第487話 探したいものがたくさん

 ベル部長への報告と庭仕事もひと段落。

 先日の『白銀の館』メンバーを助けてくれた件もあることだし、南の島へと向かうことに。

 先頭はいつも通りルピで、続いて俺。その後にシャルが続き、最後にミオンとスウィー。


「よっと」


「ジュジュ〜♪」


「ガジュ、元気そうだね」


 出迎えてくれたのはガジュだけでなく、近くにいたキジムナーたちも集まってきてくれている。というか、


「「「ジュジュ〜♪」」」


「ぁぅ……」


 やっぱり「女神様が来た!」ってやつになっちゃってるな。

 後から出てきたミオンにキジムナーたちが押し寄せてるんだけど、そこはスウィーとシャルがちゃんと整理してくれている。


「えーっと、今日はこの間のお礼に来たんだけど」


「ジュ?」


「こっちに来てた『白銀の館』の人たちを助けてくれたでしょ?」


「ジュジュ」


 ガジュが「ああ、それ」みたいな感じで、大したことでもなかった風。

 その前に、ベル部長から紹介があって砦の前で顔合わせをしたんだけど、みんないい人だったからとのこと。


「そっかそっか。それでもありがとうな」


「ジュジュ〜」


 つい、トゥルーやパーン、シャルと同じように頭を撫でてしまったけど、ガジュも嬉しいみたいでよかった。

 真白姉がたまーに俺を褒める時に頭を撫でてくれるんだけど、嬉しいけど鬱陶しいみたいな感じあったし……


「で、ご褒美ってわけでもないけど、おみやげ持ってきたから……、ミオン、大丈夫?」


「は、はぃ」


 幸蓉の神樹から少し離れて、みんなで輪になって座る。

 おみやげは、コハク(小麦)粉、空砂糖、エクリューミルクで作ったシンプルなクッキー。ドライグレイプルや、ルモネラジャムを乗せたやつも。


「たくさん作ってきたから、一応全員分あると思うけど」


「はぃ」


 大きな木皿にいっぱいのそれを、俺とミオンそれぞれが取り出す。


「ジュ! ジュジュ〜♪」


「「「ジュジュ〜♪」」」


 ミオンを見にきていたキジムナーたちが、クッキーを一つずつ持っていく。

 で、他のキジムナーたちにも、クッキーがあることを伝えに行ってくれた。


「〜〜〜♪」


 スウィーには、別に用意してあった方の木皿に。

 ルピとシャルには、ばあちゃんに教わった猪肉ジャーキーをランジボアの肉で作ったものを。


「どう? 美味しい?」


「ワフ!」「ニャ!」


 濃い味付けは体に悪そうなので、塩は控えめにハーブで味を整えた。

 自分で食べて見て、なかなかいい出来だったし、これはアージェンタさんたちにも配っていいかもしれない。おつまみ用なら濃い味の方がいいのかな。


「ショウ君。今後の話を」


「うん。ガジュたちはこれからどうするか決めた?」


「ジュ!」


 基本方針は俺が思ってたのと同じ。俺やミオン、うちの島の住人以外は集落には入らせない。

 ただ、プレイヤーと交流したいキジムナーもいるので、その子たちには集落の外で交流してもらうことになったそうだ。


「なるほど。しばらくは俺が知ってる優しい人たちが来てくれるし、その人たちと交流する分には心配ないと思うよ。でも、人が増えてくると……悪い人もいるかもだから」


「ジュ! ジュジュ〜」


「ああ、そういう人はわかるから大丈夫と」


 安心ではあるけど、やりすぎないかが気になるところ。

 そういう人を見かけたら、信頼できる人に話してくれていいわけだし。


「ジュジュ?」


「うん。俺たちはこっちに来れることは秘密にしたいからね。スウィーたちも今後は外へは行かないでね。できれば、砦の近くにも」


「〜〜〜!」「ニャ!」


 この間の件を反省してるのか、すかさず「了解!」と返してくれる二人。

 しっかりと作り直した砦のおかげで、キジムナーの集落を覗き込むことはできないけど、門が開いた時にちらっとなんてこともあるかもだし。

 これはトゥルー、パーン、ラケたちにも伝えておかないとだけど、今後しばらくは俺と一緒じゃないとこっちに来ないようにでいいか。


「〜〜〜?」


「うん。今後、アームラやアレケスの実はガジュたちにお願いしていい?」


「ジュジュ〜」


 この島の食材に関しては、ガジュたちに頼ることにしよう。

 果物やハーブ、こっちでしか獲れない魚介類は、うちの島で取れる物と交換で。やりとりする物や量は、妖精たちで相談して決めてもらえばかな。


 ………

 ……

 …


「「「ジュジュ〜」」」


 ガジュたちに見送られて島へと戻る。

 次に来るのは日曜日ぐらいの予定。その時までに、今度は鍋やら包丁やらを作らないとだ。


「ショウ君。夜はクロちゃんたちに会いに行きませんか?」


「りょ。そういえば、ギリー・ドゥーたちにもお世話になってるのに、来てもらってばっかりだよな」


「はぃ」


 あ、森の奥に神樹があるんだっけ? 確か湖があってって話を聞いたような……

 そろそろ北側へ探索を進めないとってのもあるし、


「夜はクロたちに案内してもらって、北側の森の奥にある神樹を見に行こうか」


「〜〜〜♪」


 ミオンの肩に乗っているスウィーが、神樹なら任せなさいと胸を叩く。

 頼もしいことなんだけど……この島、神樹多すぎじゃないかな?


「どうしました?」


「あ、いや、なんでもないよ。その湖の向こう側はギリー・ドゥーたちも知らないんだっけ?」


「だと思います」


 島の北端の遺跡も保留したままだし、そろそろ陸路であそこまで到達したいところ。いや、その前に、馬を見かけた森のあたりも気になるんだよな。


「その向こう側って、地理的には馬を見かけたあたりまで続いてそうだよね」


「馬? あっ、トゥルー君たちと川をさかのぼった時のですよね?」


「そうそう。あっちもあっちで探索したいんだよ」


 探したい物が結構たくさんあって、一番はハク(米)。次にクミン。あとは……牛かな?

 家畜にできるなら牛乳がゲットできるし、モンスターだったら牛肉になるし。

 冬までにすき焼きとか作れるようになりたいよな……

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