第554話 幸せそうな翠竜さん

『牛さんたちはパーン君が見てくれてるんですよね』


「そうそう。エクリューとアンバーナウトはパーンたちで、リゲルとヤコッコはシャルたちが見てくれてる。ルピ、ご飯にするから、パーンたち呼んできてくれる?」


「ワフ!」「「バウ!」」


 ルピ、レダ、ロイが走っていくのを見送ってから、ゆっくりと厩舎へと。

 戻って来たところにシャルたちが待ってくれていて、俺がリゲルから降りると、手際よく馬具を外してくれる。


「いつもありがとな」


「ニャ!」


 当然ですという顔のシャルの頭を撫でる。

 さて、そろそろのはずと、教会の方に目をやると……


「リュ〜!」


 ルピ、レダ、ロイを先頭に、パーンとウリシュクたちがやってきた。そして、最後尾にはエメラルディアさんが。

 ……パーンたちと仲良くなれたからか、だらしない顔をしてるのは見ないふりで。


【ムシンコ】「いつの間に島に来たの???」

【ヒラリ】「え? 誰?」

【ヴェネッサ】「浮気ですか!?」

【コーヨー】「後ろのお姉さん is 何者?」

 etcetc...


 あれ? エメラルディアさんのこと、知ってる人がいるっぽい?

 あ、買い出しに行った時は人の姿だったからか。


『ショウ君。後ろにいる方を紹介してください』


「うん、月曜から島に滞在してる翠竜エメラルディアさんです。エメラルディアさん、ちょっといいですか?」


 急に呼ばれてビックリした様子だけど、パーンたちに手を引かれ、俺のところまで引っ張ってこられる。


【ガフガフ】「うおおおお!」

【ロガッポ】「おいでませ、妖精の島へ!ヽ(´▽`)/」

【ドライチサン】「これでドラゴン全員揃った?」

【デイトロン】「<翠竜さん滞在費:10,000円>」

 etcetc...


「仲良くなれたみたいですね」


「ぁぃ、ぁぃ」


 すっごく、だらしな……幸せそうな顔のエメラルディアさん。これ以上、何か聞くと他にもいろいろボロが出そうなのでやめよう。


「続きはまた後で。まずはご飯にするよ」


『はい』


 到着した裏庭には、すでにテーブルが並んでいて、お皿やフォークといった食器もならんでいる。ケット・シーたちのおかげだ。


「じゃ、まずは前菜のサラダから」


 キャピタ(キャベツ)、キューカ(キュウリ)、ライコス(トマト)のシンプルなサラダだけど……


『新しいドレッシングでしょうか?』


「うん。カムラスとヨーグルトのドレッシング」

 

 カムラスは皮ごとすりおろし、マヨネーズとアンバーナウトのミルクから作ったヨーグルトに、オリーブオイル、空砂糖、塩、白コショウで味を整えたもの。


『マヨネーズも初めてですよね?』


「あ、そうだっけ。ヤコッコの卵とグレイプルビネガー、塩、オリーブオイルでできるよ。殺菌は浄化でできるし」


『なるほどです!』


 余ってもインベントリに入れておけば劣化しないのが良いよなあ。

 まあ、白竜姫様がたくさん食べるから、余ることないんだけど。


【マスターシェフ】「ヨーグルトドレッシングいいね!」

【ライジング】「めっちゃうまそう……」

【ヤヅヤン】「健康的!」

【デイトロン】「<マヨ&ドレッシング代:5,000円>」

 etcetc...


 どっさりと野菜を盛ってある大きなボウル。

 これを取り分けてもらうのはエメラルディアさん。


「こっちはお願いします」


「ぁぃ」


 パーンとウリシュクたち、シャルとケット・シーたちが、木皿を持って……白竜姫様ともちゃんと並んでくれてるな。

 スウィーたちフェアリーズも大丈夫らしいので、これは別に大皿を用意してある感じ。


『メインディッシュは何でしょう?』


「今日のメインはマカロニグラタンだよ」


【レジェリー】「グラタン!」

【ストライ】「やべえ、腹減ってきた……」

【ユイオン】「マカロニ作ったの?」

【デイトロン】「<マカロニグラタン代:5,000円>」

 etcetc...


 リアルは残暑が厳しいのにグラタンはちょっと季節外れな気がしなくもない。けど、思いついちゃったからなあ。


「グラタンはちょうど焼き上がってるころかな」


 裏庭のキッチンに近い場所に作った石窯は、何度か作り直して本格的な窯になっている。

 その前には中のグラタンを確認しているエルさんが。


「どうです?」


「良い具合に焼けているようだ」


「じゃ、取り出しましょう」


 ということで、エルさんに取り出してもらう。

 みんなで取り分けて食べる用の大皿なので、グラタンが詰まってかなり重いんだけど、エルさんはさすがというか軽々持ち上げて持っていってくれた。


「熱いので注意してくださいと」


「ああ」


 取り分けも任せて、俺はおかわり用に次の大皿を窯の中にセット。

 そんなやりとりをしてる間、ミオンが背景に映った植木鉢の説明をしてくれている。


『いただいた花瓶はお屋敷の中ですね』


「時間があれば紹介するつもりだけど、今日は質問も多そうだからね」


 みんなの「まだか」の視線が痛くなってきたので、


「じゃ、いただきます」


 ………

 ……

 …


「そろそろかな?」


 他のみんな、特に白竜姫様とエメラルディアさんはまだ食べてるけど、俺はもうお腹いっぱいだし、視聴者さんたちも待ちきれない感じ。


『質問コーナーにしますか?』


「いや、その前に俺からいろいろ説明するよ。質問はその後で」


『はい!』


 大きくひとつ深呼吸をして、まずは南の島へ悪魔が侵入しようとして捕まったことからだよな。


「えっと、前回のライブの直後にアージェンタさんから連絡があったんですけど……」


 死霊都市から南の島へ侵入しようとした悪魔を捕まえたって話。

 結局、捕まえた悪魔から情報を引き出す前にいろいろ起きちゃったんだけど、


「俺がさっさと公表しておけば、サバナさんの島で例の建国騒ぎの件も起きなかったのかなって」


【ディアッシュ】「それは考えすぎじゃね?」

【シュンディ】「確かに違ってたかもねえ」

【スクナ】「結果論だよ〜」

【リカロペ】「言ってても防げなかったに一票」

 etcetc...


『しょうがないです』


「まあ、今さらだなとは思ってるけどね」


 俺が言ったからって、氷姫アンシアが警戒したかって言われると微妙だし、例の建国した連中は悪魔じゃないプレイヤーもいたわけだし。


「で、アージェンタさんがエメラルディアさんと島に来た日に、ちょうど例の建国宣言があって」


『私が魔女ベルさんから何が起きたのかを教えてもらいました』


「うん。それでアージェンタさんと相談して……、あとは皆さんが知ってる感じです」


 これで納得してくれるといいけど……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る