第496話 島野菜たっぷり冷製クリームシチュー

「ようこそ、ミオン」


「ワフ〜」「〜〜〜♪」


 お座りしているルピと、久しぶりに左肩にいるスウィーが挨拶を。それでまた加速するコメント欄。


【ルコール】「<ルピちゃん、かわよ〜♪:500円>」

【マッチルー】「今日は裏庭からかな?」

【シェケナ】「<スウィー様〜〜〜!o(^▽^)o:1,000円>」

【モルト】「<飯テロ希望!:1,000円>」

 etcetc...


『ショウ君。今日の予定をお願いします』


「えーっと、今日はまあ近況報告がメインなんだけど、ご飯を食べながらのんびり話そうかなって」


 立ち上がって、長机の方へと移動。

 すでに出来上がっているシチューが入った寸胴鍋の蓋を開けると、


『美味しそうなシチューですね!』


「うん。これを今日は冷たくして食べます」


『えっ!?』


 驚くのも無理はないよな。内緒にしてたし。

 作って冷ましておいたのは、味を染み込ませるためでもあるけど、冷めてどれくらい濃くなるかを確認したかったから。


【チョコル】「夏だもんねえ」

【マスターシェフ】「<冷製シチューいいね♪:1,000円>」

【リーパ】「ワインと合いそう……」

【ノンノンノ】「レシピ期待!」

 etcetc...


 小皿に少し取って味見を……


「やっぱりちょっと濃いかな。もう少しミルクを足して伸ばすよ」


 作る量が多いから分量の調節が難しい。あったかい時はサラサラだったけど、冷やすとちょっと硬いというか重いというか。


「んー、これくらいかな。じゃ、みんな並んでー」


 冷やしシチュー組にはお皿を持って並んでもらうんだけど、まずはルピとレダ、ロイを先に。


「いつも狩りの手伝いありがとうな」


『ベーコンはルピちゃんたちが仕留めたランジボアのお肉ですね』


「そうそう。もう俺がいなくても余裕で倒せちゃう」


 3人分をよそって、しばらく待ってもらうことに。次はパーンたち。


「パーンたちは野菜いつもありがとう」


『お野菜はパーン君たちが育てたものですね』


「うん。教会裏だけじゃなくて、この屋敷の周りにも畑が増えて、いろんな野菜を育ててくれてる」


 キャロッタ(ニンジン)、ケーパ(タマネギ)、オーダプラ(ジャガイモ)はパーンたちが育ててくれたもの。


「シャルたちもヤコッコやエクリューの世話をいつもありがとう」


『卵やミルクはシャル君たちに任せてます』


 そして、ケット・シーたちの後ろに並ぶアトたちギリー・ドゥーが見えたのか、コメント欄がざわついている。


【ミンセル】「え? 新顔さん?」

【ユウセン】「ファ? 新しい妖精?」

【ラッセーラ】「可愛い!」

【ヒラリ】「え? え? 誰?」

 etcetc...


「えーっと、彼女たちはギリー・ドゥー。水路の向こうの森に住む妖精です」


『今日来ているのはアトちゃんで、クロちゃんとラケちゃんというお姉さんたちが、森を守ってくれています』


【ガーレソ】「<新メンバー加入おめ!:1,000円>」

【デイトロン】「<祝! 島民増加!:10,000円>」

【レジェリー】「ギリー・ドゥーってあれか。ギリー・スーツの!」

【ディソル】「どうやって知り合ったか詳しく!」

 etcetc...


「詳しい話は食べながらで。彼女たちはハーブに詳しくて、このシチューにも彼女たちがくれたビリーフ、ローリエが入ってます」


 コメント欄がすごいことになってるけど、もう読めるスピードじゃないので、シチューを配る方に専念。

 あとはスウィーたちとラズたちに、レッドマルス(リンゴ)のキャラメリゼを。


「揃ったかな? じゃ、いただきます!」


「ワフ!」


 ………

 ……

 …


「とまあ、そんな感じでギリー・ドゥーたちと知り合ったわけで」


『びっくりしましたけど、大事なくて良かったです』


「いや、ホントごめん」


 光の精霊での閃光をまともに食らった子には悪いことをしたなと。

 もうちょっと使い方を考えないとだよなあ。


【ナーパーム】「ムスかったのね……」

【シュンディ】「閃光は使い所むずいよねえ」

【センニン】「遮光結界との組み合わせを試すのじゃ!」

【イマニティ】「メガメガ〜!」

 etcetc...


 コメントを見て「おっ?」と思ったのが、


「あー、遮光結界か!」


『光を遮る結界ということですよね。ショウ君は使えますよね?』


「うん。結界魔法スキルのレベル3だったかな。えーっと……<遮光結界>」


 手に持ったコップを遮光結界で覆うと、その場所だけぽっかりと真っ暗になった。

 なんかこう、ゲームがバグったみたいで気持ち悪い。


「これを使って閃光を遮れば、相手にだけ目潰しを喰らわすことができると」


『なるほどです』


【レーメンスキー】「見てて不安なる……」

【スギコー】「光を完全に遮断してるからねえ」

【ミナミルゲ】「ちなみに、それ編み出したのベルたそやで」

【カルセルン】「闇魔法っぽいなw」

 etcetc...


 へー、ベル部長が思いついたのか。

 ポリーが光の精霊を使えるから、パーティプレイの時とかに使ったのかな?


「リュ〜?」


「うん。おかわりあるよ」


 パーンがちょっと遠慮がちに聞いてきたんだけど、もっと気にせず聞いてきてほしいところ。

 希望者が列を作ったので、みんなに行き渡るように調整しつつ、おかわりをよそっていく。ミオンの分、別に取っておいて良かった……


「シャルはいいの?」


「ニャ。ニャフ?」


「あー、そうだね。じゃ、お願い」


 おかわりは大丈夫。それより、そろそろリゲルを連れてきましょうか? という、シャルらしい気配り。

 なんだかんだ時間経っちゃってるし、そろそろかなということでお願いすると、視聴者さんたちから、


【セイキ】「なんか来る?」

【アクモン】「総員、対やらかし準備!」

【スイフト】「いやいや、そんなそんな、ははは(棒)」

【キラル】「ショウ君なら、さらに妖精さん追加もありよりのあり」

 etcetc...


 みんな、やらかし前提なのが辛いけど、実際そうだから反論のしようもなく。


『ショウ君?』


「あ、うん。シャルはちょっと、まあ、えっと……、ギリー・ドゥーたちが住んでる森の奥まで行くと湖があるんだけど、その向こう側はまだ少ししか行けてなくて」


『島の北側はこれから探索していかないとですね』


「うん。まあ、急ぐ必要はないけど、やっぱり島全体を把握しておきたいし」


 どういう場所かは次か、その次ぐらいのライブでって話を。

 トゥルーに会いたいって視聴者さんも多いから、次は港から小型魔導艇で川を上るとかでもいいかもしれない。


「ニャ〜」


「お、来た」


 落ち着いた足取りでやってきたリゲルだけど、ひょいっと生垣を飛び越えて、俺のところまでやってきた。


「ブルル♪」


「ワフン」「クルル〜♪」


 ルピ、ラズと挨拶を交わしてから、俺の肩に額を預けてくるリゲル。

 キャロッタを渡すと、美味しそうにそれを食べてくれる。


『ショウ君。紹介をお願いします』


「うん。ギリー・ドゥーの森のさらに先で出会ってテイムしたリゲル。フロスティグラニっていう馬の幻獣」

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