第508話 もう一つの欲しかった食材

 ダブガビアルを避けて、川岸から離れた場所から上流を目指すことに。

 ルピを先頭に、陸側はレダとロイが、川側はトゥルーとセルキーが、シャルには後ろに気を付けてもらうことにした。

 当然というか、スウィーとラズは俺のフードに入ってもらってる。


「ごめん。しばらく無口になるかも」


『はい』


【ミイ】「了解!(ーー)ゞ」

【シェケナ】「気を付けて〜♪」

【サーコ】「ええよええよー」

 etcetc...


 コメントをチラッと見てから、感知共有をかけて周りをチェック……問題なし。

 こっち側にあんまり動物がいないのは、さっきのワニがいるせいかな?


「ルピ」


「ワフ」


 上流に進むにつれ、左手に見える川は狭くなり、流れも早くなってきた。

 さすがにこの辺りまでワニが上がってきてはないだろうけど、トゥルーたちがしっかりと警戒してくれている。

 しばらく進んだところで……


「ワフン」


「あ……」


『行き止まりですか?』


「そうだね。さすがにこの崖は登れそうにないかな」


 ほぼ真上に見上げるほどの急斜面。

 パーンたちなら登れそうだけど、その先が危ないかもだし、ここまでかな。


「うーん。特に目新しいものも無かったな……」


『そうですね』


 コメント欄でワニがいた件と流れていっているけど、それは別というか、欲しいのは新しい食材なわけで……


「〜〜〜?」


「ん?」


 スウィーが何か見つけたっぽいのか、レダとロイがいる方へと。

 ここでぼーっと見上げててもしょうがないので、トゥルーたちも呼んで、その後をついていく。


『どうしたんでしょう?』


「何か見つけたのかな……」


 スウィーがふらふら〜っと、何かの匂いを嗅ぐような仕草をしていて、それに釣られるように、レダとロイも鼻を上げている。


「珍しい花とかかな」


「キュ?」


「「キュ〜」」


 トゥルーたちもよくわからない感じ。

 ただ、スウィーはそれを感じとってるのか、あっちへ進み、こっちへ進みと……


「ワフン」


「「バウ」」


 レダとロイが先んじて進み、それを追いかけるように、みんなでふらふらと。


【サテナ】「やばい系の花には気を付けて〜」

【ニュエンド】「ラフレシアとか?」

【ルタイバ】「擬態してるトレントに気を付けて!」

【ナーパーム】「食虫植物モンスターいるよね……」

 etcetc...


『ショウ君。トレントっていうモンスターに気をつけてください』


「りょ」


 そういえばトレントの存在を忘れてたな。

 今までの森にいなくて良かった……


「ん?」


『どうしました?』


「この香りって……」


 レダとロイも気づいたらしく、スウィーの進む方向へと真っ直ぐ駆け出す。

 慌てて追いかけたその先は、ぽっかりと開けた場所で、一面に小さく白い花が溢れていた。


【アシリーフ】「コプティじゃないよね?」

【クランド】「香りって言ってたからジャスミンとか?」

【ジャワ】「うおおおお! クミンキター!!」

【ロコール】「かすみ草?」

 etcetc...


 しゃがみ込んで鑑定を、


【キュミノン】

『温暖な地域に生息する植物。種子は料理や調薬に使われる』


 さらに地面に落ちている種を拾って鑑定。


【キュミノンシード】

『キュミノンの種子。そのまま、もしくは粉にして利用される。

 料理系全般:調味料として利用される。調薬:各種薬の効果を向上させる』


「やっぱりクミンだ!」


 なんかこう、エスニックな香りがしてたのは、この地面に落ちた種からなのかな。

 拾ったものを近くで嗅いでみると……


「やばい。めっちゃお腹空いてきた」


【リソッス】「わかる〜」

【ノンノンノ】「カレーいけるか? あと何必要?」

【ケネス】「調薬の効果がやべ〜んですけど〜」

【シェケナ】「粉にして唐揚げが美味しいよ〜♪」

 etcetc...


『えっと、カレーの香辛料なんですね』


「うん。まあ、それ以外にもいろいろ使い道があるし、これは持って帰ってクロたちに栽培をお願いするかな」


『そうですね!』


 ミオン、うまく気を使ってくれた感じかな。

 南の島でターメリックとコリアンダーが手に入るのは分かってるけど、それを言っちゃうと「なんで知ってるの?」って話になるし、当面はクミンだけで料理しよう。


「この辺はモンスターもいないっぽいし、休憩にしようか」


「ワフン」「〜〜〜♪」


 崖を背にして、キュミノンを踏まないように腰を下ろす。

 レダとロイが軽く辺りを見回ってくれて、大丈夫そうということで戻ってきた。


「「バウ」」


「うんうん。ありがとうな」


 ルピ、レダ、ロイにボア肉ジャーキーを。

 トゥルーたちとシャルには煮干し、スウィーとラズにはシンプルなクッキーにルモネラジャムを添えて。


「じゃ、あとは時間まで質問タイムかな? 大丈夫だと思うけど、モンスターが出たら中断で」


『はい!』


 いつものように(?)、コメント欄が滝のように流れて行くので、俺はルピを撫でるお仕事に専念。


『最初の質問です。島にしかない植物を本土に売り出す予定はありませんか?』


「あー、正直、悩んでるところですね。こっちでしか手に入らないものを、本土に渡しちゃって大丈夫なのかとか?」


【アサナサン】「なるほど〜」

【オトトン】「ほんまにあかんかったら、運営が止めると思うで?w」

【ナタイ】「逆に欲しいものとかないの?」

【ラカン】「バランス気にする方かー」

 etcetc...


 確かに、本当にダメなものを輸出したら、運営が止めるか。

 例えば、このキュミノンとかを本土では育たないようにとかするだろうし。


「じゃ、こっちの畑で増やせるようなら種を輸出しようかな」


『いいと思います』


「ああ、そうだ。これから先のことも考えて、そろそろお金を確保しようかなって」


 その言葉にコメント欄がまたすごいことになる。

 ただ、ちょっと否定的な意見もあって、値段が天井知らずになる可能性を指摘された。


「ただの種だし、増やせばいくらでも手に入るものなんだけど……」


『以前と同じように抽選してもらうのはどうでしょうか?』


「そうだね。何種類か種や苗を売りに出して、抽選して買えるようにかな? 値段どれくらいがいいのかは……アージェンタさんあたりと相談します」


 まあ、種でも苗でも、当選者を多くすれば、そんなに値上がりもしないだろう。

 まずは少しお金を稼いでみて、ミオンに会計を任せてみる感じで行こう。

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