第579話 建国への懸念点

 建国システムのアップデート解説はまだ途中なんだけど、聞きたいことはだいたいわかったのでIROへとログイン。

 ルピやスウィーたちが待ってるし、ミオンも白竜姫様が気になるしってことで。


「そろったかな?」


「はぃ」


 今日のご飯はお手軽に、オーダプラで作ったニョッキとランジボアのベーコンの炒め物。ライコスソースでちょっとナポリタン風?


「じゃ、いただきます」


「いただきます」「いただきま〜す」「〜〜〜♪」


 バゲットに載せてパクッと。うん、美味しい。

 スウィーとフェアリーズはベーコンの代わりに、メランザ(ナス)の素揚げを入れたやつだけど、美味しそうに食べてくれててほっと一安心。


「おかわり〜」


「はぃ」


 白竜姫様は相変わらず食欲旺盛だし、エルさんも最近は遠慮せず食べてくれるようになった。

 俺たちがいない間に、保存庫の魔晶石にマナを補充してくれたり、シャルたちと狩りに出てくれたりするし、遠慮なんてする必要まったくないのに。


「ワフ」


「うん、ルピたちもたくさん食べな」


 それにしても、どうしたもんだかなあ……

 建国宣言しても、新規プレイヤーのスタート地点にならなくなって、これで絶対にやらない理由は消えたわけで。


 アップデート前は建国宣言した時点で国家レベルが1。

 その時点でのマイホーム設定した地点が、新規スタート地点となっていた。

 そして、国民が増えて国家レベルが2になると、その場所以外のセーフゾーンもスタート地点に設定される仕組みだったそうだ。


 でも、建国できるハードルが上がり、国家レベル3に相当しないと建国宣言ができないよう変更。建国した時点で国家レベル3になるらしい。

 で、国家レベル1と2でできたことは、建国と同時に『任意で設定できる。しなくてもいい』という扱いになったと。


「ごちそうさま〜」


「はぃ」


「お茶を淹れてこよう」


「ありがとうございます」


 たくさん食べてもデザートは別腹らしい。

 最近は羊羹がお気に入りだけど、食べすぎないように制限してもらっている。


「うん、美味しい」


 甘すぎない羊羹にパプの葉茶。

 ローズヒップもあるんだけど、そっちはクッキーとか洋菓子向けだよな。

 というか、紅茶や緑茶も欲しいし、コーヒーも欲しいし……って、そういう話じゃなかった。


「ショウ君?」


「あ、ごめん。ちょっと建国システムのこと考えてた」


「建国を考えてますか?」


「あー、うーん……」


 一瞬「ミオンはどう?」って聞き返しそうになって思いとどまる。


「なんていうか、今までは『新規スタート地点になるから』って理由でやらなかったんだけど、それが無くなったから……どうしたいのかわかんなくなっちゃった感じかなあ」


「ぁ、そうですね」


 できることとして、補正がつく役職の任命と、供物を捧げる神饌で妖精たちが増えるっていうメリットがある。

 特に神饌はなんかいいなあって思うし、うちにいる妖精たちも仲間が増えるのは嬉しいんじゃないかなって思うんだけど……


「ああ、そうだ。今度のライブで『建国しないの?』って聞かれるかな?」


「聞かれると思いますけど、どう答えても視聴者の皆さんは納得してくれると思いますよ?」


「そうかな? まあ、急いで決める必要もないか……」


 そんな話をしていると、


「二人はここを国にするの?」


 と白竜姫様。いつの間にか覚醒してて、どこから聞いてたんだろう?


「アルテナちゃんは賛成ですか? 反対ですか?」


「二人がこの島を国にするのなら、竜族はすぐにでも同盟関係を結ぶわ。ここにはフェアリーの女王もいるのだし」


「〜〜〜♪」


 羊羹を頬張りながら、うんうんと頷くスウィー。フェアリーの女王様は賛成らしい。なんだけど、


「姫。無礼を承知で申し上げますが、私としては若干気にかかる点があります。二人にそのことを話しても?」


 とエルさん。

 白竜姫様が俺たちに任せるみたいな視線を送ってきたので、もちろんオッケーする。


「聞かせて欲しいです。何かあってからだと問題だと思うんで」


「気にかかるのは、この島の全域を調査できていないという点だ。二人には姫様の滞在で負担をかけていて申し訳ないのだが……」


「あ、確かに」


 あの北端にある塔っぽい建物。

 崖の下まで繋がってる地下もあるっぽいし、あそこに不穏なものがあると困る。

 あとは火山の上の方とか、島の北西にある小島とかかな。


「悪魔の件も一段落したのなら、エメラルディアを呼んで調べさせてもいいわ」


「〜〜〜?」


「あ、うん、そうだね。上空からだけだと見落としがあるかもだし」


 スウィーの指摘もごもっとも。

 それに、北端の塔までは自力で行きたいのもあるし、エメラルディアさんの力を借りるのはさすがになあって。


「まずはエメラルディアさんに連絡をとりますか?」


「そうしようか。ねぎらいもあるし、せっかくだしアージェンタさんとか、アズールさんとか、バーミリオンさんも呼びたいところだけど」


 一度に全員呼ぶのは、まだちょっと不安があるかな?

 終わったとはいえ『悪魔が来たりて』のワールドクエストは、次のワールドクエストへの前振りなんじゃないかって話も聞くし。


「ショウ君。死霊都市の施設の話も聞いておきませんか?」


「あ、そうだった」


 竜族が押さえてくれてる区画、外側に大型施設があるらしいけど、どんな施設なのかも聞いておかないとだっけ。


「今から聞いてみたらどうかしら?」


 白竜姫様がそう言って目配せすると、エルさんがギルドカードを取り出す。

 まあ、ちょっと聞くぐらいならすぐだよなってことで、


「アージェンタさん。今って大丈夫ですか?」


『ショウ様。はい、問題ありません。エメラルディアが何かしでかしましたか?』


「あ、いや、そうじゃなくて……」


 アージェンタさん、心配しすぎじゃないかなあ。

 それはともかく、まずは大型施設(?)について聞いてみたんだけど、全然調査とかしてないらしい。


『申し訳ありません』


「あ、いやいや、転移魔法陣がある塔を優先してもらったわけですし、今は教会もうちのギルドも管理してもらってますし」


 死霊都市でのあれこれを任せすぎてて、さらにお願いするのが申し訳ない気分に。

 結局、ゲイラさんたちの手が空くようなら調べてもらうことになったけど、これも誰かに依頼出した方がいいかもなあ……

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