第521話 挟んだり挟まれたり

【キャラクターレベルが上がりました!】


 シェンネペンテスの茎を根元からバッサリやったところで、久々のレベルアップ。

 これでキャラクターレベルは20に。BPも10ごとのボーナスが入ったし、SPも余ってることだし、全部ステータスに割り振っちゃおう。


「ミオン。倒せたから、こっち来て手伝ってくれる?」


『はぃ!』


 根っこを掘り出して処分しておかないと。

 あと一応、解体しておくか。ひょっとしたら薬になるかもだし……


「クルル〜♪」


「ラズ! 元気になったみたいで良かった」


 やってきたミオンの肩から俺の肩へと飛び移ったラズが頬擦りしてくれる。

 HPやMPへのダメージはなかったみたいで、単純に魅了状態になってただけかな。

 体が小さい分、吸った量が少なくても効いちゃったとか?


「あの、ショウ君。これって……」


「〜〜〜……」


 周囲の状況に驚いてるミオンとスウィー。

 シャルやクロたちはちょっと寒そうにしてるな。


「リゲルのおかげだよ。焼くよりも凍らせる方が効率いいね」


「ブルルン♪」


 どういう感じだったかを説明しつつ、掘削の魔法を使って根っこを引き抜く。


「あの、凍らせるだけで倒せたんですか? 植物って寒い場所でも大丈夫だったりしますけど」


「物によりけりかな。ウツボカズラはそもそも寒いの苦手だったはず。寒さに強い植物でも、少しずつ寒くなるなら大丈夫なだけで、いきなりはダメなのが多いよ」


 この辺の知識はじーちゃんばーちゃんの受け売り。寒さに耐えると甘みが増す理屈なんだけど、急に寒くなるのは無理だったりする。霜害そうがいっていうんだっけかな。


「すごいです!」


「あはは……」


 シャルやクロたちに他の部分の残骸を回収してもらって、それぞれ個別に鑑定……

 蔓がロープにできそうなぐらいで、あとは微妙。壺からこぼれた液体は、リゲルのおかげで凍っちゃってるけど……これを持って帰ろうとは思わないよな。


「これでいいか」


 石壁を敷いた上に残骸を集め、さらに石壁をかぶせてサンドイッチに。

 次来たときに乾燥してたら焼却処分ってことで、地図に印をつけとこう。


「思ったより時間食っちゃったし、先を急ごうか」


「はぃ」


 ………

 ……

 …


 湖に沿って、緩やかな上り坂を一番北まで来たけど、ここって湖畔にある神樹よりも高い位置なんだ。


「遠くから見るとわからないもんだなあ」


「ですね。でも、すごくいい眺めです」


「〜〜〜♪」


 時間は午後9時半を回ったところ。

 あと1時間ちょっと余裕があるので、ここから北へと進むことにする。

 フォーメーションはほぼ変わらずだけど、ラズは大事をとってミオンの肩にいてもらうことに。


 途中、ダートフォックスっていう狐のモンスターが出たけど、ルピ、レダ、ロイがあっさり倒してくれた。

 毛皮がいい感じだったので、ミオンが何か作ってくれるのに期待しよう。


「ワフ〜」


「おお……」


「わぁ……」


 15分ほど進んだところで森が終わり、そこから草原が広がっていた。

 真っ平な草原って感じではなく、小高い丘なんかも見えて、昔、じいちゃんたちにつれてってもらった牧場っぽい雰囲気。


「ブルル〜」


「ワフ〜」


「ミオン。リゲルとルピたちが走りたいっていうから、変わってもらっていい?」


「ぁ、はぃ」


「見える範囲をちょっと見てくるから、ミオンたちはここで休憩してて」


 ミオンとクロたちはこのあたりでいろいろ探してみるそうなので、無理はしないようにお願いした。

 何かあったら、ギルドカードで連絡するってことで。


「じゃ、軽くあの丘ぐらいまでね」


「ブルルン!」「ワフ!」「「バウ!」」


 ゆっくりと歩き出したリゲルが徐々に速度を上げていく。

 ルピたちも問題なく、余裕の表情でついてきてるけど、最高速だとどっちの方が速いんだろ?


「あの上で止まるよ!」


「ワフ!」


 そう言葉にした頃にはもう目の前っていう。

 手綱を軽く引いて、リゲルに速度を落としてもらう。


「おお、広い……」


 北側にはさらに草原が広がっていて、その先にまた森かな。

 それよりも気になるのは、遠くに牛っぽい動物が見えること。

 3頭かな? 固まって行動してるっぽいけど……


「うーん、あれってポップするモンスターなのかな」


 こっちからは見えてるけど、向こうからは見えてないのか、のんびり草を食んでいる。

 まあ、今日のところは様子見でいいか……


「ワフ」


「ん。もう少し、そうだ、海の方へ行ってみようか」


「ブルルン」


 丘の上から西へ。ほどほどのスピードで走っていくと、草原が途切れて先は崖になっている。

 海の色は暗く、トゥルーたちがいるあたりとは雰囲気も違うんだけど、そんなことよりも、


「あれって島だよな……」


 樹々も見えるので、岩礁ってわけではなさそう。

 小型魔導艇があれば上陸できそうだけど、ぐるっと回って来ないとなのがなあ。


「ミオン、ちょっといい?」


『はぃ。どうしました?』


「えーっと、北西に別の小島が見えたんだけど」


『ぇ!?』


 やっぱり知らないよな。

 前にギリー・ドゥーの森の散策で海まで出たって言ってたし、その時に見つけてたりしないかなと思ったんだけど。

 まあ、見つけてたら報告してくれてるはずだもんな。


『私たちも西へ向かうので合流しませんか?』


「りょ」


 ってことで、南へと。

 ルピがミオンがいる方へと誘導してくれて、


「あ、いた。ミオン!」


「ショウ君!」


 無事合流。

 小島が見える場所まで、このままのんびり進むつもりでいると、


「〜〜〜?」


「あー……。リゲル、ミオンも乗せて大丈夫?」


「ブルルン♪」


 全然問題なしと。


「じゃ、ミオンも乗る?」


「は、はぃ!」


 手を取って引き上げ、前に座ってもらう。

 ゆっくり歩くつもりなので、シャルたちも問題なくついて来れるよな。


「丘の向こうは何かありましたか?」


「あ、そうそう、牛っぽいのがいたんだよ」


 丘の上から見た景色を話しつつ、そのまま西へと向かったこと。で、崖沿いから、話した小島が見えたことを。


「無人島スタートの時にはなかったんですか?」


「無かったっていうか、小さすぎて表示されて無かったのかも」


「なるほどです」


 振り向いて答えられると、顔が近くてドキッとする。

 乗馬中だし、平常心を保たないと……


「ワフ!」


「お、見えた。あれ」


「ぁ、思ってたよりも小さいです」


 どれくらい距離があるかはっきりとはしないけど、多分、山小屋がある盆地よりは小さいぐらい?

 そのまま崖沿いを北に進んだところで……、うん、時間切れだな。


「じゃ、そろそろ帰ろうか」


「転移を試すんですよね?」


「うん。何かあるとまずいから降りよう」


「はぃ」


 転移先は屋敷の裏庭。前に試したときはホールだったけど、あそこだと狭いだろうしってことで設定し直した。汚れたまま家の中もまずいし。


「じゃ、みんな集まって」


 アズールさん曰く、転移や転送で消費MPはその範囲の体積によるっぽいので、できるだけ密集してもらう。

 クロたちはリゲルに乗ってもらって足元にはルピたち、フードにはラズ。

 シャルを抱え、肩にスウィーを乗せたミオンが俺にピッタリとくっつく。


「じゃ、行くよ。……<転移>」


 一瞬で屋敷の裏庭に戻って来れたのはすごいんだけど、MPがごっそり減ってやばい。思わず両膝をついて……


「ショウ君!?」


「ワフ!」


「大丈夫大丈夫。ルピ、マナエイドありがとな」


 なんとか回復できたけど、ミオン、抱きつかれると挟まってるシャルが苦しそうだから……


「ニャァ……」

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