第546話 ゲームチェンジャーの潜入
「<召喚:ルピ>」
淡い光が目の前に湧き上がり、しばらくしてルピが現れた。
「ワフ!」
お座りしてるルピを撫でつつMPを確認。
うん、魔狼の牙のアクセ分ぐらいで済んでるし、大丈夫そうだな。
「じゃ、行きます」
「お気をつけください」
アージェンタさんに見送られ、乾ドックの奥、大きな両開きの扉の前まで走る。
模様からして、古代魔導扉なのは間違いなさそうだけど。
「これは普通の方?」
『はぃ。普通のです』
「りょ。じゃあ、さっそく……の前に隠密と潜伏を使っておくか」
今までは扉の向こうに人がいる可能性がゼロだったけど、ここから先はそういうわけにもいかないよな。
そう考えると、上から見つけたこの港に全く警戒せず着陸したのって……、まあ、結果オーライってことで。
『ショウ君。扉を開ける前に向こうの様子がわかったりしませんか?』
「どうだろ。気配感知でいいのかな?」
『聞き耳というスキルがあるそうです』
「マジか。もっと前から取っとけば良かった……」
メニューからスキル一覧を開いて検索……あった。
今からでも無いよりはマシなはず。アンコモンスキルだけど、今後も使うかもだし取っておこう。
で、さっそく、先へと続く扉に耳をつけてみたんだけど、何も聞こえないな。
「多分、誰も居なさそうだし開けるよ」
『はぃ』
隠密と潜伏を発動してから、扉にそっと手を添える。
【祝福を受けし者のアクセスを確認しました。解錠しますか?】
できるだけ小声で「はい」と答えたけど、問題なく解錠できたっぽい。扉を少しだけ開けて、明かりはうっすらだけど点いてるな。
ルピに先行してもらって……感知共有に反応は無しっと。俺も進むか。
【聞き耳スキルのレベルが上がりました!】
なるほど。聞き耳の答えがわかったらスキル経験値が入る感じかな。
『ショウ君。部長たちが死霊都市に戻りました。死霊都市のトッププレイヤーのみなさんで話し合いが行われるそうです』
ミオンの報告に頷く。そっちはそっちで面倒なことになってそう。
先を進むルピが上り階段の前で足を止めた。
追いついて見上げると、その先は丁字路になってるっぽい。
ルピの背中を軽く撫で、上の様子を見てくるようにお願いする。
「ワフ」
階段を登りきったルピが左右を見た後、こっちを向いて小さく吠えた。
誰もいないのが確定なんだろうってことで、俺も階段を駆け上がる。
左右どちらにもまっすぐ通路がのび、その先が扉になっている。というか、うちの島の構造と似てる?
いったん考えを整理しよう……
「ここが転移魔法陣がある古代遺跡なのは間違いないよね? 発見のワールドアナウンス出なかったし」
『はぃ』
となると、この先のどっちかの先に転移魔法陣があるはずだけど、
『サバナさんのライブのアーカイブを少し見たことがあるんですが、転移魔法陣がある部屋から先に進んで、管理者権限が必要な扉を開けられませんでした』
なるほど……、あれ? うちの島って管理者権限が必要な扉って無かったよな。
施設として重要じゃなかったから? 厄災が起きた時も稼働してたから? いや、今はそれはいいや。
「じゃあ、その管理者権限が必要な扉を探すのが良さそうだね」
『そう思います』
ということで、まずは右の扉から確認……普通の魔導扉。左側は……こっちは管理者権限が必要なやつだな。
これがサバナさんが開けられなかった扉だとすると、向こう側に人がいるかもか……
今度もちゃんと聞き耳を立て、誰も居なさそうなのを確認。多分だけど。
【祝福を受けし者のアクセスを確認しました。最上位管理者権限を確認しました。解錠しますか?】
さっきと同じように小声で「はい」と答え、少しだけ開けた隙間にルピが滑るように入る。
感知共有に反応はないので、続いて自分も……うん、誰もいない。しっかり扉を閉めて施錠しておく。
まっすぐ続く道の先に、また上への階段が見えた。うちと似たような構造だとしたら、上に向かってるのは制御室コースのはず。
「進むよ」
『はぃ』
ルピに警戒してもらいつつ道なりに。
突き当たった扉は普通の魔導扉で、それを開けた先は資料室っぽい。
棚にはいろいろと本なのか記録なのか、そういうものが詰め込まれてるけど、確認してる時間はない。
部屋の反対側にある扉も、
『普通の扉です』
「うちの島と同じだと、この先に制御室がありそうだけど、サバナさんはそこまで行けてた?」
『いいえ、制御室らしきところには行けていません』
この中は大丈夫そうということで、ミオンからサバナさんの探索状況をもう少し詳しく聞く。
南西の浜辺からスタートし、南側の森でトレントや昆虫系のモンスターを倒し、エサソンたちを救ったらしい。
で、その後、エサソンから古代遺跡の入り口を教えてもらって、そこから探索を始めて、転移魔法陣がある部屋を見つけたんだとか。
「なるほど。解放された後って……、まだ一日しか経ってないし、そんなに進んでないか」
『はい。サバナさんは転移魔法陣の部屋を先に進んで、管理者権限が必要な扉を開けられませんでした。それで違う方向に進んで外に出られたんですが、二つ首の獣と遭遇して撤退したそうです』
二つ首の獣ってケルベロス? あ、違う、オルトロスだっけ?
多分だけど、そのモンスターを倒した先で、管理者権限の指輪が手に入るとかかな。
「今、サバナさんが逃げてる方向って、その二つ首のモンスターが居る方?」
『はい、おそらくは……』
うまく逃げてくれてる間にエメラルディアさんが見つけてくれるといいんだけど、それはもう任せるしかないな。
「10時前か……急がないと」
『無理はしないでくださいね?』
「うん」
とりあえず、管理者権限が必要な扉までは安全に進めるはず?
あ、いや、建国した連中なら、権限付きの指輪を持っててもおかしくないか。注意しないと。
資料室を抜け、また道になりに進む。
途中、右手側に扉があったりしたけど、それらは全部が倉庫っぽくて、重銀鋼インゴットが山のように積まれてた。多分、魔導船の修理用素材なんだろう。
資料室のところから20分弱、結構な距離を移動したところで、新たな部屋を発見したんだけど、ここって……
『制御室ですよね?』
ミオンの問いかけにうなずく。けど、俺はここの古代遺跡の管理者になるつもりはないし、スルーして先を急ぐべきだろう。
制御室の先、10mほど行ったところに扉があって、
『管理者権限が必要な扉です』
これがサバナさんが開けられなかったやつな気がするし、この先はもっと慎重に行かないとか。
まずは聞き耳を……ん? 足音!?
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