マイノリティマイナー

剣也

第1話 見える

PiPiPi PiPiPi PiPiPi


耳障りな電子音で目が覚める


今朝もスッキリとしない朝の目覚めのようだ

さっきまで見ていた夢のせいなのはわかっている


アラームを止めようとスマホを持つ手がぼんやりと光って見える

これもいつもの見慣れた光景


俺にはオーラ的な何かが見えているらしい

自分の事なのに懐疑的なのは他人と共有できないからしょうがない


昨日の花火、綺麗だったね


これができないし

仮に同じように見える人がいたところでその人の見ているものと

俺が見ているものと同じとは限らない

そもそも幻覚や思い込みなのかもしれない



とは言っても俺に見えているものは暗がりでぼんやり光っている程度


意識して目を凝らすと明るいところでも見えない事はないのだが

ぼんやりですらなくうっすらろ陽炎のように見えるだけ


漫画やアニメの登場人物のように全力全開で見えるわけではないから日常生活が眩しくて辛いなんてこともなく

霊能者のようにオーラから何かを敏感に感じる取れるわけでもなく


まさにただ見えるだけ

まったく、飛蚊症かよ




朝の貴重な時間をそんな自分にとっての当たり前の事の再確認に使うのは

きっと寝ぼけている証拠だな



この微妙な能力、いや厨二ではないから体質と表現しよう


この体質を知っているごく一部の知人はすごいじゃんと言のだが

見えたからと言ってどうなるわけでもない

酒の席でのネタにすらならないよ


知人程度だからこそ口を滑らせる事もたまにはあるけど

友人達にはこんな微妙な体質は絶対言いたくはない


友人だけに遠慮なくまだ厨二かよと揶揄されるに決まってる


まだ厨二どころかかつて厨二だった事はないはずなんだが

周りから見たら厨二に見えていたなんてあり得そうではある


こんどそれとなく聞いてみよう



厨二判定されていたならダメージでかいよな



今朝も混んでけど座りたいな

おっ、あのおっさん、次あたりに降りそうだ



オーラ見えると口が滑った結果

私のオーラ、どんな感じと聞かれるのもストレスだよな


適切な例えなのかはわからないが

レントゲン写真を撮ることは機材があれば出来るけど

それを見て診断するのは医者で無いと無理


そう伝える事が最近は多い

我ながら上手い例えだと思うのだがよく不満そうな顔をされる


思惑と違う回答だからと不満な顔をされるとこっちも不快になるよ

あら、残念くらいのライトな表情に抑えて欲しい


きっと思慮が浅いから人を不快にさせるんだろうな


もっとも俺にしたって思慮が浅いからこそ口を滑らせて

不快になってる訳だから偉そうな事は言っていけない気もする


ほら、すぐ降りた

座れてラッキー


俺にしてみれば風邪をひきやすいくらいの些細な特徴だけに

病院に通うほどでもなく

職場に迷惑かけるほどでもなく

それだけに意識しないとつい口が滑ってしまう


もう何十年も付き合ってきた特徴だけど

人に話して盛り上がるようなエピソードなんてほとんどないし

そもそも積極的に話もしないのだけどたまに口を滑らせる


馬鹿な事を考えているうちに電車が降車駅に着いたようだ

さ、気持ちを切り替えて今日も家族のために仕事を頑張ろう



それにしてもただオーラが見えるだけなんて


見えたからと言って何がわかるわけでもなく

話のネタにしても盛り上がりに欠ける


こんな才能よりあと身長が3センチあった方がよかったな


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