火曜日

第524話 悪魔が来たりて

【ワールドクエストが開始されました】


「「え?」」


 火曜のお昼。

 いつも通り、白竜姫様たちとご飯を食べたあと、ミオンと裏庭の手入れをしてたところで、いきなりのワールドアナウンス。

 慌ててメニューを開いて確認すると、


【ワールドクエスト:悪魔が来たりて】

『魔王国北部にて悪魔の侵入が確認された。

 奴らの目的は果たしてなんなのか……

 目標:侵入した悪魔の討伐、および、目的の調査:1%』


「あー、バーミリオンさんが言ってたあれって、やっぱりワールドクエストの布石だったんだ」


「なるほどです」


 でもまあ、さすがに今回は関係なさそうかな。アージェンタさんたちに相談はされるかもだけど……、この1%って俺のことじゃないよな?


「休憩にして、エルさんにお話しておきませんか?」


「あ、そうだね。おーい、スウィー、休憩にするよ」


「〜〜〜♪」「「「〜〜〜♪」」」


 いい感じに育った花壇で蜜集めをしてくれてたフェアリーズを呼び寄せる。

 近くに花畑ができたおかげか、最近はフェアリーの花蜜も備蓄が増えてるんだよな。

 まあ、白竜姫様のためにとっておかないとだし、当面は本土に出品しない方が良さそうかな。


「エルさんを呼んできますね」


「りょ。天気もいいし、外でにしようか」


「はぃ」


 ってことで、俺は外用のテーブルと椅子を準備。

 ミオンがアトたちと作ったテーブルクロスを敷いて準備完了。


「おやつ〜♪」


 ミオンと手を繋いだ白竜姫様。

 そして、エルさんがお茶とお菓子を持ってきてくれた。


「ありがとうございます」


「いや、こちらこそ、いつもすまない」


 それらをテーブルへと置き、お茶を淹れてもらってる間、ミオンは白竜姫様の手をおしぼりで拭いている。

 ミオンから布の端切れをもらった俺がハンカチを作ったんだけど、それがずいぶん気に入ったみたいなんだよな。

 で、その様子の短編動画も結構再生されてて、本土でも流行りつつあるんだとか。ただのハンカチなのに……


「ショウ君」


「おっと、ごめん」


 俺以外、みんな待ってるようなので、


「いただきます」


「はぃ、いただきます」


「いただきま〜す」「〜〜〜♪」「「「〜〜〜♪」」」


「感謝を」


 ………

 ……

 …


 おやつを食べつつ、ワールドクエストのことをエルさんにも話す。

 天啓って言えば問題なく通じるんだけど、実はワールドクエストって言ってもNPCには天啓って聞こえてるんだとか。

 それはいいとして、


「ふむ。君たちに天啓が降りたと言うことは、近々何かしら大きな動きがあるのだろうな」


「そうだと思います」


 とはいえ、


「ここは関係ないですよね?」


「うん、大丈夫だと思うよ。転移魔法陣も回収したし、本当に誰も来れない場所だからね」


 来れる可能性があるのは、竜族のごく一部のみ。

 エルさんに聞いた話だと、有翼人でもここまで飛んでくることはできないそうだ。

 遠すぎてマナもスタミナも続かないらしい……


「気になるのは目的ですね」


「そうなんだよな。わざわざ『目的』を調査しろって言ってるから、何か裏があるんだろうと思うけど」


「なるほどです」


 討伐だけだと達成率はある程度までしか上がらないとか?

 目的を調査するのに一番なのは、捕まえて聞き出すことなんだろうけど、それってプレイヤーができることなのかとか……


「エル。アージェンタに死霊都市の警備を増やすよう伝えなさい。今すぐに」


 急に覚醒するんだよな、白竜姫様。

 やっぱりこっちに来てから、よく覚醒するようになった気がする。

 フェアリーの花蜜が効果があるって言ってたし、そのおかげなんだろうけど。

 と、エルさんの視線が俺とミオンに……


「あ、どうぞ、連絡しちゃってください」


「すまない」


 ギルドカードでの通話は、どこで話しても俺たちに聞こえるので、気を使ってもらわなくても問題なし。

 俺からフォローが入れられるかもだし。


「アージェンタ様。今、よろしいでしょうか。姫より急ぎお伝えするようにと」


『何かありましたか?』


「ショウ様より、悪魔の件について天啓があったとのことです。それに対応すべく、死霊都市の警備を増やすようにと」


『なるほど。承知しましたとお伝えください』


 エルさん相手にも真面目だよな、アージェンタさん。

 一応、俺の方からも説明しておくか。


「アージェンタさん。ショウです。天啓の話なんですけど、悪魔たちって何か目的があるっぽいんで、それにも注意してください」


『ショウ様。ありがとうございます』


「以前の狙いは厄災の再現だったはずよ。副制御室に注意しなさい」


 と白竜姫様。

 それをエルさんから伝えられ、副制御室を重点的に警備を増やす方向になった。

 で、ついでにちょっと聞いておきたいことが。


「別件だと思うんですけど、エメラルディアさんの方って何か進展ありました?」


『申し訳ありません。今のところはこれといった進展も無く……』


 まあ、悪魔の話があるし、そっちまで見れないよな。

 そういうことなら……ミオンの方を見ると、うんうんと頷いてくれている。


「ちょっと俺の方でも聞いてみるので、何かあったら知らせます」


『助かります』


 セスかベル部長経由で、マリー姉とシーズンさんに連絡を取ろう。

 あとは……


「あ、そうだ。新しくオオハクが手に入って、それでウイスキーができたので、今度また送ります」


『おお、ありがとうございます』


『おい! 俺の分も!』


『僕の分も!』


 バーミリオンさん、アズールさんも聞いてたのか。いや、聞こえてるよな、当然。

 ギリー・ドゥーが育てたオオハクのモルトウイスキー。俺には美味しいかどうかわからないし、3人に味見してもらおう。


「3人とも、しっかり仕事をしたらよ」


「とのことです」


『承知しました』『おう!』『はーい』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る