金曜日
第580話 政よりお祭り事が大事
「で、お前、建国すんの?」
昼飯時、ナットが直球で聞いてきた。
まあ、朝来た時から聞きたそうにしてたもんな。
「ミオンとも話して、うちの島の探索が終わるまでは考えないことにした」
「えー……、ぐはっ!」
いいんちょの肘打ちがナットにクリティカルヒットしたのか悶えるナット……
「いや、そんな気を使わなくていいんだけど。どうせ次のライブで聞かれまくるだろうし」
隣でうんうんと頷くミオン。
今はまだやりたいこと、やらないといけないことが溜まってるし、それが落ち着いたら北端の塔を目指す予定。
で、エメラルディアさんに手伝ってもらうのは、やっぱりバーミリオンさんと同じで加減ができないだろうしで無しになった。
代わりに白竜姫様の側に居てもらうことにして、代わりにエルさんに同行してもらうことに。ミオンの護衛をメインにしてもらえれば俺も安心だし。
「げほっ……、だよな!?」
「それでも、えーって言うのはダメでしょ」
と手厳しい、いいんちょ。
「でも、妖精が増えるってのは気にならないのか?」
「そりゃ気になってるけど、増えただけ守ってあげる責任も増えるしさ」
「うーん、考えすぎじゃねーの? 二人がログインしてなくても、ちゃんとやってるんだろ?」
「まあ、そうだけど……」
年末年始とか、来年の修学旅行とか、ログインできない期間が長くなることも考えないとなんだよな。
うーん、不在時のことを考えて、もうちょっと防衛力を高めた方がいいのかな。
………
……
…
「そういえば、次の依頼でソースが欲しいって話をしてたと思うのだけど、どう言うソースがあるのか把握してるのかしら?」
「「ぁ」」
そういえば全然知らない……
なんかコメントにウスターソースがあるとか言うのは見たけど、それ以外のソースとか調味料も全然だ。
「私もそんなに詳しくないし、ワールドクエストも南の島も一段落したから、しばらくはアミエラ領をメインに活動するつもりなのよ」
「なるほど」
ベル部長と『白銀の館』の人に任せっぱなしもまずいよな。
「どうしましょう?」
「うーん、ゲイラさんたちに、これ以上お願いするのもなあ……」
「そこは専門家の方がいいんじゃない? 二人も知ってるマスターシェフさんのところにお願いするのはどうかしら?」
「あー、なるほど」
確かにめっちゃ詳しそうだし、死霊都市にお店持ってるって聞いたな。
死霊都市の食事会イベントとかもやってくれてたし、ゲイラさんとも顔見知りのはず。食料品の取引を定常的にお願いしてもいいかもしれない……
「問題は連絡を取る方法かな?」
「そうですね」
ゲーム外で連絡とかするつもりはないし、当面は手紙でやりとりとか?
アージェンタさんとも相談した方が良さそうだし、まずはログインして連絡を取るところからだな。
………
……
…
残り1時間ほどだけど、ログインしてまずは……
「アルテナちゃんたちのおやつは私が」
「あ、さんきゅ」
そっちはミオンとエルさんに任せて、俺はまずアージェンタさんに連絡だな。
ギルドカードを手に、昨日の今日なのにと一瞬ためらったけど、まあいいかと話しかける。
「アージェンタさん、すいません。今、大丈夫ですか?」
『ショウ様。何かありましたか?』
「えっと、ちょっと別でお願いしたいことがあってですね……」
本土にあるソースやら調味料を取り寄せたいっていう話。
取りまとめをお願いしたいマスターシェフさんと連絡を取りたい旨を伝え、問題ないかを確認。
『なるほど。私としては問題ない方かと。アズールはどうですか?』
『僕もオッケーだよ。交流イベントでよく見かけるし、ゲイラたちがよく食べに行くお店の店長だもんね』
「あはは……」
まあ、リアルでプロの料理人だって話だもんなあ。俺も一度行ってみたいところだけど……
『じゃ、僕の方で連絡を中継すればいい?』
「手間じゃないですか?」
『ゲイラの部下に頼めばいいかな。あ、でも、細かい話とか伝わるか不安だし、手紙にした方がいいかもねー』
確かに依頼書のこととかも考えると、手紙にした方が間違いなくていいか。
でも、それだと手紙が、うちの島から竜の都に行って、そこから死霊都市っていう、面倒なことになるんだよな……
「うーん、それは手間だと思うんですけど……」
『ショウ様。こちらにある魔導転送箱をアズールの元へ届けておきましょう』
「なるほど。それ、すごく助かります」
もっと早くそれに気づいておけば良かった。
こっちにエルさんがいて、ギルドカードで定時連絡してるから、魔導転送箱を使うこと減ってたもんなあ。
『了解。手紙書いて送ってくれれば、こっちから彼に渡すからね』
「お願いします。あ、そうだ。昨日、伝え忘れてたんですけど、シャルたちがお酒を作りすぎて余らせててですね……」
『『取りに行く!』』
バーミリオンさんも聞いてたのか。いや、聞こえてたが正解かな。
アージェンタさんのため息がかすかに聞こえてきて、苦労してるんだなあと。
「たくさんあるので急がなくても大丈夫ですから。いったん、竜の都に送っておきますね」
『エル。任せましたよ』
『はい。了解しました』
『待って待って! どのお酒か指名させてよ!』
『俺はバーボンがいい!』
この後、収拾がつかなくなって、全員、覚醒した白竜姫様に怒られるっていうオチでした……
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