第525話 無関心ではいられない

 夜。さっそく、ワールドクエスト対策会議(?)ってことになったんだけど、


「さすがに今回は俺たち関係ないと思うんですけど」


 その言葉にうんうんと頷いているミオン。

 それに白竜姫様を預かってる以上、変なことをする気もないし、される可能性も限りなくゼロにしたいし。

 ただ、ベル部長とセスはそうは思ってないらしく、


「兄上がおる島はそうであろうが、南の島はそうもいかんであろう?」


「悪魔が侵入しないように気をつけないといけないわよ?」


「「あ……」」


 うーん、ガジュたちだけで大丈夫なのか心配になってきた。

 コボルトもまだ片付いてないだろうし。


「ワールドクエストが終わるまで、南の島の一般解放はしない感じです?」


「難しいところよの。今回のワールドクエストだが、いつまで続くかといった情報がなくての」


「公式のワールドクエストのページも導入しか書いてないのよね。これよ?」


 そう言ってページを見せてくれるんだけど、本当に導入のテキストしか載ってないし、達成率も載ってない状態。


「プレイヤーにできるだけ情報を与えない感じですかね?」


「そうでしょうね。目的の調査が必要みたいだし、その方法も考えろということかしら」


 そうなると、討伐というよりは捕獲がメイン? でも、捕まえて……尋問とかってプレイヤーができるものなのかな。

 あ、そうだ。


「死霊都市の時はアズールさんたちが尋問してたみたいだし、うまく悪魔を捕まえたら引き渡すのがいいんじゃないかな?」


「ふむ。兄上の話では、竜族は死霊都市からは動けんのだな?」


「うん。やっぱり厄災がらみなんじゃないかって、地下の副制御室の警備を増やすように言ってたし」


 あそこの副制御室自体は、三箇所全部が再起動しても厄災が起きるわけじゃないみたいだけど、前回の悪魔の狙いがあそこだったからなあ。


「じゃ、もし捕まえられたら、引き渡していいか聞いてもらえるかしら?」


「りょっす。って、探しに行くんですか?」


「いえ、当分は様子見よ。始まったばかりなのもあるし、聞いていた話だと魔王国が舞台になりそうだもの」


 ベル部長の考えだと、この時期に始まったのは魔王国アップデートから入った新人さん向けなんじゃないかと。

 そう言われると、そんな気がしてきたな……


「何にしても、我らは南の島で手一杯なのでな。まずは様子見で問題なかろう」


「おっけ。で、話は変わるんだけど、ドラゴンを見かけた話って進展は? マリー姉とシーズンさんに連絡取れた?」


「うむ。姉上らは現地のエルフの協力を得て、渓谷の出口が見えてきたそうだぞ」


「その途中で、何度か上空を飛ぶドラゴンを見たらしいわ。綺麗な緑色のドラゴンだったそうだし、翠竜エメラルディアさんでしょうね」


 なんだか行ったり来たりしてたそうで、いったい何なんだろうって話だそうで。

 うーん、知り合いを探してる? でも、それなら竜の都まで飛んでいくだろうしなあ……


 ………

 ……

 …


「じゃ、向こうに着いたら連絡するから」


「はぃ」


 明日のライブはお屋敷で、うちのギルドからの依頼&販売の説明する予定。

 で、販売予定のオリーブオイルを受け取りに、トゥルーたちに会いに行こうかなと。久しぶりの展望台経由で。

 ミオンはエルさんや白竜姫様とお菓子作りをした後、俺たちが向こうに着いた連絡を受けたら、神樹の樹洞を通って合流の予定。


「ワフ!」「「バウ!」」


 お散歩が嬉しいのか走り出すルピ、レダ、ロイ。

 とりあえず、このメンバーだけど、教会の前でパーンとシャルを誘ってみるつもり。


「パーン? シャル?」


「リュ」「ニャ」


 裏庭の畑の様子を見てくれてたパーンと、リゲルのお世話をしてくれてたシャルを誘うと、もちろん着いていくとのこと。

 それはいいんだけど、


「ブルル〜」


「リゲルは……階段は大丈夫?」


「ブルルン」


 うーん、古代遺跡の階段の上り下りが不安なぐらいかな?

 でも、リゲルなら平気そうな気もするんだよな。紅緋の女神が乗る幻獣なんだし。


「じゃ、試しにいってみようか」


「ニャ?」


「いや、今日は馬具は無しでいいよ」


 乗って移動は俺が怖いから無しで。のんびりと行けばいいし。


「リュリュ」


「うん、いいよ。シャルも乗りな」


「ニャ」


 ルピを先頭にレダ、ロイが続き、リゲルがパーンとシャルを乗せて歩く。

 結局リゲルは、心配だった階段も難なく上ったし、山道も全然平気だった。

 展望台でルピのお母さんの墓参りをし、レダとロイの家族とも久々に交流しつつ、小一時間ほどで港の、酒場の方へとやってきた。


「キュ〜!」


「トゥルー、遊びにきたよ。ミオンたちに連絡するから、ちょっと待ってね」


 いつものように飛びついてきたトゥルーを下ろして、ギルドカードを取り出す。

 ミオンたちもちょうどクッキーも焼き上がったので、それを持ってセルキーの里の方へ向かうとのこと。


「おっけ。じゃ、先にちょっと船を出そうか」


「キュ〜♪」


 今日はどこかに行くって感じじゃなく、ちょっと沖まで出る程度。

 この前、トゥルーたちに話した魚介類を取るための罠を仕掛けてみようかなと。単に古くなった壺を海底に沈めてみるぐらいだけど。

 パーン、シャル、リゲルにはセルキーの里へと行ってもらい、俺とトゥルー、ルピたちで小型魔導艇のところへと。


「よし、乗って乗って」


「キュ〜」「ワフ」「「バウ」」


 全員乗ったところで小型魔導艇を動かし、まっすぐバックで海へと出たところで180度旋回。 

 灯台のある堤防を越えてセルキーの里がある南側へと進む。


「そういえば、トゥルーはタコは見たことある?」


「キュ? キュキュ〜」


 何それ、知らないという表情のトゥルー。

 日本だとタコ=美味いって認識だけど、西洋だと『デビルフィッシュ』なんて言われるし、このIRO世界でもそういう扱いなのかな?

 でも、この前は大きなイカ、ランスクイッドを美味しそうに食べてたしなあ。

 タコを捕まえて、マリネだとか唐揚げだとか考えてたけど、誰も食べなかったらどうしよ……

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