第541話 色とりどりの組み合わせ

 花瓶や植木鉢は手で運び、金貨やガラスが詰まった箱は転送の魔法で屋敷の裏庭へと送った。

 これぐらいなら全然平気なんだよな。クールタイムは長いけど……


「花瓶と植木鉢はそのまま使う?」


「はぃ。スウィーちゃんを呼んできますね」


 屋敷へと戻ってきて、無事転送されているのを確認。

 時間もあるし、ミオンはそのまま裏庭の手入れをするとのこと。

 俺はとりあえず、ガラスの再生を試したい。


「こっちのお金の箱は蔵の方にお願いできますか?」


「ああ、任せてくれ」


 うーん、頼もしい。というか、いろいろ任せちゃえるのって、やっぱりありがたいよなあ。

 俺は割れたガラス製品でいっぱいの箱を寝室の作業スペースへと運んで、さっそくリサイクルを試すことにしよう。


「ワフ?」


「危ないから触っちゃだめだよ」


「ワフン」


 なんだろうと覗き込むルピに一応注意を。

 エルさんは、金貨の箱を運んでくれたあとは、いつもと同じで読書の模様。

 白竜姫様が起きてきたら、おやつにしようかな。


「さて、俺も気をつけないとな」


 しっかりと手袋をはめてから、割れたガラス瓶をひとつ手にとる。

 ちょっと薄緑色がかったそれを、両手の平の上に載せて粒化の魔法を唱える。


「おっとと」


 砂粒に戻ったガラスを木皿へと。

 これを繰り返して集めておくつもりだけど、色違いは別々にしといた方がいいかな。

 黙々と色別のガラス粒を作り続けているうちに、アレが作れそうな気がしてきた……


 ………

 ……

 …


「ショウ君。休憩しませんか? アルテナちゃんも起きましたから」


「っと、おっけ。じゃあ、牛乳もちでも作ろうか」


「ぁ! 前に豆乳で作ったおもちの牛乳版ですか?」


「そうそう」


 アンバーナウトの牛乳が手に入るようになって、これを使ったおやつを。

 牛乳、片栗粉、砂糖を混ぜて弱火で煮て、少し固まり始めたら一口大にして冷水で冷やすだけ。

 水気を切って、きな粉をまぶしてとフェアリーの花蜜を掛ければ、モチッとプルんとしつつ甘い牛乳もちのできあがり。


「細かく砕いたオーカーナッツをいれたやつも作ろうか」


「はぃ。あ、レーズンはどうですか?」


「お、いいね」


 ってことで、プレーン、ナッツ、レーズンの牛乳もちを作って、これで足りるだろう。

 ミオンに白竜姫様とエルさんを呼んできてもらって、スウィーたちは……すでに準備万端っぽい。


「おやつ〜」「〜〜〜♪」「「「〜〜〜♪」」」


「手を拭いてからにしましょうね」


「は〜い」


 エルさんがお茶を用意してくれ、みんな着席したところで、


「じゃ、いただきます」


「「「いただきま〜す」」」


 ………

 ……

 …


 おやつが終わって、午後3時すぎ。

 今日は午後4時にはログアウト予定なので、残りの時間はさっき思いついたあれかな。あ、いや、その前に、


「花瓶と植木鉢、どう?」


「はぃ。いろんなところに置きましたから、見てもらえますか?」


「おっけ。じゃ、案内よろしく」


 俺とミオンでと思ってたんだけど、ルピやスウィーたち、白竜姫様やエルさんも連れだってぞろぞろと。


 まずは隣の書斎。ここにはスウィーたちのベッドがわりの竹籠が置いてあるんだけど、その側にどっしり安定感のある花瓶。小さな黄色い花はコプティだよな。


 次は白竜姫様の寝室。大きなテーブルの上に白い陶器の一輪挿し。白いユリっぽい花が生けられている。

 それにしてもこの白い陶器、ジンベエ師匠の作品らしいけど、どうやって作ったのか聞きたい……


「次はエルさんのお部屋ですね」


「ああ、どうにも花は似合わないと思うんだがな」


 と苦笑いのエルさん。

 机の上に四角く無骨な感じの花瓶。そこに薄紫の紫陽花のような花が生けられている。

 うーん、ミオンのセンスがすごくいい……


 その隣は客室で、こっちにはカラフルな花瓶があって、そこには色とりどりの花が生けられていて賑やかな感じ。

 あとで寝室にも置く予定だけど、それでも使いきれてない花瓶は、いったん浴室に置いてあるそうだ。


「あとは玄関にも飾ったりしたいんですけど」


「あー、今って置く場所がないのか。場所はあるし、小物を収納できる棚でも置こうか」


「はぃ」


 キッチンから裏庭へと出ると、右手奥の花壇の場所に植木鉢がたくさん並んでいた。

 どれも土を入れてあって、何の種を蒔くかはスウィーやフェアリーズ、白竜姫様と相談して決めるらしい。


「〜〜〜♪」


「楽しみ〜♪」


 夜にってことにしたらしいので、俺はガラスの方をやるかな。

 良いアイデアも思いついたし、出来上がったら南の島の教会に置くのもいいかも。


 ***


「こんにちはー」


「あ、ヤタ先生」


 リアルに戻ってくるとヤタ先生が席にいて、ベル部長もログアウトしてきたのか、目を開く。で、


「ショウ君。サバナさんの島にある転移魔法陣の情報が手に入ったわ」


「「あ……」」


 昨日の向こうの一般公開に当選した『知識の図書館』の人が、向こうの転移魔法陣を鑑定してきてくれたらしい。


「どういうお話ですかー?」


 ヤタ先生には伝わってない話だったので、俺の方から軽く説明を。

 転移魔法陣の個体番号から、その世界座標が割り出せるって話。


「なるほどですー。ですがー、それは先方にも許可を得てるんですかー?」


「はい。このことはサバナさん、その無人島からスタートした島主にも、ちゃんと了解を得ています」


「それならオーケーですー」


 あ、そこはちゃんと許可を取ってだったんだ。

 こっそり調べるっていうのも、どうかなって思ってたし。


「サバナさんが一度南の島に来たいって言ってたらしいし、エサソンとキジムナーの顔合わせがあるかもしれないわよ?」


 う、それはちょっと見たい……

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