第482話 伊勢家の将来

 ミオンと2人、カゲマルの散歩に来ている。

 お墓参りから戻ってきて、じいちゃん、ばあちゃん、真白姉と美姫は買い出しに出かけた。

 自動巡回バスを呼んで一番近くのスーパーへ。夕飯の買い出しも兼ねている。


「ショウ君は行かないんですか?」


「うん。俺が留守番なのも毎年のことだから」


 せっかくのんびりできる田舎に来てるんだし、スーパーでの買い物は普段からやってることだし……


「あ、ミオン、ひょっとして行きたかった?」


「ぃぇ、ショウ君と一緒がいいです」


「あ、うん」


 そう言ってもらえるのは素直に嬉しい。

 まあ、ミオンも人の多いところは苦手っぽいし、そのスーパーにはご近所さんもいるだろうから……そういう付き合いも大事なんだろうけどさ。


「ワフ」


「よーし、いいぞ!」


 リードを外し、カゲマルが駆けていくのを眺める。

 じいちゃんの話だと、まだ1歳半だそうで、人間の年齢的には俺と同じぐらい?


「生まれてすぐにじいちゃんに引き取られて、しっかりとしつけと訓練を受けたんだって」


 去年は俺と真白姉の受験が重なったのもあって帰省できなかったんだけど、その頃のカゲマルも見てみたかった。


「しつけはわかりますけど、訓練ってどういうことをするんでしょうか?」


「えーっと、呼んだらすぐ来るようにとか、獲物がいることを知らせるのに一声鳴くとかそういう?」


「ぇ? 獲物?」


「あー、じいちゃんは狩猟免許を持ってるから……」


 それを先に言わないとだよな。

 鹿なんかは放っておくと増えすぎて、樹皮を食べて木を枯らしたりするし、猪は獣害対策を無理やり突破して田んぼや畑を荒らしかねない。

 なので、冬の猟期にはじいちゃんも猟に出る。積極的にってわけじゃないみたいだけど。


「すごいです。だから、ショウ君もすごいんですね!」


「いやいや、俺のはIROの中の話だから……」


 実際にじいちゃんの猟について行ったこともないし。

 中二の冬に帰省した時に実際に見てみたかったんだけど、年齢的にもまだダメって言われたからなあ。

 多分だけど、狩猟免許取らないと同行させてもらえない気がしてる。


「ルピちゃん、元気にしてるでしょうか?」


「まあ、ルピは賢いし、レダとロイもいるから大丈夫だと思うよ。そっちよりも……」


「スウィーちゃんが無茶してないか心配ですね」


「そうなんだよなあ。そこはシャルに期待するしかないわけで……」


 軽く口笛を吹くと、それに気づいたカゲマルが戻ってきて、ピタッとお座りする。

 じいちゃんが訓練しただけあって、ピシッとしてるな。


「よしよし。いい子にはおやつだよ」


「ワフ〜」


 じいちゃんから渡されてたおやつは、犬用の猪肉ジャーキー。これはばあちゃんが作ったやつ。

 やっぱり、やってることが割とIROと変わらない気がする……


「ミオンはさ……」


「?」


「ごめん。なんでもない」


 ミオンと2人でじいちゃんたちの後を継ぐとか考えたけど、それはもっとずっと先でもいいよな。


 ………

 ……

 …



「兄上、待たせたの!」


「おう。って浴衣に着替え……」


 美姫が買ってきた花火をやろうというので、バケツに水を張って準備してたんだけど……

 浴衣姿の美姫の隣に、同じく浴衣姿のミオンがいて、びっくりというか。


「ぁの、どうですか?」


「あ、いや、似合ってる! その、すごく綺麗だなって……」


 語彙力が足りない!


「ほら! 良かっただろ?」


「浴衣は真白姉が昔着てたやつ?」


「おう。あたしにはもう小せえからな」


 中学ぐらいの時に着てたやつだよな。

 まあ、着たはいいけど全然おとなしくできなくて、ばあちゃんに怒られてたけど。

 そんな真白姉は、相変わらずTシャツに短パンっていうラフなスタイル。


「翔一さんが写真を撮ってくれるよ。ほら、2人で並びな」


 ばあちゃんがそう急かし、じいちゃんがいつの間にか年季のはいったカメラを持ち出して準備中。

 言われるままにミオンと並んで写真を……俺もちょっとマシな格好すれば良かったなあ。

 ミオンと並んで何枚か撮ってもらったところで、


「真白と美姫も入りな」


「おう」「うむ」


 背の高い真白姉が後ろに、低い美姫が前に来て、4人揃って撮ってもらう。

 その後、ばあちゃんとミオンで撮ったりとかもしたんだけど……花火いつやるの?


 ◇◇◇


「〜〜〜!」


「ワフ!」「リュ!」「ニャ!」


 島の盆地にある山小屋の前で、スウィーが号令をかけます。

 ルピ、パーン、シャルといういつものメンバーに加え、レダとロイ、ウリシュクたち、ケット・シーたちも準備万全。

 今日は島の美味しいものをキジムナーたちに分けてあげよう作戦です。見返りに南国フルーツをもらえればと思っているのは確かですが……


「〜〜〜♪」


「ニャ」


「「「ニャ〜」」」


 シャルを先頭に、ケット・シーたちが野菜の入った木箱を抱えて移動開始。

 神樹の前にある花畑を踏まないよう、回り込んで神樹の裏側へと。

 スウィーが手を添えて、しばらくすると……


「ニャ?」


「〜〜〜♪」


「ワフ!」


 先頭はルピ。レダとロイが続き、シャルたちが木箱を器用に樹洞へと運び入れて行きます。

 続いてパーンたちウリシュクが樹洞をくぐり、最後にスウィーとフェアリーズ。


「ジュジュ〜」


「リュリュ〜」


 キジムナーの首長ガジュとパーンが握手しつつ、運んできた野菜の種類を説明中。

 そのまま食べて美味しいもの、焼いたほうが美味しいもの、いろいろありますね。


「〜〜〜?」


「リュ〜」


 スウィーが今度はセルキーの里の神樹へと妖精の道を繋ぎます。約束していたトゥルーたちを迎えにいくためですね。


「ワフ」「「バウ」」


 迎えにいくのはルピたち。

 樹洞へ飛び込んでいって、しばらくすると……


「キュ〜」「「「キュ〜」」」


 トゥルーとセルキーたちが現れました。

 今日はいつものお付きの2人だけでなく、さらに3人のセルキーたちが一緒です。


「キュ?」


「リュリュ」


「ジュジュ〜」


 トゥルーたちは漁のお手伝いと、お魚の料理を教え合うようです。

 パーンたちはモーブプラ(さつまいも)の栽培を教えたあと、新しいハーブを探すようですね。


「ワフ?」


「〜〜〜♪」


 スウィーは、やっぱりアームラの実を取りに行きたいみたいで……


「ニャフ?」


「ジュジュ」


 ガジュにアームラの林までの案内をお願いし、フォーメーションもしっかり打ち合わせ。これで何があっても大丈夫……だといいんですけどね?

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