土曜日
第534話 夏休み最後のライブ
今日の夜のライブは、小型魔導艇に乗って砂浜に行って、また海鮮バーベキューでもしようかなと。
神樹を使って移動してもいいだけど、ルピのお母さんのお墓参りもしたいので、展望台経由で行くことに。
それに、
「アルテナちゃん、大丈夫ですか?」
「うん!」
白竜姫様も参加。もちろんエルさんと、遊びに来てるバーミリオンさんも。
お墓参りを終えて、山道を港に向けて歩いてるんだけど、白竜姫様も楽しそうでなにより。
疲れたらバーミリオンさんが肩車なりしてくれるって言ってるので、任せちゃって大丈夫かなと。
まあ、そのバーミリオンさんは、もともとあった方の魔導保存庫をかついでもらってるんだけど。
「〜〜〜?」
「うん、いいよ」
港へとつながる坂道を降りてる途中で、スウィーが例によってカムラスを採りに行きたいとのこと。
もちろんオッケーなんだけど、
「ミオンたちも行ってきたら?」
「はぃ!」
ミオンが白竜姫様とエルさんを連れて、カムラス畑の方へ行くのを見送り、俺とルピたち、そして、バーミリオンさんは酒場の方へ。
「荷物、適当に置いちゃってください」
「おう」
持ってきた荷物を置いて掃除でもと思ったけど、セルキーたちが綺麗にしてくれてるんだよな。
バーミリオンさんが保存庫を置いてくれ、ちょっと手持ちぶさたな感じなので、
「お酒って倉庫の方にあるんだっけ?」
「ニャ」
いつも銀猫便でお酒を運んでくれてるシャルに案内してもらい、奥の倉庫の方へ行ってみることに。
お酒に関してはスウィーがシャルやパーンに任せてて、適当に竜の都に出荷されているはず。
詳しくはわからないけど、樽に入れて寝かせた方がいい味になるとか聞くし。
「うわ、結構あるな……」
ぱっと見10樽、いや、20樽以上ある気がするな。
シャルの話だと、俺とミオンがいない時にちょくちょく作ってるらしい。どうりで最近、樽が足らないなあと。
隣を見ると、バーミリオンさんがキラキラした目をしてるので、
「えーっと、酔わない程度にどうぞ」
「わりいな!」
俺はどの樽にどのお酒が入ってるのかわからないので、シャルに説明してもらいつつ確認を。
ワイン、バーボン、アクアビット、モルトウイスキー、シルビナ(またたび)酒。結構種類あるなあ……
「よし。こいつだ」
そう言って樽を1つ持ち上げるバーミリオンさん。バーボンが気に入ったらしい。
多分、今日飲みきっちゃって、お土産にまた1樽持って帰るんだろう。
「キュ〜♪」
「おっとと」
飛び込んできたトゥルーをキャッチ。
「キュキュ〜」
「うん。今から行こうか」
この前、仕掛けた(沈めた?)壺を確認しないとだな。
タコがゲットできれば、タコ唐、タコのマリネを追加しよう。クルーペソースでタコわさっぽいのも作れるかな?
***
「来週の月曜日から二学期ですがー、みなさん気持ちの切り替えは大丈夫ですかー?」
夕飯と洗い物を終わらせてバーチャル部室に来ると、ヤタ先生からそんなことを言われてしまった。
確かに今週とかずっと昼も夜もゲームしてたし、ちょっと生活を見直さないとだよな。
「ショウ君。明日はうちに来ますよね?」
「あ、うん。美姫はどうする?」
「行きたい!」
日曜昼の奈緒ちゃんへの家庭教師は、二学期に入ったらまた再開するらしい。
まあ、明日は夏休み最後の日だし、ゆっくりのんびりした方がいいかな。
「はぃ。部長も遊びに来ませんか?」
「え? いいのかしら?」
「もちろんです」
明日は魔女ベルの方のライブが夜にあって、南の島の一般公開の話をするらしい。
ただ、すでに死霊都市にいるそうなので、急ぐ準備とかもないとのこと。
せっかく集まって、でも、IROも味気ないし、どこかに買い物とかがいいのかな?
………
……
…
旧酒場のバックヤードにあるロフトで目を覚ます。
じゃれついてくるルピを一通り撫で回してから外へと出ると、レダとロイが駆け寄ってきた。
「「バウ」」
「おはよ。白竜姫様たちは?」
その問いかけに堤防の方を見る2人。
堤防の先ではバーミリオンさんが釣りをしていて、白竜姫様は灯台のところで遊んでるっぽい。エルさんがついてるから大丈夫かな。
『ショウ君、ルピちゃん。スウィーちゃんたちはどこですか?』
「ワフ?」
「バウ」
トゥルーたちとカムラスの畑に行ってるそうだ。
ライブまであと30分ほどだし、呼びに行った方がいいか。
「釣れてます?」
「おう。結構釣ったぜ」
海水を張った壺の中には、結構大きなオランジャック(アジ)が5、6匹。これはフライにでもするかな。
「あとで振る舞うので持って行ってもいいです?」
「ああ、うまいもの食わせてくれ」
とのことなので、セルキーたちにそれを渡す。
レダとロイにはスウィーたちを迎えに行ってもらって、そろったぐらいでライブ開始の時間になりそう。
「じゃ、ちょっと先に小型魔導艇出してきます」
「おう」
ルピ、トゥルーと3人で灯台裏から古代遺跡の中へと。
ニーナに魔素を充填してもらってるので、いつでも出航可能なのがいいよな。
「よし、乗って乗って〜」
「ワフン」「キュ〜♪」
ちなみにニーナ曰く、この小型魔導艇の航続距離は、ちょうど島をぐるっと一周できるぐらいらしい。
北西の草原から見えた小島も、いつか行ってみないとだよな……
………
……
…
ライブ開始まであと少し。
ちなみに、今日はライブを待ってる人たちが1万人弱いるとのこと。
<10秒前……、5、4、……>
『みなさん、ミオンの二人のんびりショウタイムへようこそ! 実況のミオンです。よろしくお願いします!』
【マスターシェフ】「今日は港かな?」
【ルコール】「トゥルー君待ってたよ〜」
【コンデーン】「白竜姫様はおらず?」
【サテナー】「夏休み最後の癒やし〜」
etcetc...
そういや、夏休み最後のライブになるんだっけ。
まあ、いつもと変わらない感じでいいよな……
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