第481話 白銀の館・南の島のお仕事

 ショウとミオンが見つけた南の島。

 その2人はいないが、管理を任される予定の『白銀の館』メンバーが活動中だ。


「この島のセーフゾーンでログアウトしても、本土へ強制送還されるわけじゃないんだな……」


 生産組コアメンバーのバッカスがログインし、コテージの中へと現れる。

 昨日の初上陸から島の案内を受け、キジムナーたちとの顔合わせも終え、蒼竜アズールに許可を得てコテージでログアウトした。


『おーい! バッカス!』


「おう! どこだ?」


『アームラの林のところにおるぞい』


 ギルドカードから同じく生産組コアメンバーのゼルドの声が聞こえた。

 先にログインしていたゼルドはアームラの林で下草刈りの作業中とのこと。さっそく、手伝いに……


『バッカスさん。いますか?』


「お、ユキさん。どうした?」


『今からディマリアさんがそちらに向かいます。案内してあげてください』


「おお、わかった。ゼルドも聞こえてたよな? ディマリアさんを案内するので、ちょっと待っててくれ」


『了解じゃい』


 現状、島で活動する範囲において、危険なモンスターも存在しないということで、生産スキルをメインにしているディマリアも来ることになった。

 とはいえ、彼女は精霊魔法を使うことができるので、コボルト如きには負けはしないのだが。


『行きますよ』


「おう」


 バッカスがちょうど転移魔法陣の前に着いたところで、ギルド通話の連絡が入り、ほどなくしてユキとディマリアが現れる。


「バッカスさん、こんにちは」


「おう。って、ユキさんがいるなら……」


 案内はユキがやればと言おうとしたところで、


「ごめん。私、これからマスターシェフさんたちと会合があるの」


「マジか。じゃ、ここのことを話すんだな?」


「ええ。でも、『ショウ君からもらった転移魔法陣が無人島に繋がっていた。ショウ君と竜族の許可をもらって探索をしている』とだけよ」


 その言葉にバッカスとディマリアが頷く。

 将来的にこの島のことは公表するし、他のプレイヤーに開放するつもりだが、そうなったときに『白銀の館』だけではとても手に負えないのが正直なところだ。


「向こうは手を貸してくれそうなのか?」


「頼まなくても貸してくれると思うわよ? だって、あの人たち、ショウ君とミオンちゃんのファンクラブ、ファンギルドなんだもの」


 ここが『白銀の館』経由とはいえ、ショウの厚意を無碍にすることはないだろうと。


「この気候なら、本土にはない食材もあるでしょう。お手伝いいただいた分の見返りは十分あると思いますよ」


 ほんわかと優しいディマリアの言葉に2人が大きく頷く。

 この島の恵みを『白銀の館』だけで独占するのは無理だし、それをするつもりもない。そもそも不可能だろう。

 それなら、できるだけゲームの楽しさを分かち合える人と共にというのが、白銀の館のポリシーだ。


「じゃ、私はこれで。夜にまたベルたそと来るけど、あとよろしく!」


「おう。じゃ、行こうかい」


「はい」


 ◇◇◇


「ニャニャ〜?」


「ニャ!」


 セルキーの里にある神樹の前で、シャルが銀猫便のチェック中。

 今日はウリシュクたちから受け取った野菜をセルキーたちに渡し、代わりにお魚の干物などを受け取って帰ります。


「キュキュ〜♪」


 セルキーの王子様、トゥルー君がやってきました。

 いつも食材を運んでくれているシャルたちにお礼を言いにきてくれたようです。


「ニャ〜ン。ニャ?」


 銀猫便は神樹の樹洞を通って行き来しますが、それができるのはフェアリーの女王スウィーのおかげです。

 そのスウィーはここにはおらず……


「キュ〜。キュキュ」


「ニャフ」


 いつもショウがお酒を作っている道具のところで、あれこれやっているとのこと。

 そろそろ荷運びも終わりそうなので、2人で迎えに行くことにしました。


「ニャ。ニャニャ?」


「キュ〜。キュ〜キュ」


 港の酒場まで行く途中、シャルから困っていることがないか聞かれたトゥルー。

 困っているというほどではないようですが、この前、ショウたちと取ったトキワガイやランスクイッドが大好評で、みんなまた食べたいとのこと。


「ニャフ」


 南の島へ行ってもいいとは言われているシャルたち。でも、向こうにいるキジムナーたちに迷惑をかけちゃダメだよとも言われています。


「ニャニャ」


「キュ♪」


 ちょうど港の酒場が見えてきたので、まずはスウィーに相談してみようということになりました。


「「「キュ〜♪」」」


「ニャ〜ン」


 セルキーたちがお酒が入った樽や、お酢が入った壺を運んでくれています。

 お酢は一部がセルキーたち用ですが、お酒はほとんどがドラゴンたちへの贈り物だそうです。

 ショウ曰く、この島を守ってくれているお礼なんだとか。

 ドラゴンに島を守ってもらえるなんて、私たちの主君はなんてすごい人なんだろうと感心しているうちに、酒場へと到着です。


「ニャニャ?」


「〜〜〜♪」


 酒場の裏にいたスウィー、酔っていないか心配でしたが大丈夫ですね。

 そばにいるもう1人のフェアリー、ワーネがしっかりと見張ってくれていたようです。


「ニャ。ニャニャ〜」


「キュキュ〜?」


「〜〜〜♪」


 シャルとトゥルーから、南の島の魚介類を食べたいという相談を受けたスウィーですが、二つ返事でオーケーします。

 なぜなら、彼女もまた南国フルーツを食べたいから。


「〜〜〜?」


「〜〜〜♪」


 ワーネから問題ないんですかというチェックが入りましたが、スウィーは大丈夫と答えます。ちゃんとショウの言いつけは守るからと。


「ニャ」


「キュ」


 自分たちがしっかりしないと。

 そう思うシャルとトゥルーでした。

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