土曜日

第513話 理解・分解・再構築

 土曜の昼。

 今日も島は雨模様でライブが心配なんだけど、できることをやるしかないよなってことで、スウィーの木像作りの続きを。

 ミオンも今日はオフ日ってことで習い事もなく、アトたちとクッションを作ったりしている。

 ちなみに、白竜姫様はお昼寝中で、エルさんも側についてくれてるので、


『召喚魔法までは手を出せそうにないわね……』


「そうっすよねー」


 昨日の夜、転移と転送が使えるようになったこと、そして、召喚魔法を取得したことをベル部長とセスに説明中。

 ちなみに、ワールドアナウンスが出た時は、南の島の採掘施設の研究室を漁っていたそうだけど、どうせ俺だろうってことで後回しにしたらしい……


「調教スキルのレベルがMAXの人は他にもいるんでしょうか?」


 俺が調教のスキルレベル上限になったのって、6月の末ごろだった気がするし、それから二ヶ月近く経ってるわけで、他にもいるんじゃないかなと。


『うむ。白銀の館の知り合いに、調教スキル持ち限定のギルドがあるが、そこのギルドマスターは上限まで到達してるおるの』


「おおー」


「上限突破はどうなんでしょう?」


 とミオン。


『いろいろ試したみたいだけどダメだったそうよ。ショウ君のやらか……すごい待ちだって言ってたわね』


 えー……

 そのギルドマスターさんは、ウィスタホークやミストファルコンといった猛禽類を相棒にしてるんだとか。

 で、えがけっていう専用グローブに補正がつかないか試してみたんだけど、どれも失敗というか補正はつかなかったらしい。


「うーん、上限突破がなかったり? 素材加工スキルとか、どうやって上限突破するんだよってスキルだしさ」


『なるほどのう』


 上位スキルがないものが上限突破しないのかな?

 まあ、そのあたりはプレイしてるうちに、ちゃんとしたプレイヤーが調べてくれるだろうし、気にしてもしょうがないか。


『それにしても、転送や転移がクールタイムで調整を取られてるのは意外ね』


『MP消費でバランスを取ろうとすると、魔晶石を山のように用意されかねんからの』


「それなんだけどさ、転移とかって、使える人が2人いれば行って戻れるんじゃない?」


 そのためだけに、魔法使いを2人用意するのかって言われるとそうなんだけど。


『レアスキルの空間魔法、結界魔法、重力魔法を3つともスキルレベル7にするプレイヤーは、この先もそうそう現れんと思うが?』


『それだけで27SPが必要なのよね。私みたいな純魔キャラビルドでも、転移までは遠いわ……』


「ですよ?」


「はい」


 ………

 ……

 …


「よし! これでどうかな? 羽以外の部分ね?」


「可愛いです!」


「〜〜〜♪」


 ミオンとスウィーのオッケーももらったし、あとは羽部分を作らないとなんだけど、これは鍛冶場に行かないと無理そう。


「よし。行くか」


 そう言えば、アズールさんがポリモゴーレムの残骸、調査が終わった大きな方も譲ってくれたので、あれも何かに使いたいところ……


「ワフ」


「っと、ルピたちも行くか?」


「ワフン」「「バウ」」


 鍛冶場での作業だけど、大きなものをカンカンするわけじゃないもんな。

 問題は外の天気だけど……


「お、雨あがってる」


「ぁ、じゃあ、私はスウィーちゃんたちと花壇のお手入れをしますね」


 ゲームだからなんだろうけど、雨が上がったあとは乾くのが早いのがいいよな。

 空の様子を見た感じ、戻ってくる頃には晴れてそうな気がするし、ライブが雨でなくて良かった。


「りょ。じゃ、いってきます」


「はぃ。いってらっしゃい」


 ルピが飛び出し、レダとロイが慌てて追いかけるのを、ゆっくりとついていく。

 ゲーム内の季節は、リアルと連動してるって話だし、そろそろ夏も終わりなんだよな。

 まあ、9月いっぱいは残暑が厳しそうだけど……


「ワフ〜」


「ニャ!」


「いつもありがとうな」


 雨が上がったからか、教会の周りを掃除してくれてるシャルたちケット・シーに挨拶を。

 そのまま馬小屋の横を通り抜けるんだけど、リゲルがいないなと思ったら裏手から駆けてきた。


「今、ミオンたちが裏庭にいるから、みんなで遊びに行っていいよ」


「ブルルン」「「「ニャ〜」」」


 リゲルとシャルたちを見送ってから遺跡へと入り、先に採掘場へと降りる。

 軽銀、鉄、銅の採掘ポイントが復活してたので、さくっと掘って鉱石を集め、古代魔導炉へ放り込む。

 まだまだインゴットに余りはあるけど、いざって時に足らないってなるのは避けたいし。


「ルピたちは好きにしてていいよ。あ、火床には近づかないようにね」


「ワフン」


 鍛冶場の隅っこに固まって丸くなるルピたちをおいて、


「さて、羽本体から作ってみるか」


 まずは依頼でゲットした水晶原石を、透明で綺麗な部分だけに研磨。で、試そうと思っていたことを……


「<自由変形>って、やっぱダメか……」


 MPを結構持っていかれた上に粉々に割れてしまった。

 まあ、これは予想通りだったからいいとして、もう一つの方法を試そう。


「<粒化りゅうか>」


 いったん、サラサラのパウダー状に変化させてから、


「<晶化しょうか>」


 厚さ5mm弱の板にまとめ直すことに成功!

 思った以上に上手くできたけど、これもMPがかなり持っていかれちゃったな。


【錬金術スキルのレベルが上がりました!】


 は? なんで、錬金術のスキルレベルが上がったんだろ?

 <粒化りゅうか>も<晶化しょうか>も応用魔法学<地>の魔法なんだけど……


「まあ、いいや」


 出来上がった水晶の板、軽く指で弾いてみたけど問題なし。

 両手でぐっと力をかけると……、うん、やっぱり割れちゃうよな。

 でもまあ、これで羽本体は作れそうだし、あとはちゃんと枠を作ろう。


 ………

 ……

 …


『ショウ君?』


「え? あ、どうしたの?」


『もう1時間以上経ってますが、もう少し続けますか?』


「あ……」


 水晶で羽本体を作れたあと、緑金鋼で外枠を作ってたんだけど、これが結構難しいというか、凝り始めるとキリがないな。


『どうします?』


「いったん戻るよ」


 いくつか作ったやつを、ミオンとスウィーに見てもらおう。

 フィードバックをもらって修正する程度だし、屋敷に戻ってからでもできそうだ。


「ルピ、レダ、ロイ。帰るよ」


「ワフン」「「バウ」」

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