第538話 竜族のご意見番

「ただいま!」


「ふう、ただいま。おかえり」


 あの後は用事があるからってことで、すぐログアウトし、ミオン、ベル部長、美姫とのショッピングに出かけることに。

 それ自体は予定通りだったんだけど、やっぱりこう、女性物の服を選ばされるのは疲れる……


「良き夏休み最終日であったの!」


 美姫は当然というか元気なまま。

 親父からもらった小遣いで、新しい靴を買ってウキウキっていう。


「兄上! 夕飯にしようぞ!」


「はいはい」


 夕飯っていっても、デパ地下で買ったお高い松花堂弁当。

 美姫が嫌いなものは……煮物のニンジンぐらいかな。


「あったかいお茶の方がいいか?」


「うむ!」


「準備しとくから、荷物置いて着替えてこい」


 まずは手を洗って、……めんどうなのでパックのお茶でいいか。

 お湯が沸くまでの間にテーブルを拭いて弁当を広げる。ついてきた割り箸はしまって、いつもの箸を。小皿も用意しておくか。


「待たせたの!」


「ん。じゃあ……」


「「いただきます」」


 ………

 ……

 …


 食後のデザートも、デパ地下で買ったお高いブランドアイス。

 いつも食べてるやつの三倍ぐらいの値段するんだよなあ、これ……


「そういえば聞き忘れてたけど、真白姉ってどこまで行ってんの?」


「んむ? 渓谷を抜けた先がかなり開けておるそうでの」


 かなり広い草原らしく、二人で調べるのも大変なんだとか。

 なんで、ある程度、方向を絞って調べる方向にシフトしてるらしい。


「面白そうな場所ゆえ、『白銀の館』も手伝いたいところではあるのだがのう……」


「南の島の一般公開って今日だっけ」


「うむ」


 今日の魔女ベルの館の放送で一般公開を宣言し、さっそく条件を満たせた人たちと南の島へ行くらしい。

 ガジュたちも今日ライブに映るのかな? ちょっと見たい気持ちもあるんだけど、エメラルディアさんの件もあるからなあ。


「でも、そんな広い場所で、よくマリー姉を見つけられたよな。で、土下座したって言ってたけど、人の姿だったんだよな?」


「うむ。シーズン殿曰く、……いや、これは会うまでのお楽しみの方が良いかもしれん。兄上はネタバレは嫌いであろう?」


「うっ。まあ、いいけど」


 アージェンタさんも、アズールさんも、バーミリオンさんも男前だったし、白竜姫様も将来は美人になりそうだし、エメラルディアさんも美人なんだろうなあ。

 そんな人が土下座って、俺の作ったとろとろ干しパプ、なにが違うんだろ……


***


「今日はどうしますか?」


「うーん……。とりあえず、パプの実を採りに行かないとかな。エメラルディアさん、すぐ来ちゃうかもだし、留守番お願いしていい?」


「はぃ」


 前に『白銀の館』にお裾分けした時に、大きな保存庫をいったん空っぽにした。

 結局、その後にまた、パーンやシャルたちが肉や野菜を入れてくれてるけど、パプの実はもうなかったはず。


「ごは〜ん」


「やあ、二人とも」


 白竜姫様がミオンに飛びつく。

 まずは腹ごしらえからだけど、今日は何を作ろう……

 あ、そうだ! カレー粉ができたし、タンドリーチキンを作ってみよう。


「よし。じゃ、ミオン手伝って」


「はぃ!」


 ………

 ……

 …


 ルピ、レダ、ロイとラズを従えて、まずは厩舎へ。


「ブルル〜」


「ワフ〜」「クル〜♪」


 挨拶を終えてから頬を寄せてくるリゲルを撫でていると、厩舎の掃除をしてくれていたシャルたちが集まってきた。


「いつもありがとうな。ちょっとパプの実を採りに行こうかなって思ってるから、準備お願いしていい?」


「ニャ!」「「「ニャ〜」」」


 ってことで、リゲルには荷物袋を左右両方に装着してもらう。

 俺とミオンの二人乗りも余裕なリゲルなので、今までより木箱二箱分ぐらい多く採集できるのが嬉しい。


「今日もよろしく」


「ブルルン♪」


 シャルたちの準備も終わったので、みんなでぞろぞろと教会裏へ。


「リュ〜」


「パーンたちもいつもありがとうな。パプの実採りに行くけど、一緒に行く?」


「リュリュ!」


 もちろんって返事で、手の空いてる子たちを集めてくれた。

 なんか思ったより大所帯になっちゃったけど、最近あんまり一緒に活動できてなかったし、ちょうど良かったってことで。


 ………

 ……

 …


『ショウ君。今いいですか?』


「大丈夫。何かあった?」


 周りではパーンたちがパプの実を集めてくれていて、そろそろ荷物袋もいっぱいになりそうだし、戻ろうかなと思ってたところ。


『今さっき、お手紙が届きました。私の方で読んでいいですか?』


「うん。お願い」


 エメラルディアさんと連絡取れたかな?

 いや、昼に話したばっかりだし、それはないか。


『あ、アズールさんからですね。えっと……、悪魔を捕まえたそうです!』


「えっ!?」


 どうやら、一般公開された南の島へ行こうとした人の中に、プレイヤーに擬態した悪魔がいたらしい。

 初日ということもあって、アズールさんが目を光らせてたところにのこのことやって来て……


「ん? あ、捕まえたってことは、目的のことも何かわかったのかな?」


『いえ、これから尋問するそうです』


 なるほど。


「あれ? じゃあ、俺に報告してくれただけ?」


『えっと、尋問で得た情報の取り扱いについて、ショウ君の意見が聞きたいと』


「え?」


 なんで俺に気を使うのかわからないんだけど……、まあいいや。今すぐ、聞いちゃおう。

 ミオンと一対一だったギルド通話を全員に切り替えて、


「アズールさん。ショウです」


『あ、ショウ君。さっそく連絡ありがとー』


『ショウ様。こちらでも報告は受けておりますが、ご意見を頂けますでしょうか?』


 アージェンタさんも聞いてたか。当然だよな。

 それはいいんだけど、


「えっと、そもそも俺の意見って必要です?」


『下手にバラすと、擬態してる悪魔たちにまで伝わっちゃうからねー』


『我々が悪魔を捕まえたことは、まだ白銀の館の方々にも秘密にしております。南の島の一般開放に悪影響を与えかねませんので』


 なるほど……


「少し時間もらっていいですか? あと、俺から『白銀の館』の人たちに相談するのはいいです?」


『ええ、それは問題ありません。アズール』


『うん。尋問で何かわかったら、ショウ君に連絡するね』

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