水曜日

第526話 魅惑の香り準備中

 水曜のお昼。俺、ミオン、エルさんの3人で、次の依頼で出す品をチェック中。

 食料品関連は、ワインの小樽30個、ドライグレイプル30瓶、オリーブオイル30瓶、オーダプラ20箱、キュミノンシード20袋。

 あとはインゴットで、重銀鋼インゴット5本、魔銀ミスリルインゴット3本、緑金鋼インゴット2本。


「結構な量になったなあ」


「ですね」


 今日のライブで依頼を発表するんだけど、ちゃんと物は用意できてますよってアピールしておきたい。前回は遅れちゃったし。


「じゃ、明日になったら、竜の都に運んでもらえますか?」


「ああ、任せてくれ」


 島からいったん竜の都へ運ばれ、その後、竜の都から死霊都市へと輸送される。

 今までは、地下の大型転送室に置いてたんだけど、エルさんはそこから転移魔法陣を使って向こうに渡すところまでやってくれるとのこと。

 ちなみに、昨日送ったモルトウイスキーは、アージェンタさんがすぐに回収したらしい……


「じゃ、先にご飯の準備をしとこうか」


「はぃ」


 今日はいよいよカレーを作ろうかなって。

 キュミノン(クミン)は以前のライブで手に入れたし、カーメリー(ターメリック)とシャンツィー(コリアンダー)は『アズールさんのおかげで入手できました』で通す予定。

 先日のベル部長のライブで、カーメリーとシャンツィーは南の島で採れることを公表したし、そこから手に入れたって推測してくれるはず。

 あとはお米、ハクが無いのが残念だけど、ナンを作っておかないとだよな。


 ***


「兄上! さっそく悪魔が一体討伐されたそうだぞ!」


「へっ?」


 青椒肉絲を大皿によそっているところに、美姫が階段を駆けおりてきた。

 で、悪魔が討伐されたって、IROのワールドクエストのことなんだろうけど、そんな盛り上がるようなことだっけ?


「わかったから、手を洗ってこい」


「うむうむ」


 その間にご飯とスープをよそい、冷たい玄米茶も用意。

 箸をちゃんと置いたところで、美姫が戻ってきて着席した。


「「いただきます」」


 うん。筍、ピーマン、豚肉がオイスターソースでいい感じの味に。

 間違いなくご飯が進むやつなので、さっきまで騒いでた美姫も黙々と食べている。

 筍とえのきの中華玉子スープも、雑に作ったわりには美味しくできた。


「おかわり!」


「はいはい」


 綺麗に残さず食べ終わったところで、美姫が思い出したように続きを話し始めた。


「魔王国の北に不審な輩が現れての。これはどうも変だと気づいて問い詰めたところ、悪魔だったということらしい」


「へー、擬態するタイプか。そういや、死霊都市にもいたな……」


 ナットに化けた悪魔はいいんちょにあっさりバレてたし、よく知ってたら違和感があってすぐバレるぐらい擬態なのかな。


「鈍いのう……」


「そうか? 魔王国から始まってるんだし、難易度もそんな高くないんだろ?」


「悪魔を討伐したのは、薙刀を持った女性だったという話だぞ?」


「……まさか、ばあちゃん?」


 その言葉にニヤリと笑う美姫。

 伝聞ではあるものの、知り合いの男性、多分、じいちゃんに化けたのを見破ったんだとか。


「まあ、ばあちゃんがじいちゃんの偽物に気づかないなんてないよな」


「うむうむ」


 捕まえるとかどうとかなくて、そのままボコボコにされたらしい。なんか、悪魔の方が可哀想に思えてきたな……


 ***


 ライブの前にバーチャル部室でミオンとベル部長にもその話を。


「さすが、おばあさまですね!」


「うむうむ」


 ミオンは素直に喜んでくれてるけど、ベル部長は驚いてるというか、呆れてるというか、


「まあ、マリーさんのおばあさんなら納得よね」


「そこで納得されても……」


 セスの話はフォーラムの魔王国スレッドに書いてあったとのことなので、俺とミオンはスルー。

 ただ、詳しい話はやっぱりゲーム内で聞いてみないとってことで、他のギルドとも連絡を取るそうだ。

 それいいんだけど、


「先生、来ませんね」


「だね。でも、今日はそんなに何かあるわけじゃないかな」


 お屋敷で次の依頼のことを話して、そのあとは飯テロして、みんなで歌って、それでちょうど1時間ぐらいだと思う。


「そうだ兄上。一つ頼みがあるのだが」


「ん? ゲーム内で?」


「うむ。白銀の館のメンバーが、一度で良いので島のワインを飲みたいとな」


「なんだ、それぐらいなら全然いいよ。今度、アズールさんかゲイラさんに届けとくから」


 普段からセスがお世話になってるし、マリー姉もシーズンさんにお世話になってるし。

 あ、でも、シーズンさんはマリー姉と同い年の大学一年生だから、お酒はまだダメなんだっけ。代わりにとろとろ干しパプあたりがいいかな。


「ショウ君の方で何か欲しいものはないの? 今日の依頼以外で何かあれば調達するわよ?」


「うーん……」


 ちらっとミオンの方を見てみると、同じように考えてる様子で、


「ぁ。本土で使ってる布とかありませんか?」


「ああ、そういうのか。じゃ、俺も調味料とか適当に欲しいかも」


 本土の人たちも料理にいろいろ工夫してそうだし、そういうのが知れたらなって。

 こっちからあれこれ指定するのも大変だし、適当に選んでもらうってことで。


「ショウ君。そろそろ時間が」


「あ、やべ。じゃ、そういうことで!」


 カレーの準備は終わってるけど、ナンを焼かなきゃ!


 ………

 ……

 …


『みなさん、ミオンの二人のんびりショウタイムへようこそ!

 実況のミオンです。よろしくお願いします!』


【ゴッソル】「<翡翠の女神様キター!:1,000円>」

【コックリ】「ワールドクエスト情報希望!」

【ニュード】「今日は飯テロある?」

【サテナー】「歌枠でも可〜ヽ(´▽`)/」

 etcetc...


 うん、ワールドクエストの情報はないかな。

 むしろ、何か情報があればだし、飯テロの後にこっちから質問してみよ。

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