金曜日

第533話 ドラゴンは重機

 昨日は島の北側への探索に出たので、今日はのんびりとする予定だったんだけど。


「こんな感じでいいのか?」


「はい。バッチリです」


 緋竜バーミリオンさんが、俺の大工仕事を手伝ってくれている。

 昼を食べた後にログインし、さっそく厩舎を作ろうかなとしてるところに、急に飛んできたバーミリオンさん。休暇をもらったということで、島に遊びにきたらしい。

 それは全然いいんだけど、アージェンタさんから『ショウ様の手伝いもするように』と言われてきたんだとか。


「ま、そんなわけだし、何か手伝えることねえか?」


「えーっと、今から厩舎を作るつもりなんで、そのための木材を調達に行くんですけど……」


「おう。運ぶのは任せとけ」


 そんなわけで、島の南西の森から5本ほど木を切り出して加工。

 作るのは夜からかな思ってたんだけど、一番時間がかかる運ぶ作業が一気に短縮されたので、そのまま建築開始。


 切り出した木の加工は、バーミリオンさんだけでなくエルさんも参加。白竜姫様はミオンが見てくれてるし、体を動かす作業もしたいとのことなので。

 3人だけでなく、パーンたちも手伝ってくれて、一気に木材加工まで終わらせることができた。


『ショウ君。休憩にしませんか?』


「りょ。休憩にしましょう」


「おう!」


「わかった」


 ミオンがおやつと飲み物を用意してくれてるとのことなので、作業を中断して屋敷の裏庭へと移動。

 白竜姫様やスウィー、フェアリーズも揃ってて、待ちきれない様子。


「お疲れ様です。どうですか?」


「さんきゅ。2人が手伝ってくれたおかげで、今日の夜にはできちゃうんじゃないかな」


 午後1時から初めて、まだ3時前。

 夕方までには基礎と柱を立てるところまではできそう。

 夜に石壁を積み上げて屋根を張れば、あとは水桶を置いたり、寝わらを敷いたりとかぐらいだし。

 うん、十分間に合いそう。


「ショウ君?」


「おっと、ごめん」


 白竜姫様もバーミリオンさんも待ちきれ無さそうだし、


「じゃ、いただきます!」


「〜〜〜♪」「いただきまーす!」


 今日のおやつはいろんな具材のトルティーヤ。

 目玉焼き&キューカ(キュウリ)&ベーコンのサンドイッチ風。ベーコン&キャピタ(キャベツ)&ライコス(トマト)でバーガー風。エクリューヨーグルト&ルモネラジャムでスイーツ風。

 アイデアを出したのは俺だけど、作ってくれたのはミオンでどれも美味しい。


「そういえば、竜語の方はどう?」


「すごく難しいです」


 俺が厩舎作りをしてる間、ミオンは竜語のスキル上げを。

 竜語スキルはアンコモンだったので俺も取得したんだけど、全然違う言語を覚えるのって大変だよな……


***


 今日の夕飯は貰い物のそうめん。

 美姫が奈緒ちゃんのところに遊びに行って、柏原のおばさんにもらったやつ。

 それだけだってのもなんなので、豚肉の冷しゃぶサラダでボリュームも加えつつさっぱりと。


「そういえば、サバナさんの島とは繋がったの?」


「サバナ殿のファンとアンシアの手のものが数人訪れたらしいということは聞いておる。おそらくはこちらの南の島の一般公開と合わせるのではないか」


「ん? なんで?」


「訪れたいプレイヤーの数を分散させたいのであろう。一度に大勢が押し寄せると、受け入れる側も難儀するのでな」


 セスたち『白銀の館』が一般公開するのは9月頭。

 ただ、南の島に行くには、名前と所属ギルドを伝え、竜貨を預けないとって形になっている。


「なんか大変そうだな」


「うちはまだ楽な方よの。死霊都市側はアズール殿や竜人族の方々がチェックしてくれるのでな」


 ああ、そうか。あっちの転移魔法陣は、相変わらずあそこにあるわけだし。

 ギルド出張所の作業も任せちゃってるし、やっぱり給料を払った方がいいのかな……


***


「じゃ、お願いします」


「おう。任せとけ」


 竜の姿に戻ったバーミリオンさんが屋根板を並べてくれている。

 その上空にはエルさんがいて、ずれてないかを確認してくれてるっていう……いいのか、これ?

 そもそも、石壁ブロックを積み上げていく段階で、作業台を持ってこようとしたら、


「俺の手に乗った方がはええだろ」


「え?」


 みたいなノリで進んじゃったんだけど。


 用意してあった屋根板が並べられ、チェックも終わったところで、今度は俺がバーミリオンさんの手のひらに乗って、釘を打って固定していく。


「リュリュ〜♪」「「「リュ〜♪」」」


 パーンたちが大盛り上がりしてるので、良しということで。


「あ、そういえば、竜の都ってお金使ったりしてます?」


「は?」


 俺を乗せてくれているバーミリオンさんに、そんな質問をしてみた。


「竜の都で使われることは滅多にないな」


 代わりに答えてくれたのは、近くで釘の入った箱を持って浮いているエルさん。

 曰く、竜の都という名前ではあるものの、各種族がそれぞれ村単位で生活してる集まりっていうぐらいらしい。


「まあ、金なら姫が住んでた王城に山ほどあるけどな。ショウが欲しけりゃ、持ってくるぜ?」


「いや、そういう話じゃないっす……」


 ゲイラさんたちに、給料を払った方がいいのかなと思って聞いてみたんだけど、そういうことなら食材の方がいいのかな。


「あれ? そういえば、死霊都市で働いてくれてるゲイラさんたちって、買い物とかお金でしてるんですよね? そのお金って?」


「ん? そりゃアージェンタからもらってんじゃねーの?」


「えええ……」


 でも、それしか考えられないんだよな。

 うーん、やっぱりいくらかアージェンタさんに渡した方がいいんだろうか……


「ショウは姫様の体調を良くしてくれた。我々にとって、それは金には代えられないものだ」


「そういうことだ。気にしなくていいぞ」


「はあ……」


 白竜姫様の滞在費が、そのままゲイラさんたちに支払われてるって思っておくか。

 それはそれとして、差し入れは増やすことにしよう。


 屋根板を張り終わったら、あとはスレート屋根を乗せるだけ。

 これは薄い石壁を敷いていくだけなので、パーンたちに手伝ってもらう。


「よし、完成!」


【大工スキルのレベルが上がりました!】

【大工スキルの基礎値が上限に到達しました。返還SPはありません】

【土木スキルのレベルが上がりました!】


 これで大工スキルはLvMAX。

 持ってる大工道具で上限突破したけど、さすがにワールド初ではないよな。

 土木スキルはLv9になって、あと1上がったら指輪の補正で上限突破のはず!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る