第489話 仲良くなるにはこれが一番?
来た道を逆に戻り、さらに東の方へと進む。
その途中で、
「ゥゥ」
クロが合流してくれた。
一番上のお姉さんということで、クロたちのチーム(?)は橋の向こうを警戒する役目を負っているとのこと。
「向こう側からモンスターが来ることがあるんですか?」
「ゥゥ」
「たまにランジボアとか来るらしいよ。俺が倒したアーマーベアもそうなんだって」
ランジボアなら麻痺の吹き矢で倒せるらしいけど、アーマーベアは厳しいらしい。なんで、俺が倒してくれたのはありがたかったんだとか。
まあ、光の精霊の閃光は予想外だったろうけど……
「ワフ」
「さっき見た橋だ。けど、ちょっと渡るのは危なそうだな、これ」
「壊れそうですね」
橋桁になってる板が歯抜けになってるし、残ってるのも腐ってるしで、これはちょっと厳しいかな。
ただ、流れは緩やかだし、少し上流に行けば渡れそうな感じ。
「あっちで渡ろう」
「ワフ」
向こう側はギリー・ドゥーたちの目が届かない場所なので、気配感知に気をつけつつ進む。
良い感じに飛び石がある場所を見つけたので、
「ちょっとルピたちと見て来るから、ミオンたちはここで待ってて」
「ぃ、一緒に行きます!」
「え? うーん、強めのモンスターが出た時が怖いんだよな。川を渡って逃げるのって大変なんだけど……」
多分だけど、この向こう側は違うエリアで、敵も強くなってるはず。
ミオンはローブを着てるから、水に浸かった状態での移動は厳しいと思う。
「あ、そうだ。ちょっと待ってて」
「は、はぃ」
川べりまで行って深さを確認。これなら問題ないかな。
「<石壁>」
川の水を堰き止めないように気をつけつつ、石壁で飛び石を追加。表面が平らなので、足を滑らせることもないはずだけど……
「うん、大丈夫そう。ルピ、レダ、ロイ。先に行って、ちょっと様子見てきて」
「ワフ」「「バウ」」
そうお願いすると……飛び石を使わずにじゃぶじゃぶ泳いで渡っていくルピたち。
うん、まあ、これはミオンのためだし。
作った飛び石に移動し、次の飛び石を作っていって……向こう岸へと到着。
「こんなもんかな。気をつけて渡って」
「はぃ」
まずシャルが先に渡り、次にミオンとスウィー、最後にクロ。
ミオンが一つずつ慎重に渡るのを見てると、なんか失敗だった気がしてきた……
「ミオン、手を」
「はぃ。お待たせしました」
最後はミオンの手を取って引き寄せる。
えっと、ぎゅっと抱きつかれるとドキドキするので、ほどほどで……
「ニャニャ?」
「あっ、そうだね……」
なんでそっちを思いつかなかったんだ、俺。
「どうしました?」
「いや、俺がミオンを抱きかかえて運べばよかったんじゃって」
「ぁ」
じっと期待のこもった目で見つめられるのもドキドキするので……
「帰りはそうするでいい?」
「はぃ!」
そんなやりとりをしてる間にクロが到着。
ラケとギリー・ドゥーたちはこの辺りに残って見張りをお願いしてある。作った飛び石でモンスターが渡ってこないとも限らないので。
「じゃ、馬が見えたあたりまで行こうか」
「ワフ」
ルピを先頭に、レダとロイにも警戒してもらいつつ進む。
さっき見た馬は、モンスターって感じではなかったから、もう少し近くで見てみたいんだよな。
「ゥゥ?」「クル〜」
「いいけど、ルピたちより離れないようにね」
クロとラズが木の上から偵察したいというので許可を出す。ただ、蛇とかもいそうだし、安全第一で無茶させないように。
しばらく歩くと、再び湖へと出たので、馬が見えたあたりまで移動……、さすがにもういないか。
「このあたり、よく使われる水飲み場になってるっぽいね」
「そうなんですか?」
「うん。下草があんまりないのは、踏みならされてるからだろうし」
馬以外の足跡もちらほらと。どれも森の奥の方へと消えている。
ここから北東へと向かえば、綿花を見つけた平原まで出られそうだけど、さすがに今日はもう時間が足りなさそうなんだよな。
距離的には大したことないはずだけど、やっぱりモンスターが出る可能性とか考えると慎重に行動しないとだし……
「ワフ」
「ゥゥ」「クルル」
ルピが小さく吠え、次の瞬間、クロとラズが戻ってきた。
感知共有を発動すると、そこそこ大きな何かが近づいてきている。
「シャル、クロ。ミオンとスウィーを頼んだよ」
その言葉にミオンの周りを固めるシャルとクロ。
いざとなったら、スウィーの判断で撤退指示を出すようお願いして、ルピのところへと向かう。
「ルピ」
そう呼びかけても振り向かず、両隣に控えるレダ、ロイと共にじっと森の奥を見つめるルピ。
ラズがフードから出て、俺の左肩へと出てきた。警戒してくれてるようで、額の宝石がうっすらと瞬いている。
「来た」
ゆっくりと近づいてくるそれが木の陰から姿を現し、
「ブルル」
と軽く嘶いて立ち止まった。ルピとレダとロイが立ちはだかってるもんな。
さっき見た馬とはまた別の馬なんだけど、白に近い灰色っぽい感じ。芦毛っていうんだっけ?
最初にルピを見つけた時と同じ白のネームプレートだけど、ちゃんと【フロスティグラニ】と出ている。動物学スキルが5あるからかな?
「ルピ。いいよ」
「ワフン」
そう伝えると、ルピが少し横にずれておすわり。でも、しっかりと警戒はしてる様子。
もう少し近づかないと鑑定できないなと思ったんだけど、向こうがゆっくりと近づいてきてくれた。
「ブルルン」
「ワフン」
おすわりしてるルピに挨拶(?)してから、俺の方へと頭を寄せる。
【フロスティグラニ:興味:空腹】
『幻獣グラニ。特に毛色が白に近い牡馬をフロスティグラニと呼ぶ。
古代より紅緋の女神が騎乗する馬で、普段の性格は非常におとなしいが、荒ぶると手に負えなくなる』
……とりあえず、お腹が空いてるみたいなので、非常食として持ってる干しパプを出してみると、ためらうことなく口へと入れて、美味しそうにむしゃむしゃと。
「ブルルル」
「あ、うん」
おかわりを要求されたので、1つ2つと……馬ってそんなに食べるんだっけ?
持ってる分がもう無くなりそうなんだけど、ミオンが何か持ってるかな? 戻って聞いてみるか。
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