木曜日

第510話 白竜姫様歓迎会

 今日もアルバム収録は順調に終了。で、終わった後にIROにインし、港から屋敷まで戻ってきた。

 ミオンがさっそくアトにキュミノンの栽培をお願いし、カーメリー、シャンツィーと合わせて、いよいよカレーに近づいてきた……


「ばわっす」


「良き夜よの!」


『ショウ君、セスちゃん』


 夜。バーチャル部室でミオンが待ってくれてるのはいつも通りだけど、ベル部長がいないな。

 それに気づいたのか、


『部長は親戚がいらっしゃってるとのことで、1時間ほど遅れるそうです。セスちゃんには先に行って欲しいと』


「うむ! では、行くとしようかの!」


 そう言ってIROへ行くセスを見送る。

 夕飯の時に話は聞いていて、南の島の方は順調。

 キジムナーの集落の前の広場には、屋台風の建物が並び、その周りは石壁でしっかり囲まれてるそうだ。ベル部長の魔法で出した石壁で。


「じゃ、俺たちも行こうか」


「はぃ」


***


「ショウ君。転送箱に着信が」


「お、白竜姫様の来る日が決まったかな?」


 アージェンタさん、直接ギルドカードで連絡してきてもいいのに律儀だよな。

 箱を開けて中身を確認……手紙だけだな。えーっと……


「今日、俺たちの都合が良ければ白竜姫様とエルさんが来るって。いいよね?」


「はぃ!」


 返事はギルド通話でいいって話なので、さっそく。


「アージェンタさん。今って大丈夫ですか?」


『ショウ様。連絡ありがとうございます』


「いえいえ。今日、来てもらって大丈夫です。こっちの準備は終わってます」


 1時間後ぐらいになるそうなので、今のうちにミオンと歓迎の料理でも作るかな。

 食材はこの間もらってきたラティオラがあるし、白身魚のクミン焼きにしよう。


「お料理しますか?」


「まだちょっと時間あるし、シャルとパーンたちを呼んでくるよ」


「私はクロちゃんたちを呼んできますね」


「うん、お願い」


 トゥルーたちに魚をたくさんもらったし、歓迎会は大人数の方が楽しいし。

 スウィーたちには、ルモネラのタルトあたりがいいかな。ラズ以外のカーバンクルも呼んで、リゲルも呼ばないと。


 屋敷を出て、森の方へ向かうミオンたちを見送って教会の方へと。

 教会の玄関を掃除してくれているケット・シーたちに挨拶しつつ、馬小屋を見に行く。


「ブルル〜」


「ワフ〜」「クルル〜」


 気づいたリゲルが近寄ってきて、ルピとラズに挨拶を。

 そのまま俺のところまでやってきて頬を寄せると、ラズが肩を経由してリゲルへと飛び移る。


「ニャ〜」「リュリュ」


「シャル、パーン、いつもありがとうな。今日は白竜姫様の歓迎会をするから、みんなを屋敷に呼んでくれる? あ、カーバンクルたちもね」


「ニャ!?」「リュ!」「クルル〜♪」


 今度はリゲルからパーンの頭に飛び移るラズ。

 パーンはそのままひょいひょいっと、崖を階段を使わずに登っていくんだけど、二人ともバランス感覚がすごいな……


「じゃ、先に行こうか」


「ワフ」「ブルル」


 ………

 ……

 …


 ルピと二人で地下の大型転送室に来ている。今日は竜籠ではなく、転移魔法陣で来るそうなので出迎えに。

 座ってルピをモフりつつ待つことしばし……


「ワフ」


「お、来た」


 転移魔法陣が淡く光り始め、それが消えるとアージェンタさん、エルさん、白竜姫様の3人が。


「こんにちは〜!」


「こんにちは」


「ワフン」


 白竜姫様が挨拶をして、ルピの頭を撫でてくれる。

 その様子を後ろから微笑ましく見ているアージェンタさんとエルさん。


「ショウ様。今日からしばらくの間、お姫様ひいさまをお願いします」


「こちらこそです。俺とミオンは家を空けてる時間が多いので、その間は自由にしてもらえれば」


「不在の間の警備やギルド関連の雑用も含めて任せてくれ」


「ありがとうございます。正直、助かります」


 これから先、ギルドでいろいろ依頼だったり、売り出したりのサポートも含めてやってくれるそうで、めちゃめちゃ助かりそうな予感。


 屋敷へと移動する途中で、昨日、ベル部長から聞いた無人島の話を報告しておく。

 うちとは直接は関係ないけど、つながる転移魔法陣が死霊都市に置かれるそうなので念のため。


「なるほど、気をつけることにしましょう」


「アージェンタ様。悪魔の件について……」


「そうですね。魔王国へと向かった悪魔の一団ですが、それぞれが個別に魔王国領へ入ったのではと報告がありました」


 魔王国北側での小競り合いはいつものことらしいけど、それに紛れるように領内へ入ったんじゃないかという話。


「よくそこまで調べてますね」


「魔王国の北側には、竜族の庇護下の獣人と交流がありますので」


 魔王国の王都よりも、獣人族の集落の方が近かったりするせいで、感情的にも竜族寄りだったりするんだとか。

 それを表立ってしまうと、いろいろ波風が立つので、あくまで庶民レベルで交流があるということらしい。


「ミオン。白竜姫様たち、来たよ」


「はぃ、いらっしゃい。ご飯できてますよ」


「わーい!」


 まずはご飯にってことだけど、今日は人が多いので裏庭で。

 天気がいい日は外でおやつタイムができるように、新しくテーブルを作った。

 お子様用の椅子も作ったけど、ミオンが白竜姫様を膝に乗せるのが好きっぽいから、今日はいらないかな。


「これはまた……」


 たくさんのオープンサンド、エクリューミルクのシチューにローストボア、ラティオラのクミン焼きにオランジャックのエスカベッシュ。

 スウィーたちのために、レッドマルスのタルト、カムラスのコンポート、ルモネラジャムを添えたアイスクリーム……

 エルさんも驚いてるけど、


「今日は歓迎会ってことで」


「です」


 白竜姫様だけでなく、スウィーもシャルもパーンたちも待ちきれない感じ。

 というわけで、


「冷める前に食べましょう」


「いただきまーす!」「〜〜〜♪」

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