第514話 エピックなオープニング

「ショウ君のそれ、今日のライブで話した方がいいわよ?」


「え?」


 スウィーの木像(水晶の羽つき)がギリギリ完成したので、ベル部長とセスにお披露目っていうか自慢かな?


「スウィーちゃんの羽を模した、水晶の板のことですよね?」


「うむ。これは土木魔法か?」


「応用魔法学<地>かな。スキルレベル9で使えるようになったやつ」


 その答えにベル部長が頭を抱え、セスがうむうむと納得したように頷いてる。

 ベル部長の話だと、応用魔法学はどれも後半のレベルが上げづらいらしい。


「ベル部長って、応用魔法学<風>のスキルレベルが9じゃなかったでしたっけ?」


「ええ、でも、風魔法をメインに使ってやっとよ?」


 古代遺跡内での探索は<雷球>の魔法の使い勝手がかなりいいらしい。

 ヒットした相手がスタンすることもあるそうで、俺も覚えた方がいい気がしてきた。


「それよりもだ。その<粒化>と<晶化>を使えば、鉱石の形を自在に変えられるのではないのか?」


「さすがにそれは厳しいって。あのサイズでもMPの消費がすごいから」


 理屈的には掘削と同じなんだろう。

 硬いものを砕くのはMPコストが高いっていう。


「でも、割れたガラス瓶を集めるだけで、新しいガラス瓶を再生できるわよ?」


「あー、確かに」


「本土ではガラスが希少なままなんでしょうか?」


「魔王国アップデートでそれなりに増えたわ。でも、原料の珪砂を採掘できるのは、魔王国の南東部に限られるのよ」


 あと、ガラス関連のスキルは別にあるらしくて、それを覚えられるのが魔王国内だけなんだとか。

 まあ、スキル自体は覚えにいけても、原材料が手に入らないのは厳しいよな。


「兄上やジンベエ殿のおかげで、ポーション瓶は陶器のものが主流ではあるが、ガラス瓶の値段が下がるようであれば……」


「安い方がいいよな。ガラスだと中身見えるし」


 島でもガラス使いたいんだよな。

 アイスとかはガラスの皿に盛りたいなあって思うし。


「こんばんはー。何かありましたかー?」


 ヤタ先生がバーチャル部室に来たってことは、ライブの時間もそろそろのはず。

 やっとかないといけない準備もあるし、軽く説明だけして、IRO行かないとだ。


 ………

 ……

 …


<10秒前……、5、4、……>


『みなさん、ミオンの二人のんびりショウタイムへようこそ!

 実況のミオンです。よろしくお願いします!』


【ガーレソ】「はじまた!」

【ブルーシャ】「翡翠の女神様〜!o(^-^)o」

【アシリーフ】「エピックスキルって何!?」

【ラッセーラ】「可愛い! 可愛い!!」

 etcetc...


 今日のミオンは翡翠の女神服。

 アルバムの収録が無事終わったことを報告して、アルバムの発売予定日は公式の発表待ちなことを話している。

 でもまあ、ちらほらとエピックスキルについてのコメントが。

 視聴者さん、みんな俺がやらかしたんだと思ってるっぽい。まあ、正解なんだけどさ……


『それでは、島へと繋ぎますね。ショウ君、ルピちゃん、島のみんな〜』


「ようこそ、ミオン!」


「ワフ〜」「クルル〜♪」


 今日のスタートは定番の裏庭へ出たところ。

 ルピも定番の位置、腰を下ろした俺のあぐらの中。ラズも定番のフードの中。

 スウィー、シャル、パーンたちは、ちょっと別の場所で待機してもらっていて、白竜姫様はお昼寝中だけど、ご飯の時に来るかもかな?


『今日はどういう感じでしょうか?』


「えーっと、まず最初にエピックスキルについてなんですけど、まあ、俺です。召喚魔法のスキルを取得しました」


【ウッピー】「召喚魔法!?」

【サロンパ】「何呼び出せるの??」

【ニクス】「詳しい情報オネシャス!」

【デイトロン】「<情報提供料!:10,000円>」

 etcetc...


 質問がすごい勢いで流れていくんだけど、全部は追い切れないので後回し。

 俺の方でわかってる情報だけ、必要SPだったり、前提スキルレベルだったり、取る前に出たダイアログの中身だとか、その辺りを話す。

 悲鳴があがるコメント欄を見つつ……


「どういう魔法なのかは、見せた方が早いと思うんで、今から使ってみます」


『はい!』


 ルピと一緒に立ち上がって、裏庭の真ん中まで歩く。

 スペースは十分あるし問題ないはず。


「<召喚:リゲル>」


 そう唱えると、MPがまあまあ減った感覚があってから、目の前に馬具を装着したリゲルが現れた。


【ガフガフ】「うおおおお!」

【マジプ】「MP消費どれくらい?」

【ハジキリー】「なるほど。相棒を呼べるのか……」

【ベアメン】「リゲル君かっこいい!!」

 etcetc...


「ブルルン♪」


「うん、わかってるって」


 事前にシャルたちに馬具を装着してもらってるのは、これからリゲルに乗って教会まで行くため。なので、


「よっと!」


『ショウ君、かっこいいです!』


 コメント欄をちらっと見ると、まあ、うん。

 リゲルにお願いして、並足でゆっくりでお願いする。


「ワフ」「「バウ」」


 ルピが先頭に、すっと寄ってきたレダとロイが左右にフォーメーションを組むと、ちょっと偉くなった気分に。

 まあ、すぐに教会に着いちゃうんだけど。


「ニャ!」


「ありがと」


 リゲルから降りて、待ち構えてくれていたシャルに手綱を渡す。

 普段はシャルたちに任せてることや、パーンたちが作った野菜を食べてることを話すと、やっぱり驚かれた。


【シェケナ】「馬と猫の組み合わせは癒しよね〜♪」

【サントウヘイ】「俺らより贅沢な可能性が?w」

【ストライ】「すごく食べそうな気がする……」

 etcetc...


「じゃ、今日のメインは教会の中で」


『はい!』

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