月曜日
第540話 二学期開始!
「じゃ、また昼に」
「ん」
久々の学校で、みんなもまだふわっとしてる空気が。
夏休みにどこに行ったとか、そう言う話であちこち盛り上がっている。
「おう! 久しぶり!」
「おは。お前……焼けたな」
陸上部だからか、見事に小麦色の肌になってるナット。
こいつはまあ、昔っから夏の終わりにはこうなってたからなあ。
「お前は全然だな」
「まあ、ずっと家にいたし」
まともに外に出たのって、合宿で沖縄行った時と、じいちゃん家に行ったときぐらい?
あ、午前中に買い物には出てるか。
「で、そっちは進捗あったのか?」
小声でそう聞いてくるナット。
「島の北側はやっとちょっと進んだってぐらいだな。ギルドで販売とか始めたし、ちょっと他のことが忙しくて……いっ!」
急に耳を引っ張られて、
「そうじゃねえって。出雲さんとのことだよ」
「まあ、それは……、じいちゃん家にも連れてったし……」
「ほうほう」
ニヤニヤとした顔で続きを催促するナットだけど、それより、ミオンといいんちょがこっちを見て何やら話してる様子が。
「……お前はどうなんだよ」
「俺は昨日デートしたぞ?」
「嘘つけ。奈緒ちゃんも一緒だっただろ」
「なんでバレてんだよ……」
そりゃ、美姫に聞いてたし。
奈緒ちゃんがいいんちょから参考書もらうって話のついでに、ショッピングにも行ったらしい。当然、ナットが荷物持ちで。
「IROの方はどうなんだ?」
「ああ、それでちょっと相談ある」
また少し前のめりになったナットが声を潜める。
「ん?」
「お前が欲しがりそうな物を見つけたんだよ。できれば、そっちの島の何かと交換して欲しい」
俺が欲しがりそうな物? なんだろ……
「はいー、二学期のはじまりですよー」
「おっと、詳しい話は後でな。いいんちょもいたほうが良いし」
「りょ」
今日はホームルームと始業式をやって終わり。お昼以降は部活の予定。
そういえば、リアルの部室行くのも久しぶりだな……
………
……
…
「早いわね」
「ぁ、部長」
「どもっす」
部室に入ってVRHMDを被ったところで、ちょうどベル部長が現れた。
いつものように、まずは冷蔵庫からエナドリを取り出してから、ゲーミングチェアに深く腰掛ける。
「昨日はごめんなさいね。セスちゃんと話した内容はアーカイブで確認させてもらったわ」
「いえいえ。アズールさんから何か情報が来るのも今日以降だと思うんで」
「了解よ。その情報次第だけど、セスちゃんとも相談して他のギルドのギルドマスターには内容を共有するかもしれないわ」
得られた情報がワールドクエストの目標にも設定されている『侵入した悪魔の目的』の可能性もある。
だとすると、あんまり秘密にしたままなのも問題になりそうだと。
「あー、確かにそうっすね。早めに共有したほうが、ワールドクエストも進むかもですし」
俺やベル部長たちのせいで、ワールドクエストがうまく行かなかったってなるのも嫌だし。
「ただ、得られた情報も嘘か本当かわからないし、慎重に動くつもりよ」
「じゃあ、そのあたりも伝えておきます」
ともかく、まずはログインして、連絡来てないかを確認だな。
で、そっちはいいとして、
「ショウ君。あの話を……」
「うん。えっと、俺の友達のナットのギルドから、小豆っぽい植物を見つけたって話があって、そこと取り引きしたくって」
「え? 小豆を見つけたの!?」
ちょうど昨日見つけたらしく、扱いをどうしようか相談した結果らしい。
ナットの『妖精の友』も『白銀の館』の同盟ギルドだし、いいんちょとも仲良いしってことで、うちまで話が通るんじゃないかって。
「そういうことね。うちもいろいろもらったりしてるから全然問題ないわよ。……ポリーさんにまかせちゃえばいいのよね?」
「そうしてもらえると」
いろいろと察してくれてるベル部長の言葉に、ミオンもうんうんと頷く。
あとはナット頑張れってことで。
「それで、小豆と何を取り引きするつもりなのかしら?」
「向こうの要望はキュミノンですね。あいつのギルドがある場所って、うちの島と気候も似てるし、どっちも栽培できるんじゃないかって」
「いいわね。ちょうど昨日、ティル・ナ・ノーグの販売の抽選もあったから、ログインしてそっちも確認した方がいいわよ」
そっちもそっちですごい盛り上がったんだとか。
今回はもう渡すもの渡してあるし、向こうから届くもの、花瓶、植木鉢、ガラスが楽しみだな。
***
「あ、着信が」
「え? もう尋問終わったのかな?」
ミオンにはエルさんを呼んでもらって、俺は魔導転送箱を開ける。
いつものように手紙が入ってたので、内容を確認……
「ああ、依頼と販売の方か」
アズールさんからの手紙で、尋問の方は大した情報を得られてないので継続中。
それとは別で、昨日の販売でこちらが受け取った物とお金を、もう既に大型転送室に送ったとのこと。
「やあ。連絡があったようだが」
「えっと、悪魔の話じゃなくて、ギルドの販売で手に入った物を送ってくれたと」
「なるほど。運び出すなら手伝おう」
「助かります」
さっそく取りに行きたいと思ってたし、エルさんにも手伝ってもらおう。
量が量だし、シャルたちにも手伝ってもらうかな。
「行きますか?」
「うん。じゃ、お願いします」
「ああ、任せてくれ」
………
……
…
大型転送室に降りてきたんだけど、花瓶と植木鉢の数がすごいな。
あっちの木箱はガラスの破片で、こっちの木箱にはお金が入ってるらしいけど……袋づめしてあるのか。
「うわ、金貨が詰まってる……」
「一袋、100枚でしょうか?」
「ぐらいかな。持って帰ってから確認しようか」
「はぃ。任せてください」
ミオンが会計スキルを持ってるし、そっちは任せちゃおう。
「それじゃ、お願いします」
「任せてくれ」
「ニャ!」「「「ニャ〜」」」
まずエルさんと俺で金貨の箱を。
ミオンとシャルたちには花瓶、植木鉢をひとつずつ持ってもらう。
まあ、何回かに分けて運べば……、って転送すればいいじゃん!
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