第519話 家に帰るまでが遠足です

「ごは〜ん!」


 駆けてきた白竜姫様がミオンに飛びついた。

 その後ろからは、エルさんがゆっくりと歩いてくるんだけど、かついでる槍にぶら下がってるのはフォレビットかな?


「これを。いつもすまないな」


「いえいえ」


 すでに石壁ブロックと金網を使って、バーベキューの準備は完了。

 ミオンがトゥルーたち、ガジュたちに、白竜姫様とエルさんを紹介してくれているので、さっそく焼き始めよう。


「まずはこいつかな」


 トゥルーたちが捕まえてくれた50cm弱はありそうな大きなエビ。

 ローシェロブスターっていう名前で美味しいらしいけど……伊勢エビだと思う。オレンジ色が濃いのはゲームだからかな。

 こいつを真っ二つに切って、エクリューバターをたっぷり塗ってから、金網の上に載せる……


「うわぁ、これはヤバい……」


「美味しそうです……」


 俺とミオンのつぶやきだけでなく、白竜姫様とエルさんがそれを凝視し、ごくりとつばを飲み込んだ。

 トゥルーやガジュたちからも期待のまなざしがすごい。


「おっと、他のも焼かないと」


 次は俺が何度も逃したエビ、パルリンプっていう名前で、これもちゃんと食用なのを確認したので、ローシェロブスターを囲むように。

 さらにクロムナリアを並べて、あとはワタを取った魚を順番に。


「ワフン」


「おっけおっけ」


 エルさんからもらったフォレビットを解体して、これは少しだけ塩コショウしてから。

 おっと、パルリンプは小さいからか、もういい感じに焼けてきた……


「焼けたよー」


「ぁ、はぃ」


 木皿に取って、まずは捕まえてくれたトゥルーやガジュたちに。次はお客様の白竜姫様とエルさん。

 本命のローシェロブスターがあるので食べ過ぎないように……って、白竜姫様は全然平気だよな。


「ルピはこっちの方が好きだよな」


「ワフン」


 ということで、フォレビットはルピに。

 ミオンと俺にも行き渡ったところで、


「じゃ、いただきます」


「いただきます」


「いただきま〜す」


 ………

 ……

 …


 わいわいと楽しく、お腹いっぱい食べたところで、時間は午後3時前ぐらい。

 まだ少し時間には余裕があるし、さて、どうしよ?


「ジュ?」


「ん? あっち側は前にもらったアームラの樹を植えてあるよ」


 ガジュが東側の方が気になってる様子。

 時間もあるし、川の方まで見に行ってもいいかな。


「片付け終わったら行ってみる?」


「ワフ!」「ジュ〜」「キュ〜」


「ぁ、片付けは私が」


「私も手伝おう」


 ミオンとエルさんが片付けをしてくれるとのことなので、任せちゃっていいかな。

 白竜姫様がお腹いっぱいで、木陰でお昼寝してるので、一緒にってわけにもいかないだろうし。


「じゃ、ちょっといってきます」


「はぃ。いってらっしゃい」


 ってことで、島の南東側へと。

 道すがら、バイコビットやサローンリザードがいることを話しておく。今いるメンバーなら全然大丈夫だろうけど。


「ジュジュ?」


「そうだね。この辺はガジュのいる島にちょっと似てるかな」


 島の南東部は亜熱帯寄り。

 南の島の植物もここなら育つ感じ。


「キュ〜?」


「あんまり美味しい果物はないかなあ。あ、このパプの実はそのままだと渋いから食べちゃダメだよ」


 そんな話をしながら、アームラの樹を植えた場所まで移動。

 並んでる若木はどれもいい感じに育ってる。ミオンとスウィーがチェックしてくれてるから、当然ちゃ当然だけど。


「ジュ〜♪」「キュ〜♪」


 若木を囲んで嬉しそうなガジュとトゥルーたち。

 ゲーム内だと3ヶ月ぐらいで成木になるらしいので、実をつけるのは10月ぐらいかなあ。

 そのまま、ゴブリンがいた洞窟のあたりまでぶらぶらと。

 最初はここに住んでたこととか、俺がトゥルーたちに出会う前にどうしてたかを話したんだけど……、なぜか、すごいすごいと盛り上がってしまった。


「ワフ」


「うん。川も見に行こうか」


 かご罠も今はシャルたちが見回りしてくれてる。

 ガジュやトゥルーたちのおみやげになるぐらい、たくさん捕れてるといいんだけど……どうかな?


「こっち下りたところが川だよ」


「ジュジュ」


 ぞろぞろと河原へと下りてきたところで、ガジュたちがさっそく川魚を探し始めている。

 なんか、自分たちで捕まえてるっぽいし、こっちはかご罠をチェックしよう。


「キュ?」


「ここに魚が入ってるかもなんだよ」


「ワフン」


 かご罠をロープをたぐって引き上げる。

 重みがもう4、5匹は入ってる感じでほっとする。


「ほら、入ってるでしょ?」


「キュ〜!」「「「キュ〜!」」」


 また、すごいすごいと盛り上がるトゥルーたち。

 南の島でガジュたちの網を使った漁にも驚いてたけど、こういう原始的なのでも素直に驚いてくれるのが嬉しい。


「キュキュ?」


「あ、海用にはまたちょっと別のかごを作らないとかもね」


 海底に沈めるタイプのかご罠もあるよな。

 カニとか取れるはず。あとタコとかウツボとか?


『ショウ君。聞こえますか?』


「あ、うん。どうしたの?」


『アルテナちゃんが目を覚ましましたし、そろそろ港へ戻りませんか』


「りょ。急ぐよ」


 セルキーの里へ戻って、ガジュたちを南の島へ送って、そこからまた屋敷まで戻らないとだもんな。


「ガジュ〜、帰るよ〜」


「ジュ〜」「「「ジュジュ〜」」」


 おお、なんかいっぱいフラワートラウト捕まえてる……


 ………

 ……

 …


「のりたい〜」


 白竜姫様とエルさんは普通に歩いて戻る予定だったんだけど、小型魔導艇に乗りたいらしい。


「えーっと……」


「お願いできるだろうか。私は飛んで追いかけよう」


「ああ、そうでした」


 更に二人は乗員オーバーじゃないかなと思ったけど、エルさん飛べるんだった。

 白竜姫様はミオンに任せて、ガジュたち、トゥルーたちに乗り込んでもらう。


「おっけ?」


「はぃ」「は〜い」


「ワフ!」「ジュ!」「キュ!」


 その声に、エルさんが大きく頷いてから翼を広げる。

 一つ大きく羽ばたくと、一気に上空へと舞い上がった。


「おお……」


「すごいです!」


 羽ばたいてないのに浮いてるのは、やっぱり鳥とは違うんだろうなあ。

 見上げる俺たちに、槍で進行方向を指すエルさん。


「じゃ、出航〜」


「ワフ〜」

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