第453話 階段の先に待ち受けるもの

「ふむ。とりあえず様子を見に行くというのは賛成よの」


「そうだねえ。その修復できないのが、どれぐらいのレベルなのかは見たいかな?」


 セスとアズールさんは賛成と。

 で、ベル部長はというと、


「ヒトミさん。その地下11階の様子は全くわからないのかしら?」


[はい。完全に断絶しているため、地下11階以下の階層の状況は全く分かりません]


「そう。じゃ、軽く様子を見てくるぐらいにしましょ」


 ミオンもうんうんと頷いてるし、ルピたちもおやつを食べ終わって、やる気十分な感じ。帰りも近いし、ちょうどいいかな。

 おやつの片付けも終わらせて、忘れ物がないのを確認。っと、あかりが出しっぱなしなのを回収。


「あ、この扉って閉めておきます?」


「ショウ君の持っている指輪じゃないと開かないのよね?」


「そうなんですよね」


 ベル部長が少し考えたのちにセスの方を見て……


「当面はどちらでもよかろう。この島を一般解放する際には、何らか考えておかねばならんがの」


「そうだね。そこはしっかりしておいて欲しいけど、今のところは大丈夫だと思うよ」


「じゃあ、一応、俺が閉めておきますか」


 しっかり閉めてからエレベータへと乗る。

 地下10階より下のボタンも点いてるんだけど、


「ボタン押してもダメなんですかね?」


「待って。先に聞いてみましょ。ヒトミさん、地下11階より下のボタンを押すとどうなるかわかるかしら?」


[いいえ。地下11階以降に関しては、状況の確認ができておりません。ボタンは点灯していますが、使用しないことを推奨します]


 それはちょっと怖いな。

 転移できないとか、できたとしても扉が開かないぐらいならいいけど、


「モンスターハウスという可能性もあろうな」


 なんだよな。

 すごく広いフロアに放り出されるとかもあるかもだし。


「無難に地下10階に降りてから、下に向かった方がいいかしら? 階段はあるのよね?」


「はい。エレベーターホールの左右にあったはずです」


 というわけで、まずは地下10階へ。

 転移エレベータを降りて……あれ?


「下ってどっちだっけ?」


「ワフ」


「さんきゅ」


 ルピの後ろをついていくと、下へと続く階段が見えた。

 うっすらと天井が光ってるので、この辺りはまだ管理できる範囲なのかな。


「じゃ、行きます」


「ええ」「うむ」「おっけー」


 ルピを先頭に下りていくんだけど、この螺旋階段、長く続いてて不安になる。

 しかも、だんだんと天井が暗くなってきて、先の方はもう真っ暗だし……


「あかりを。スウィーもお願い」


「〜〜〜♪」


 精霊魔法であかりを出して先の方を照らし、後ろはスウィーにお願いを。

 そのままゆっくりと下りていくと、ルピがピタッと立ち止まって振り返った。


「セス。レダとロイも」


「うむ」


「「バウ」」


 階段の途中での戦闘って厄介だよなと思いつつ、俺も剣鉈と円盾を構える。

 セスがレダ、ロイを従えて隣のまで歩いてきたので、


「4、5匹はいそうなんだけど大丈夫か?」


「ふむ。その程度であれば問題はないが、さらに増えるようなら撤退でよかろう」


「おけ。それで行こう」


 慎重な意見が返ってきたので即採用。

 後ろのメンバーも頷いてくれてるので、まずは俺とセスでルピのところまで下りる。


「まずは接敵しようか」


「ワフ」


 ルピが先頭は変わらず。俺とセスがレダとロイを従えて続く。

 セスが金属鎧なので足音を出さずには無理だし、気配遮断は行わず、でも、慎重に下りていく。


「ギチギチギチギチ……」


 何かを擦り合わせるような奇妙な音が聞こえてきて、ぐっと緊張感が高まる。

 あかりをもう少し先まで向かわせると……


「うわっ!」


 急に襲ってきたのは、大型犬サイズのアリ。

 思った以上に素早い動きで飛びかかってきた。


「ふん!」


 ガキンという硬い音。

 セスの大盾がアリの顎を受け止めて弾き返し、右手の長剣で切りつけたが、黒い外骨格に弾かれる。

 口にこそ出さないものの、セスも厄介な相手だという表情。

 これは何かしら弱点を探さないとってことで鑑定してみると……


【ブラックディガプアント】

『ディガプアントの変異種。なんらかの影響により、巨大化&凶暴化している』


「ちょっ、いきなり変異種かよ……」


 ギチギチと聞こえてたのは、大きな顎を擦り合わせる音。

 階段の奥からも聞こえてきているし、気配感知に引っかかる数が増えた。


「まずいな。撤退するぞ!」


「了解した!」


 説明しなくても納得してくれるのはさすが俺の妹。


「ギシャー!」


「あぶねっ!」「バウ!」


 先頭の隣にいたアリがいきなり口から液を吐き出し、それがルピにかかりそうになったのを、俺とロイで防ぐ。

 酸の攻撃なのか、それがかかった場所に煙があがり、じわじわとダメージが……入りそうになったところで、ミオンからの治癒魔法がかかる。


「さんきゅ。ベル部長。敵が仲間を呼んでるみたいなんで、道を塞げますか?」


「了解よ。氷塊!」


 かなり大きな氷の塊がセスの前に現れて、そのまま階段を落ちて転がっていく。応用魔法学<水>の魔法だよな。

 立て続けに2つ、3つと出して、敵の前線を押し下げてくれた。


「おおー、やるねえー」


「アズールさん、撤退しますよ!」


「はーい。僕がしんがりを務めるから、先に行っていいよー」


 あ、はい。そりゃ確かに安心なんだろうけど「それっていいの?」感がすごい。

 とはいえ、やってくるアリの数はまだまだ増えそうな気配だし、


「シャル! パーン! ミオンとベル部長をお願い」


「ニャ!」「リュ!」


 2人に任せつつ、先に撤退してもらう。そして、


「氷壁!」


 俺が出せるのは氷の壁まで。

 接近を遅らせる時間があれば大丈夫のはず。


「よし! 俺たちも撤退するよ」


「うむ!」「ワフ!」「「バウ!」」


 先に行けと促すアズールさんの隣を駆け上がったところで、


「じゃ、押し返しとこうかなー」


 その声が聞こえた次の瞬間、アズールさんの口から氷雪のブレスが放たれ、通路の先が真っ白に……


「えええ……」


「ん? ほら、早く早く」


 何匹か倒しちゃってそうなんだけど、これOKなの?

 超強いNPCに、とんでもないパワーレベリングしてもらった気がするんだけど……

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