第488話 神樹と湖

「じゃ、出発!」


「ニャ!」「ワフ!」「クルル〜」


 今日はまず、ギリー・ドゥーの森の北東にある湖まで行ってみる予定。

 クロたちが大事にしている神樹があると聞いたので、そこにみんなで挨拶に行くことに。


「〜〜〜♪」


「よろしくお願いしますね」


「ゥゥ」


 湖までの案内はラケたちがやってくれるので、そんなに危険なことはないはず。なんだけど、


「ルピ、レダ、ロイ。警戒よろしく」


「ワフン」「「バウ」」


 いつも通り、ルピたちが先行して索敵。シャルがミオンとスウィーの護衛。

 ラケたちは木の上を飛び移りながら、俺たちの周りをついてきてくれている。

 ギリー・ドゥーたちの話によると、森にいて襲いかかってくるモンスターはバイコビットが多くて、次にランジボア。で、たまにアーマーベア。

 あと、ごく稀にだけど、グラファエルクっていうでかいシカ(ヘラジカ?)が現れるらしい……


「ワフ!」


「おっと」


 ランジボアが真っ直ぐに突っ込んできたのを、円盾でしっかり受け止める。

 最初の頃よりもSTRもVITも上がってるからか、押し返されることもなくなった。


「ガウ!」


 右側から突っ込んできたロイのクラッシュクローがヒットし、吹っ飛ばされたランジボアをレダが抑え込んだ。


「ナイス!」


「すごいです!」


 というか、ロイもクラッシュクローを覚えてたんだな。多分、レダもなんだろうけど、ちゃんと役割分担できてる感じ。


「ぁ、解体は私が」


「うん」


 スキル上げにミオンが解体し、ルピたちにご褒美を配ったあとは、ギリー・ドゥーたちに全部渡す。今のところは肉も骨も皮も余ってるし。


「じゃ、さくさく行こうか」


「はぃ」


 ………

 ……

 …


 薄暗かった森の中の先が明るくなり、どうやら目的地の湖まで来れたっぽい。

 最初に出会ったランジボア以外に、バイコビットを3匹ほど仕留めたけど、それも全部ルピたちが狩ってくれた。


「ゥゥ」


「おけ。ここから先に湖があるんだけど、おとなしい動物とかもいるから、あんまり騒がないようにね」


 その言葉にみんなが頷いてくれる。

 出口に近い場所で待ってくれていたルピたちに追いつくと、


「うわ……」


「すごく綺麗な場所ですね……」


 目の前に広がるのは、かなり広い湖。サイズ的には灯台のある入り江ぐらいありそう。

 そして、西側に見えるのは、


「〜〜〜♪」


「神樹だ」


 湖畔から突き出た陸地の先に立つ神樹。

 周りの景色もあいまって、すごく神秘的な感じがする。


「ゥゥ」


「ラケちゃんたちの神樹だそうです」


「おお、それならますます挨拶に行かないとかな」


 水辺に沿って進んでいき、神樹の根元に到着。

 まずはスウィーがいつものように手を添えるので、みんなでお祈りを捧げる。

 意味はないかもしれないけど、これから妖精の道を使わせてもらうことになりそうだし。


「〜〜〜♪」


 くるっと振り返り、ぐっとサムズアップするスウィー。

 無事に登録は終わったようで、神樹の葉が嬉しそうに揺れている。


「ゥゥ」


「ニャ〜ン」


「〜〜〜♪」


 この神樹に近い森の北側はラケの担当区域とのこと。東側がクロ、南側がアトという分担になってるんだとか。

 で、神樹を使っての往来に関しては、基本的にラケが担当するので、実際に妖精の道を開くスウィーとシャルで話し合いを。


「じゃ、座っておやつにしながらで」


「はぃ」


 ラケの話だと、この湖にはモンスターがいないそうなので、そのまま神樹の前に輪になって座る。

 今日持ってきたのはガジュたちにも配ったシンプルなクッキー。ミオンと二人で大量に作ったやつを持ってきた。


「〜〜〜♪」「クルル〜♪」「ゥゥ」


 スウィーもラズもラケたちも美味しそうに食べてくれている。

 シャルはクッキーよりは煮干しかな。ルピたちはさっきのご褒美があったので、俺の周りで伏せてリラックス中。


「ゥゥ?」


「野菜はパーンたちかな。油はトゥルーたちのオリーブオイルが一番いいと思うよ」


「ぁ、ショウ君。トゥルー君たちとはルモネラもいいと思います」


「うん、それもだね」


 あとはガジュたちの南国フルーツや香辛料かな。

 ルピたちはシャルたちと組んで狩りをしてくれるし、ヤコッコの玉子とエクリューミルクもシャルたちがやってくれてるし……あれ? 俺とミオンがやること無くなってきてる?


「〜〜〜♪」


「あ、空砂糖か。確かにあれは山に採りにいってたし、栽培できるならしたいけど」


「ダメなんですか?」


「いや、あれって空砂糖を作る時の臭いがね……」


 少なくともルピたち、スウィーたちはあの臭いが苦手だし、そう思って俺自身がやってたんだけど、


「〜〜〜?」


「ゥゥ」


「やってみる? じゃあ……って採りにいってくれたんだっけ」


 俺たちがじいちゃん家に行ってる間、スウィーが空砂糖が欲しいって話で、みんなで採りにいってくれたんだよな。玄関の倉庫に山ほど入ってたのには笑ったけど。


「じゃ、今度、空砂糖の作り方を教えるよ」


「ゥゥ」


 ギリー・ドゥーたちは、そういうのは平気らしい。ハーブとかで慣れてるとのこと。

 うん。俺たちがやることが本当に無くなりつつあるな、これ……


「ん?」


 ルピがすっと立ち上がって、対岸を見つめる。

 その先に見えるのは……


「あれ? 橋かな?」


「ショウ君、そのもう少し北側に」


「あ、馬。あれって、前に見たやつかな?」


 トゥルーたちと小型魔導艇で川を遡った先、平原の奥だったかな? あの森の奥と繋がってるのは確かなんだろうけど。


「ルピ。大丈夫っぽいから」


「ワフン」


 頭を撫でるとすっと伏せてリラックスした表情に戻った。

 あの馬はこっちに全然気付いてないのか、気にしてないのか、ゆったりと水を飲んでいる。


「あの橋の先、行ってみる?」


「そうですね。まだ時間はありますし」


 ミオン以外も特に反対意見はなし。

 一応、ラケがあっちに行くならクロを呼んだほうがいいとのこと。


「よし。じゃ、行ってみようか」


「はぃ」


----

※ 島 全体像(?)

 https://kakuyomu.jp/users/kimino-neko/news/16818023213889928372

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