【4巻発売記念SS】プレイヤーズギルドあれこれ

「今の『白銀の館』って、ギルドではどんなことしてるんです?」


 俺とミオンで作ったプレイヤーズギルド『ティル・ナ・ノーグ』。

 依頼や販売といった一般的なギルド運営をしてるんだけど、他の、本土のプレイヤーズギルドはどういうことをしてるのかが気になって聞いてみた。


「うち? そうねえ。基本は販売と買い取りかしら。依頼を出すこともあるけど、内容は輸送、いわゆるおつかいが多いわね。販売してるのは……」


 販売している品は結構あって、ディマリアさんが作ってるポーション類や毛織物、ジンベエさんが作ってる陶器、ゼルドさんとバッカスさんが共同で作ってる武具や道具類などなど。


「おー、すごいっすね」


「でも、ショウ君は全部作れちゃうでしょ?」


「さすがです!」


 ミオンのキラキラした目が辛い……

 いや、俺は全部自分でやらないとって状況だったし、そのための無人島スタートボーナスだったわけだし。


「買い取りって?」


「ドワーフのダンジョンに来た人たちの戦利品を買い取ったりしてるの」


 ドワーフのダンジョンはウォルースト王国の北西、アミエラ領の開拓地の先にあるダンジョンだけど、いろいろあって今はベル部長たち『白銀の館』と雷帝レオナ様の『雷帝の座』が管理している。

 王国でスタートした人たちが、レベルを上げに来るのにちょうどいい場所になっているそうで、どっちのギルドも繁盛してるんだとか。

 しばらく滞在してダンジョン探索ってなると、インベントリを空けないともったいないし、いらない物や価値の低い物は、近くで売り払うよな。


「戦利品は魔石とかでしょうか?」


「魔石もそうだけど、魔物の骨や鉱石もいらない人がいたりするわね」


「へー、って魔物の骨? 何に使うんです?」


「ジンベエさんが陶器を作るのに使ってるわよ」


「「え?」」


 ベル部長も不思議に思って聞いたところ、魔物の骨を焼いて粉にした物を粘土に混ぜるらしい。それで白い陶器ができるんだとか。


「あー! ボーンチャイナか!」


「はぁ、よく知ってるわね。私はジンベエさんに説明されるまで知らなかったわよ?」


「さすがショウ君です!」


 ミオンのキラキラした目が(以下省略)

 白粘土だけでも白い陶器は作れるだけど、量の問題があって大変なんだとか。

 その白粘土の代わりに赤粘土に魔物の骨を焼いた粉を混ぜることで、白い陶器を作ることができると。まんま、ボーンチャイナだよな。

 俺も今度試してみるかな。ランジボアとかバイコビットの骨はいつでも手に入るし。


「他のギルドも似た感じですか?」


「そうね。ナット君の『妖精の友』も似た感じだったと思うわ。ポリーさんに聞いてみたら?」


 ふむふむ。あっちは古奥のダンジョンがあるんだっけ。

 後は水晶鉱石とかあるし、カムラスやレッペリンもあるし、結構いろいろあるな。


「珍しいところだと、うちも懇意にしてる『知識の図書館』かしらね。情報を売り物にしているギルドよ」


「情報を売るんですか?」


「ええ、プレイヤーから聞いた情報をまとめたりしてね。それ以外にも古代遺跡や冒険者ギルドにある本を複写して売っていたりもするわね」


 そういうのって攻略サイトを見ればわかるんじゃって思ったんだけど、そもそもどこにその情報があるのかを探すのも大変なんだとか。

 例えばどこにどういうモンスターが出て、どういうドロップがあってとかって、探すのも大変だもんなあ。


「ゲームドールズの攻略サイトだとエージェントAIを使えるのだけれど……」


「GDポイントでしたっけ? お金出さないとって感じですよね」


「そうなのよね」


 それならゲーム内でゲーム内通貨(アイリス)を払って聞く方がってなるよな。

 その『知識の図書館』の方が情報の鮮度も確度もいいらしいし……


「それ以外にも『アイリスポスタル』っていう輸送専門のギルドだったり、『シリウスファーム』っていう調教・畜産のギルドだったり、二人が知ってる『リヴァンデリ』も有名よね」


 俺が料理を出すごとに投げ銭してくれるマスターシェフさんのギルドだっけ。

 死霊都市でレストランをやるだけじゃなく、調味料や保存食を売ってたりもするそうだ。


「いろんなギルドがありますね」


「だね。うちはまあ、普通に販売と依頼出すぐらいかな」


「普通って……」


 ベル部長が呆れてるけどスルー。

 やってること自体は普通だし、ちょっと売り物を妖精が作ってるってぐらいで。


「ギルドの経営状況ってどんな感じなんです?」


「うちはとんとんってところかしら。純利は出てるのだけれど、セスちゃんが投資に回した方がいいって言ってるし、お金の管理をしてくれているユキさんも賛成してるわ」


 何者なんだよ、うちの妹は……


「投資……どういうものでしょう?」


「前に西側に港町を作るって話があったでしょう? あそこを重点的に開発してるの」


 すでに港自体は完成してて、前にナットのライブで見た帆船が来たこともあるそうだ。

 まだ定期就航というわけじゃないけど、練習航海を兼ねて貨物の行き来は行われてるらしい。


「将来的に大きな港町になりそうですね」


「ええ。南側にはまだまだ未踏地域があるし、いずれ竜の都アップデートが来たら、竜族との交易もありえるものね」


 そういえば、竜の都には大型魔導船が停泊できる港があるんだっけ。

 今のうちに言っておいた方が……いや、やめとこ……

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