第551話 翠竜さんのお仕事は?

「〜〜〜♪」「あめあめ〜♪」


 スウィーと白竜姫様が窓の外を見て楽しそうに歌っている。

 夜にログインすると結構しっかりと雨が降っていて、今日は外で何かって感じでもないかなと。


「はい。じゃ、屋敷で待ってます」


 アージェンタさんが昨日の件の報告に来るとのことだけど、エルさんがこっちは雨降ってるって話をして、いつもみたいに迎えに行くのは無しになった。

 まあ、アージェンタさんはじめ、俺が知ってるドラゴンのみなさんは全員うちのギルドメンバーなので、あらたまってどうこうもないかなと。


「ワフ〜♪」


「うへへ……」


 エメラルディアさんは、相変わらずルピやレダ、ロイをもふって満足している。

 スウィーとも仲直りはしたみたいだけど、過度なスキンシップはダメってことになったみたいだ。


「さて、アージェンタさんが来るまでに、いろいろと整理しとかないとな」


「整理ですか?」


「うん。昨日のごたごたがあったせいで、やらなきゃいけないこと忘れてる気がするから、それを整理しようと思って。ミオンも手伝ってくれる?」


「はぃ。もちろんです」


 やりかけて放置してるタスクもあるし、ちゃんと整理して優先度の高いものからこなしていこう。


・次の交換・販売の準備、ラインナップを決める

・小豆とキュミノンシードの交換


 この二つは相手があることだし、ほったらかしはまずい。

 小豆の件はナットが相手だけど、いいんちょが絡んでるから忘れてると怒られそうだし。


「ミオンはどう?」


「えっと、南の島の教会に置く翡翠の女神像を作る話が」


「あ、そうだった! 女神像彫らないとね」


 危ない危ない。やりかけだったガラスのリサイクルと一緒にやろうと思ってたんだった。というか、そっちもミオンに説明しておこう。えっと……


「どうしました?」


「いや、これこれ」


 作業途中で避けておいた、色とりどりのガラスの粒。


「木像に使うんでしょうか?」


「ううん。ステンドグラスを作ろうかなって」


「すごいです!」


 デザインはまだ全然決めてないし、最優先は翡翠の女神の木像からかな。週末には向こうに送れるといいけど。

 それ以外の途中のことも含めて、あれこれ積み上がってるタスクを整理。島の北側もそろそろ塔まで行きたいところ……


「そんなところかな?」


「あと、明日のライブはどうしますか?」


「明日か……、エメラルディアさんが来てることは話した方がいいかな?」


「あ、そうですね」


 昨日の件はどうせ説明しないといけないだろうし、そのついでって感じでいいか。

 ……いや、待て。


「エメラルディアさんがこの島に住みたいって話、ミオンはどう思う?」


「えっと、姉ができたみたいで嬉しいです。でも、ずっとルピちゃんたちを愛でてるだけなのは……」


「あー、まあ、そうだよね」


 俺たちがいる時はだいたい遊んでるか、甘いもの食べてるかしてるスウィーだけど、いないときは妖精の道でシャルたちの銀猫便を手伝ってくれてるし。

 それを言い出すと「白竜姫様は?」って話になるけど、白竜姫様はあくまでお客様だからなあ。


「何か手伝ってもらえることがあればいいんですけど」


「うーん、そうだなあ」


 バーミリオンさんには厩舎を建てる手伝いとかしてもらったけど、ああいうのお願いしていいのかな?

 あれはバーミリオンさんが気さくだからって感じもするしなあ……


「ミオンは手伝って欲しいこと何かない?」


「えっと……、大きな荷物や、重い荷物を運んでもらうとかでしょうか」


「やっぱり、そういう作業の手伝いとかだよなあ」


 切った木を運んでもらうのとか助かったし。

 あとは、ここと港の往復とかって、飛んで運んでもらってもいいかも? でも、シャルたちの仕事取っちゃうか……


「いっそのこと、南の島と定期往復便してもらおうかな?」


「南の島とですか?」


「うん。新しく作る翡翠の女神の木像も、そっち経由で送ったほうがいいかなって。ガジュたちが嫌がらないならだけど」


 サバナさんの島みたいな事が無いよう、キジムナーたちと竜族、そして、俺とのつながりを見せることができる。

 それが普通になれば、ガジュたちがうちの島に来てても、おかしく思われないし、何より、ミオンがうちの島にいるのも「南の島から来ました」って言える。


「なるほどです!」


 あとは本人とアージェンタさんにオッケーをもらえばかな? ガジュたちにも紹介しておかないとか。


「バウ」


「ん? あ、アージェンタさん、来たかな」


 ロイが玄関の方を向いて可愛く吠えてくれる。

 ミオンにお茶とお菓子の用意をお願いして玄関へ。


「ショウ様。お忙しいところすいません」


「いえいえ、こちらこそ」


 ありがちな挨拶を交わし、さっそく応接室へご案内。

 さっきまでルピたちをモフってたエメラルディアさん、いつのまにか背筋を伸ばして席に座ってるし。

 ミオンがクッキーを並べ、エルさんがお茶を淹れてくれる。


「まずは捕まえた悪魔から聞き出した情報を」


「はい」


「奴らは魔石か魔晶石を集めているようです。それもできるだけ大きい物を」


 あー、じゃあ、悪魔たちも制御室にある非常用魔晶石が狙いだったのか。


「魔石や魔晶石を集めてどうするつもりなんでしょうか?」


「それに関しては、捕獲した悪魔にも知らされていないようでした。より高位の悪魔を捕獲する必要がありそうです」


「なるほど。俺がこれ持ってきちゃったのは正解だったんですね」


 インベントリから大きな非常用魔晶石を取り出す。

 アージェンタさんが驚いてるけど、俺が外して持ってきてたの言い忘れてたなと。


「そちらはショウ様が預かっていただけますか?」


「わかりました」


 竜の都に持っていく方が安全な気がするけど、プレイヤーが行けない場所には持っていけないのかな。

 屋敷の蔵に入れとけば俺かミオンしか取り出せないから、いずれサバナさんに返すまでしまっておこう。


「それとエメラルディアですが、しばらく島に置いていただけませんか?」


 その言葉にエメラルディアさんの顔がパッと明るくなる。


「あ、はい。それでなんですけど、ここと南の島の輸送をお願いしていいです?」


 そして、その裏にある意図についても説明を。

 竜の威を借るようで申し訳ないけど、ガジュたちを守るためにも協力してほしい。


「なるほど、わかりました。エメラルディアもそれで良いですね」


「ぁぃ、ぁぃ」


 今日は雨だし、明日……はライブか。

 明後日ぐらいにでも、一度、エメラルディアさんをガジュたちのところに連れて行かないとだな。

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