金曜日

第511話 やらかしエピック級

「お疲れ様でした」


 ミシャPにGMチョコ、そして、音楽関連会社社長の佐藤さんから労われ、ほっと一安心といった表情のミオン。

 特にトラブルとかもなく終わって、あとは向こうでいい感じにしてくれて、だいたい月末ぐらいには出来上がるとのこと。

 リリースがいつになるかの最終決定は、それまで待って欲しいと言われた。


「ところで、一つ相談があるんですが……」


 とミシャPが俺に。

 何か告知を打って欲しいとかそういうことかなと思ったんだけど、


「お二人が島にいない間の様子をPVに使いたいんですけど、どうでしょう?」


「あー……」


 俺たちがいない間、ルピやスウィーたちが何をしているのか。

 じいちゃん家に行ってた間とかだと、レダとロイの家族に会いに行ってたりしてたみたいだけど。

 ミオンの方を見ると、ちょっと悩んでる感じ。それなら、


「内緒にしてることがバレても困るんで、事前にチェックさせてもらえるなら」


「はい! それはもう!」


 そのPVがいつ公開されるかは不明だけど、南の島に行ってたこととかをオープンにされるのは困る。ベル部長や白銀の館の人たちに悪いし。

 それはそれとして、


「うちの様子ばっかりPVにするのっていいんです?」


「あ、もちろんPVの本筋は本土の方になります。ただ、ショウさんの島の様子を入れないと、それはそれで『なんで入ってないんだ』って声も多くてですね……」


 苦笑いのミシャPとGMチョコ。

 俺としてはラムネさんあたりにも頑張って欲しいんだけど、うちに幻獣や妖精がたくさんいるのは確かだしなあ……

 そういえば、この間の本土と繋がることになった島とかはどうなんだろ。

 まあ、近々、南の島の話が公表されるはずだし、そっちに期待かな。


 ………

 ……

 …


 収録が終わって、夕飯まで1時間ほどあるので、ちょっとIROの方へ。

 白竜姫様とエルさん、どうしてるのか気になったので。

 昨日の歓迎会、たくさん食べたあとは、のんびり話したりしてたけど、白竜姫様がすごく楽しそうで良かった。


「えっと……」


 食堂だった場所が白竜姫様の部屋に。その右隣をエルさんの部屋にしてあるんだけど、勝手に入るわけにもいかない。

 なので、普段は応接室にいてもらうようにお願いしてあるわけだけど……


「あ、こんちは」


「やあ、二人とも。姫は今、眠っていてな」


 本を読んでいたエルさんが、ちょっと声を抑えてそう答えてくれる。


「ご飯を用意しておきましょう」


「そうだね。エルさんも手伝ってもらえますか?」


「あ、ああ、手伝いになればいいんだが……」


 キャロッタ(ニンジン)やオーダプラ(じゃがいも)を洗ってもらうだけで、十分、手伝いになると思う。なにせ、たくさん作っておかないといけないので……


***


 今日の夕飯は、ニンジンとナスと豚肉の冷しゃぶ。

 ポン酢でさっぱりとした味付けなので、ニンジンが嫌いな美姫にもなかなか好評。


「アルバムの発売が楽しみよの。いつ頃になるかは聞いておるのか?」


「まだ未定だけど、来月末ぐらいじゃないかな。収録で歌は聴いたけど、どういう感じに出来上がるか、俺も楽しみだよ」


 なんか、壮大なクラシックバージョンもあるっていう話は聞いてて、それがIROのメインテーマになるんだとか。


「ふむふむ。次回のPVにも採用されるであろうし、そろそろ次のワールドクエストが始まって欲しいところよの」


「次のワールドクエストか……」


 魔王国に入った悪魔がそれっぽいし、あと気になるのは、


「真白姉とシーズンさんはどうなったか聞いてる?」


「シーズン殿がまめに連絡をくれてはおるが、特に何かあったという話は来ておらんのう。姉上のバイトの方が忙しいのかもしれん」


 渓谷の奥にあるエルフの里を拠点にして活動中らしいけど、まだあんまり奥までは進めてないとのこと。

 変なことになってないようで何よりだけど、翠竜エメラルディアさんと遭遇したりしてないかが不安……


***


「あめあめ〜♪」


「〜〜〜♪」


 ミオンのピアノに合わせて、白竜姫様とスウィーが歌っている。

 その言葉の通り、しとしと雨が降っていて、外で何かしようって感じでもなく。

 家でやることも結構あるので、それを聞きながらスウィーの木像を作成中。


「ワフ……」


 木材を削る単調な音が、ちょうどルピたちの眠気を誘うのか、レダとロイも一緒にお昼寝中。

 ルピの時はそんなに細かい部分がなかったから良かったけど、スウィーは細かい部分しかない感じだよな。


【空間魔法スキルのレベルが上がりました!】


 お、やっと空間魔法のスキルレベル上がった。

 アズールさんに、もっと普段から魔法を使うといいって聞いて、作業中にいろいろ試してみた結果が出たかな。

 削り出す木材には<固定><移動><回転>を使い、魔導多態鋼を<自由変形>で道具にして使うっていう……


【召喚魔法スキルが獲得可能になりました】


「っ!?」


 思わず大声を出しそうになって、慌てて口をつぐむ。ルピたちを起こしちゃいそうだし、ミオンたちに悪いし。


 で、召喚魔法って何かを呼び出す魔法だよな?

 メニューからスキル一覧を開いて探してみると……あった、これか。

 はあ!? レアリティーが『エピック』で、必要SPが16ってなってるんだけど!?


【召喚魔法】

『相棒を術者の元へと召喚する最上位元素魔法。

 前提条件:空間魔法Lv7、重力魔法Lv7、結界魔法Lv7、調教LvMAX』


 ルピやレダ、ロイ、ラズ、それにリゲルも召喚できるってことだよな、多分。

 で、この召喚魔法が取れるようになったのって、多分……


「ワフ?」


「あ、起こしちゃってごめんな。たいしたことじゃ……なくもないんだけど」


 メニューを開いて、魔法の一覧を確認すると……来た! 空間魔法の<転送>と<転移>が使えるようになってる!

 要するに、相棒を自分の元へと転移させるのが召喚魔法ってことだよな。


 まずは転移を、いや転送を試すのがいいのか。で、転移を試して、それから召喚魔法を取るべきかどうかを考えよう。

 ミオンとも相談だけど、今後のことも考えて取ったほうがいいはず!

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