前か。
とまあ、そんな感じで訓練を続ける。
村の人は俺の訓練を微笑ましい感じで見る。
なんだろう……なんか視線がムズかゆい。
「獣心流――忍猫足」
足音を立てず、仮想の敵に気づかれないよう物陰から物陰へ移る。
一人で集団ゲリラに襲われた際を想定した訓練だ。
音を消し、気配を消して敵の後ろに回る。そして剣を敵の首を刎ねる。
それの繰り返し。敵に接近して首を刎ねる作業。
何も刎ね飛ばす必要はない。頸動脈さえ切ってしまえば戦えないのだから。
それを何十回か繰り返したとこで俺は訓練をやめた。
「……ふ~」
剣を鞘に仕舞う動作をして終わり。
意味のない行為だが、儀式みたいなものだ。
そんなことを思ってると、突然森から悲鳴が聞こえた。
「「!!?」」
悲鳴の聞こえた方角に俺は咄嗟に振り替える。
同時に響く破壊音。
遠くはない。走れば間に合う距離だ。
「……行かなくちゃ」
俺は破壊音のした方角へ向かった。
走る。
山の中を疾走し、悲鳴の聞こえた方へと。
「(魔物…なわけないか)」
一瞬、魔物の可能性を考慮したけど、すぐに却下した。
森の中とはいえ人里に近いこんなところに近づくわけがない。
どうせ野犬か何かの野生動物だろう。それなら雷魔法で威嚇すれば追い払えるはずだ。
けど、何か嫌な悪寒がする。
なんというか、ねっとりとした寒気を感じる。
早くいかなければ取り返しのつかない事になるような何かがるような気がしてならないのだ。
「(……たぶん、勘違いだろうな)」
思い過ごしであってくれ。
そう思いながら俺は走った。
そんなことを思ってると、目的の人影が見えてきた。
何やら尻餅を付いている。おそらく何か“怖い物”と遭遇しているのだろう。
右手に魔力を集中させて狙いをつける。
この木陰から抜ければ目標が……。
「うっ!?」
突然、咽返るような凄い匂いがした。
臭い。けどソレだけじゃない。
何か、変な感じになるような臭いだ。
心臓が高鳴る。
嗅ぎたくない。もっと嗅ぎたい。
頭がボーとする。
もっと嗅ぎたい。嗅ぎたくない。
「ハハッ……」
ああ、本当に何だこの感覚は……。
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