第553話 女神様はお忍びです
ライブに備えて早めのログイン。
ミオンは翡翠の女神の衣装に着替え中。
飯テロの準備は放課後に済ませたけど、それとは別にやらないといけないことがあったのを思い出した。
「すいません。エメラルディアさん、エルさん、ちょっといいです?」
「ぁぃ」「ああ、どうした?」
二人にはライブのことをうまく説明したいんだけど、なんとも伝えづらいんだよな。なので、
「えっと、ミオンが島にいない時なんですけど、どこにいるのかとか、何でいないのかとかは聞かないで欲しくて」
「?」
いまいち何のことかわかってないエメラルディアさん。
それとは対照的に、エルさんは何か理解してるっぽいのか、大きく頷く。
「アージェンタ様より、翡翠の女神様がこの島にいることはお忍びだと聞いている。安心してくれ」
「えーっと、助かります」
ちゃんとアージェンタさんから『余計な詮索はしないように』って釘を刺されてるそうだ。
ちなみに、前にバーミリオンさんがポロッとこぼしそうになったのは、後でアージェンタさんに怒られたらしい。
それにしても、本当に『ミオン=翡翠の女神様』っていう認識になっちゃってるのはいいのかな。
ごく普通のプレイヤーキャラクターだし、特別なスキルとか持ってるわけでもないんだけどなあ。
「エメラルディア様もお気をつけを」
その話を聞いて、大きくうんうんと頷いてくれる。
「ところでエメラルディアさん。俺たちがいない間に散歩とか外に出ました?」
その問いに、今度は首を横に振るエメラルディアさん。
人が苦手なだけで、妖精たちとは触れ合いたいのかと思ってたんだけど……
「ああ、私の方で止めていた。スウィー殿から頼まれていたのでな」
「ははは……」
まあ、エルさんが言って、エメラルディアさんが納得してるならいいか。
そういや、スウィーはどこへ?
「〜〜〜♪」
「ああ、ちょうど良かった。エメラルディアさんを改めてパーンたちに紹介しようと思うけどいいよね?」
久しぶりに左肩に座ったスウィーにそう聞くと、腕組みをしてうーんと悩んだのち、エメラルディアさんの方を見る。
そのエメラルディアさんのすがるような表情に、スウィーが大きくため息をついてオッケーのサインを出した。
「じゃ、ウリシュクたちに紹介するんで行きましょうか。ちなみに、うちの料理に使ってる野菜や、デザートに使ってる果実はウリシュクたちが管理してるので、嫌われないようにしてくださいね」
「ぁぃ、ぁぃ」
神妙な表情で頷くエメラルディアさん。
じゃ、さっそく移動かなと思ってるところに白竜姫様がやってきた。
お昼寝してるって話だったけど、俺たちがバタバタしてて起こしちゃったかな?
「おさんぽ〜?」
「〜〜〜♪」
俺の肩からすいーっと飛んでいって、白竜姫様の肩へと座るスウィー。一番安全なポジションを選んでる気がしてきた。
『ショウ君。お待たせしました』
「りょ。今から教会裏に行くよ」
『はぃ』
今日のライブでは、ミオンのアルバムの発売日を発表することになっている。
それがどれくらい続くかは、ミオンとヤタ先生次第だけど、他に話せる内容はあんまりないので5分ぐらいで終わるんじゃないかなと。
俺の開始は厩舎からで、牧場を紹介したのちに屋敷に戻ってきて、裏庭でご飯を食べる予定。
ギルド依頼で送ってもらった植木鉢や花瓶を紹介する時間も取りたいところだけど、サバナさんの島の件でいろいろ聞かれそうなんだよな。
それについては、ベル部長やセスとも相談して決めてあるけど、どういう質問が来るか次第だよな……
………
……
…
<10秒前……、5、4、……>
『みなさん、ミオンの二人のんびりショウタイムへようこそ! 実況のミオンです。よろしくお願いします!』
【ベアメン】「翡翠の女神様キタワー」
【ミンセル】「アルバムそろそろ?」
【ジャズゥ】「飯テロの予感……」
【カリン】「いつもどおりでホッとする〜」
etcetc...
ちらほらと先日の一件についてのコメントが流れてるな。
アズールさんが動いた時点で、俺が関わってるんじゃって思うよな。
『まずはみなさんに、アルバムの発売日についてお知らせします!』
【シェケナ】「キター♪───O(≧∇≦)O────♪」
【クック】「とんでもねえ。待ってたんだ」
【ブルーシャ】「楽しみ〜♪(*≧∀≦*)」
【ミイ】「スウィーちゃんや白竜姫様の歌も入ってます?」
etcetc...
コメントがすごい勢いで流れていく。
完成した曲も楽しみだけど、どういうMVになったのかも気になる……
『試聴も土曜から始まりますので、みなさん聴いてみてください』
ミオンが島へ来て二人でのライブは、リリース当日じゃなく、その前にやって欲しいとのこと。
なので、その試聴開始に合わせて、ミオンもいよいよ島デビューかな。
『それでは、島へと繋ぎますね。ショウ君、ルピちゃん、島のみんな〜』
「ようこそ、ミオン!」
「ワフ〜」
新しく建てた厩舎の軒先、休憩用のベンチに座る俺とルピ。
その後ろには、
「ブルルン♪」「クルル〜♪」
「リゲルとラズも挨拶ありがとう」
【キンコジ】「厩舎思ってたよりでかいな!」
【メッセレン】「ラズく〜ん(*´∇`*)」
【ルコール】「リゲルくん、かわよ〜」
【ベアメン】「牛くんたちはどこですか〜?」
etcetc...
最近はリゲルのファンも増えたよなあ。
『ショウ君。今日の予定を教えてください』
「えーっと、まずは今いる厩舎と牧場の紹介からかな。よっと!」
リゲルに乗ってゆっくりと牧場を進み、アンバーナウトとエクリューたちが草を喰んでるところへと近づく。
「ンモー」
相変わらずというか、全然警戒しないし、逃げたりもしないんだよな。
ずっとマイペースな感じだけど、あのホガニーブルがいた草原でよく暮らせてたなと。
『前回のライブでお話した牛さんですね』
「うん。エクリューたちとも仲良くしてくれてるし、ミルクも美味しいし、来てくれて本当に良かったよ」
『パーン君のおかげですね』
【ティーエス】「ホワイタウトの原種!」
【ジョント】「今日の飯テロはミルクメイン?」
【ブルーシャ】「癒される〜(*´∇`*)」
【シェケナ】「パーン君どこー?」
etcetc...
さて、そろそろエメラルディアさんを紹介しないとかな……
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