水曜日
第552話 サバナさんの緊急動画
「これだけあれば十分かな?」
「はい。でも、本当にキュミノンシードだけでいいんですか?」
「まあ、そこは約束だからね」
ナットのギルド『妖精の友』と交換するキュミノンシードを20袋用意できた。
他にも島から出せる植物の種や苗はあるんだけど、今回は小豆との一対一トレードになる。
ちなみに小豆のゲーム名はアズキとのこと。大豆がグリシンだったのに、小豆はそのままなのが謎……
「依頼書はこれです」
「さんきゅ」
作る必要もない気がするんだけど、一応、ちゃんと取引履歴を残すということで。
ちなみに、今までの依頼書、達成した分は俺のところへと戻ってきてて、ミオンが管理してくれている。
「じゃ、お願いします」
「ああ、任せてくれ」
いつものようにエルさんに竜の都に運んでもらい、そこから死霊都市へと運ばれる手はず。
いずれ、エメラルディアさんが南の島と頻繁に行き来するようになれば、そっちにしちゃってもいいかなと思ってる。
まあ、そのへんはアズールさんやゲイラさんと相談かな。
大型転送室へと向かうエルさんを見送って、残りの時間は夜のライブの準備を。
「今日のライブは何をしますか?」
「エメラルディアさんが来てることは話すとして、牧場の紹介がメインかな。あと、アンバーナウトたちが加わったし、牛乳を使った料理がいいかな」
グラタンとか良さそうだし、マカロニを作らないと。
パスタも作りたいところだけど、手間を考えるとマカロニが楽ちんなんだよな。
「エメラルディアさん。白竜姫様が起きてきたら教えてください」
「ぁぃ」
相変わらず、ルピ、レダ、ロイをモフってるエメラルディアさん。
スウィーはともかく、フェアリーズはもう慣れたっぽく、頭や肩に座っておしゃべりをしている。
「よし。まずはマカロニ作ろうか」
「は、はぃ」
コハク粉、卵、オリーブオイル、塩があればマカロニは簡単に作れる。
「これくらいでしょうか?」
「そうそう、いい感じ」
一度にたくさんは大変なので、ある程度の量を捏ねて、寝かしてる間に次のを捏ねる。
料理スキルがあるからか、あっという間に準備完了。
「これを?」
「えっと、指の先ぐらいを取って、この竹串にこういう感じに巻き付けて……」
最後に串を抜けば、マカロニの出来上がり。
「簡単でしょ?」
「はい!」
数を作って保存庫に置いておけば、グラタン以外にも使い道あるよな。
………
……
…
ライブの準備を終わらせてログアウト。
部室に戻ってくると、ベル部長が先にログアウトして待ってたっぽい。
「何かありました?」
「サバナさんが昨日の顛末を動画をアップしたそうよ。みんなで見ましょ」
「はい」
ベル部長がリアルビューモードで、大きな仮想ディスプレイをみんなが見える位置に置く。あれ、そういえば……
「ぁ……、ヤタ先生?」
「二学期最初の職員会議だから、長引いてるんじゃないかしら」
「あー、そういえば水曜でした」
そんな話をしてるうちに、画面にはサバナさんの最新の動画が表示された。
15分前ぐらいにアップされてるけど、すでに1万再生以上してるし、いいねの数も同じぐらいあるな。
『いつも応援ありがとうございます、サバナです。今、緊急で動画を回しています』
ぺこりと一礼したサバナさん。初めて見たんだけど……アスリートって感じの人だなあ。
エサソンたちに信頼されてるみたいで、両肩や頭に乗ってるのがギャップあって微笑ましい。
『昨日、死霊都市の転移魔法陣から、私の島へ約20名の不法侵入がありました』
たんたんと事実を述べていくサバナさん。俺が聞いていた話とほぼ同じ。
『私の苦境をお伝えしたことで、有志の方々のおかげで竜族の助力を得ることができました。この場を借りて、あらためてお礼申し上げます』
なるほど。有志の方々ってうまい言い方だなあ。
実際、ライブの最後で救援依頼を出してたし、それを見てた人たちから話がまわってきたわけだし。
『今回の出来事は私にも非があると思います。侵入者の半数近くが悪魔でした。ワールドクエストで悪魔が潜入してきているにも関わらず、この島へのアクセス統制が万全でなかったことは確かです』
うーん……
『ですので、進行中のワールドクエストが終わるまでは、死霊都市につながる転移魔法陣は封印します。その後のことは、それまでにじっくり考えて結論を出したいと思います』
まあ、そうなるよなあ。
ちなみに、今は希望者が残る形になってるそうで、レオナ様は死霊都市に戻り、マリー姉とシーズンさんはそのままサバナさんの島にいるらしい。
「シーズンさんを通してサバナさんとは話をできてるから、竜族の方で何かあるなら伝えるわよ」
「なるほど。夜にでもアージェンタさんと相談します」
「ええ、お願いね」
***
「死霊都市側の転移魔法陣、南の島に置きたいって話があったと思うんだけど」
「それに関しては、保留とさせてもらっておる。やはり、建国というリスクを背負うのはのう」
「まあ、サバナさんは良くても、他の人がって可能性あるもんな」
焼きプリンを大きくすくって、パクッと口に入れる美姫。
ちなみに、俺は今日はちょっと趣向を変えてみかんゼリーだったりする。
「建国した上で、鎖国できる仕組みがあればのう……」
「そういえば、ケイオス帝国だっけ? あれってスタート地点じゃなかったらしいけどなんでだったんだろ?」
「いくつか仮説はあるのだが……」
セスが聞いた話だと、悪魔が混じってたから、内戦中だったから、あたりじゃないかと言われてるらしい。ただ、検証の方法もないので、本当に正しいかどうかわからないと。
「運営に建国関連について説明してほしいって要望出したけど、実際に建国してうまくいってるラムネさん……の参謀の人とかに聞けないかな?」
「ふむ。国家運営周りのスキルについても、もう少し掘り下げて調べたほうが良いかもしれんのう」
美姫が調べた範囲だと、税金なんかも直接税と間接税でちゃんとあるそうだ。
直接税は15歳以上一人につきの人頭税、土地に対する固定資産税、プレイヤーズギルドに対するギルド税がメイン。
間接税は公共ギルドの利用時にあれやこれやの名目で取られてる手数料が実は税金らしい。
「なんか、税金一つとっても、すっごい面倒そうなんだけど……」
「兄上の場合はそう面倒にならんとは思うがの」
「え? なんで?」
「兄上とミオン殿の妖精の国に税金など不要であろう?」
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