第536話 竜も欲しがる島料理
時間はそろそろ午後9時半。ギルドでの販売の質問がたくさんあって、それだけで結構時間食っちゃったっぽい。
俺は質問に答えてる間にお腹いっぱいになったけど、白竜姫様は……バーミリオンさんが追加を焼いてくれてるし、任せといていいか。
『では次の質問です。島の北側へはどれくらいまで進みましたか?』
「あ、そうだ。えっと、湖の向こうの森を抜けた先が草原で……」
まずは、アンバーナウトっていう珍しい牛を見つけて、パーンのおかげで飼うことにしたことを報告。
【ラカン】「いいねいいね!」
【ストライ】「本土のホワイタウトの原種っぽい気がする……」
【サロンパ】「希少種???」
【リソッス】「何頭でしょう?」
etcetc...
本土にいる家畜の牛はホワイタウトっていうやつらしい。
牛乳というとホワイタウトのミルクのことで、畜産スキルがある人がヤコッコの次ぐらいに飼い始めるんだとか。
「うちのアンバーナウトは3頭で、パーンがスカウトしたらついてきてくれた感じです」
『厩舎を新しくしたんですよね』
「そうそう。教会裏だともう狭いから、屋敷から少し離れた場所に厩舎を建てました」
新しく建てた厩舎、次のライブでお披露目するぐらいのつもりでいたら、バーミリオンさんとエルさんが手伝ってくれて、1日で建て終わっちゃったんだよな。
伐採した木を運んでもらったり、梁を渡すときに持ち上げてもらったり、屋根板を並べてもらったり、釘打ちに手の上に乗せてもらったりとか……
【ミイ】「滞在費は労働で、ですね」
【ドラドラ】「ドラゴンライダーじゃん!w」
【マットル】「見たかった……orz」
【ウッピー】「ドラゴンは重機だった!?」
etcetc...
「建ててる様子は短編で出す予定だよね?」
『はい!』
で、そのあと、ホガニーブルが突っ込んで来たので、それを退治して肉やらをゲットした話を。
ホガニーブル自体は、本土でもよく見かける牛のモンスターらしい。
『どういう料理に使う予定ですか?』
「んー、まあ、無難にシチューとかかな。あとはビーフカレー? 赤身だし、素直にローストビーフとかもいいかも」
【イマニティ】「食べたい〜〜〜!」
【マスターシェフ】「ローストビーフいいね!」
【カガサン】「次回のお題は……ビーフ!」
【アーケス】「牛すじ煮込みとかどう?」
etcetc...
次回のライブはローストビーフサンドでも持って、草原に行ってみるかな。
まあ、安全第一で行こう。
『そろそろ時間なので最後の質問にしますね』
「りょ」
『バーミリオンさんに島の感想を一言お願いします』
あー、そういうパターンもありか。
なんか突然な気もするけど、俺も気になるところなので聞いておきたい。
料理とお酒で満足してくれてるだろうし、悪い感想も出てこないと思うし。
「バーミリオンさん、いいですか?」
「ん? どうした?」
白竜姫様と鉄板を囲んでいたバーミリオンさんに来てもらう。
「いきなりなんですけど、この島ってどうです?」
「いや、最高だろ。ショウの作る飯も酒も美味いしな!」
「ありがとうございます」
いきなり聞かれてちょっと驚いた顔になったけど、すっごくいい笑顔でそう答えてくれる。
「そういや、今日は女神……」
「おかわりっ!」
「おっと、すまん」
白竜姫様がバーミリオンさんの話を遮って飛びついた。っていうか、バーミリオンさん、ミオンのことを話しそうになってて危ないところだった……
ミオンが島に来てのライブは、アルバムの発売日と調整を取ってる途中だし、先にバレるのは……悪くはないけど、まだ隠しておきたいところ。
『ショウ君。そろそろ時間です』
「りょ。じゃ、何か演奏してかな」
『はい!』
俺が古代神楽笛を取り出すと、それに気づいたトゥルーやセルキーたちが集まり始める。それに気づいた白竜姫様もお皿を置いてやってきた。
「おうた〜♪」
「ワフ〜」「キュ〜♪」
【シェケナ】「おうた〜♪(*´∇`*)」
【ベアメン】「今日のおうたはなんですか〜♪」
【ボドルザー】「これで来週も頑張れる〜」
【ヒバリ】「ほんま癒やしやし」
etcetc...
バーミリオンさんは何が始まるのか理解できてない感じだったけど、エルさんが説明してくれてるので任せとこう。
さて、今日の選曲はなんだろ?
………
……
…
【演奏スキルのレベルが上がりました!】
お、ようやっと上がって、これで6。確か選曲できるようになるんだっけ。
今日、選曲されたのは『あおいそらとうみと』っていう童謡で、夏の海にぴったりな曲。
今後のライブのこともあるし、俺もそろそろ楽譜集を読まないとかなあ。
<はいー。ライブは終了しましたよー>
「『お疲れ様でした』」
ミオンは着替えを終えたらすぐログインするとのこと。
ヤタ先生はリアルビューモードに切り替えて……お酒を取りに行った。
「ショウはすげえな!」
「え?」
静かに合唱を聴いてくれてたバーミリオンさん。
どうやら白竜姫様たちの歌に感動したっぽくて、めちゃくちゃ褒めてくれた。
「飯もうめえし、なんでもできるんだな」
「いや、なんでもはできないですって」
ドラゴンみたいに空を飛べたりはしないし。まあ、飛ぼうとも思わないけど。
そんな話をしていると、ミオンがログインしてきた。
『ショウ君。ログインしました』
「りょ」
昼は港に一緒に来てたミオンだけど、神樹経由で屋敷へ戻ってログアウトしてもらっている。なぜかというと、
「転移魔法陣、置けたよ」
『はぃ』
ってことで、屋敷からミオンが到着。
それを見たセルキーたちが、ミオンの分の魚介類を用意してくれる。
「こちらは任せてくれ」
「あ、すいません」
エルさんが洗い物をしてくれるそうなので、申し訳ないけどお任せしちゃおう。
いい感じに焼けてきた串に塩を振って、焼き上がったクロムナリアにバターとクルーぺソースを垂らす。
「熱いから気をつけて」
「はい。アルテナちゃんも食べましょう」
「うん!」
美味しそうに食べてくれてるのをみると、俺ももう少し食べたくなってきたな。って、ルピたちも目がキラキラしてるな。
「ルピたちも、もう少し食べる?」
「ワフ」「「バウ」」
大きなラティオラの開きを、みんなで取り分けて……ミオンも欲しそうなので、みんなで分けて食べることに。
<いいですねー。私も日本酒とアジの開きですー>
あ、そうですか……
………
……
…
海岸でまったりした後、小型魔導艇で港まで帰還。
転移魔法陣と転移の魔法で、あっさり屋敷まで帰ってきた。
帰りがすぐなのは楽だよなあ。これでインベントリを圧迫しなければ最高なんだけど。
「ショウ君。転送箱に着信が」
「あ、開けて中身も確認してくれる?」
「ぁ、はぃ」
アージェンタさんかな?
バーミリオンさんに、そろそろ戻ってこいとかそういう内容な気がするけど。
「ぇ……?」
「どうしたの?」
「あの、エメラルディアさんが、ショウ君が作ったとろとろ干しパプを探してるらしいです……」
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