初めての友達


 この世界には人間以外にも亜人という知的生命体が存在する。

 一見すれば人間っぽいのだが、人間とはまた違った進化を遂げた生物の総称である。

 獣人、エルフ、魚人、一つ目…。

 様々な種類が存在しており、大半の者たちが人間とはあまり良い関係ではない。

 当然であろう、同じ人類でも仲良く出来ないのだから、姿形が違う別種の生物と良好な関係など築けるわけがない。

 流石に見つけ次第殺せとか、奴隷にして売り捌くとか、そこまでひどいレベルではないが、迫害されているのは事実だ。


 色白い肌に金髪、そして長く尖った耳。

 この特徴に該当する亜人は一つしかない。

 エルフだ。 

 


「あ、ありがとう……」


 お礼を言われて、ハッと我に返った。

 今は彼女とお話をしているだからそのことに集中しなくては。


「大丈夫?怪我無い?あるなら魔法で治すけど

「ううん、大丈夫だよ」


 力なく笑うエルフ耳の美少女。

 一瞬強がりだと思ったが、この様子だとなさそうだ。


「しっかし君も大変だね。亜人というだけであんな目に遭うなんて」

「そ、そんなことないよ。ソレに今日はマシかな。いつもならもっと大きい人も来るから」


 なるほど、普段はもっと徹底的に痛めつけられるのか。

 こういうのはどこの世界も一緒だな。

 子供は残酷だ。少しの違いだけで迫害しようとする。


「ねえ、なんで……なんで、助けてくれたの?」

「ん?」


 少女は小動物のように震えながら聞いてくる。


「別に。僕が……俺がそうしたいからしただけだけど?」

「でも、僕なんか助けたら……君がいじめられるかも……」


 良くある話だな。

 いじめを助けたら、助けた子がターゲットにされる。

 その上助けた筈の子は見捨てた上に、自分がターゲットにされるのを恐れていじめに加担する。

 僕も……そうだったからね。


「大丈夫。元から友達なんていないから。それに俺は強いし」


 しかし、今世なら大丈夫。

 屋敷から出ないせいで友達は一人もおらず、俺自身は大人相手にしても勝てる程に強い。

 いじめっ子なんて返り討ちだ。



「じゃあ、僕が友達になってもいい?」

「え?」


 思いがけない発言に驚いてしまった。

 しかしそれを拒絶と受け取ったのか、その子は泣きそうな顔になった。


「ご、ごめんね……。やっぱり、亜人と友達なんて、嫌だよね……」

「いやいやいや!そ、そんなことないよ! いいよ、友達になろう!」

「ほ、本当?」

「ああもちろん!」


 俺が肯定すると彼女はパァと花が咲くように笑った。



「そういや、名前を聞いてなかったな。俺はアルコ。アルコ・オルキヌスだ。」

「あ、アティレス……」

「いい名前じゃないか!」


 愛想笑いしながら言うと、ルーヴは顔を真っ赤にして俯いた。

 あと、後半が聞き取れなかったのだが、もしかして苗字か?


「じゃあボール遊びでもするか」

「うん!」


 こんな感じで、俺はアティレスと遊んだ。

 そのあと、こっぴどく叱られたのは言うまでもない。

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