第451話 ねんがんの……

「兄上。このゴーレムの破片を鑑定してもらえるか?」


「ん?」


「私たちだと『ポリモゴーレムの残骸』という名称と、『謎の金属でできている』っていう説明ぐらいしかないのよ」


 あー、ひょっとして錬金術スキルがないとわからない感じのやつかな?

 一番近くにあった頭部分の破片を鑑定してみると、


【ポリモゴーレムの残骸】

『破壊されたポリモゴーレムの一部。

 魔導多態鋼でできている』


「……って感じですけど、錬金術スキルがあればわかるかも?」


「ほう。何やら希少な金属のようだの」


「私たちが持って帰ると出所を聞かれそうだし、ショウ君が持っていくのがいいと思うわ」


 ベル部長がそう言ってくれるんだけど、直径2mもある球体だったからか、結構な量があるんだよな。


「さすがに全部は持てないんですけど……」


「じゃ、ショウ君が持ちきれない分は僕がもらっていい?」


「ええ、持ってっちゃってください」


 とりあえず俺が持てそうなのは、ルピたちが削ってくれた分と、パーンが耕してくれた頭かな?

 インベントリに頭部分を入れて……


「ミオン、ごめん。ちょっとこれ預かってくれる? セスも空きがあるなら持って行ってくれ」


「はぃ」「うむ!」


 ポーションとおやつの類を全部二人に渡し、空間魔法の収納拡張も使用状態にして、インベントリの空きを広げる。

 これならなんとか収まりそうかな?


「ん、おっけ。で、えっと……」


「じゃ、残りはもらうねー。転送っと」


 コアが外れた本体をアズールさんが転送の魔法でどこか(多分、竜の都?)に送ったっぽい。


「……便利そうね」


「ですよね」


 転移がまだなのはしょうがないとしても、転送はそろそろ使えるようになって欲しいんだよなあ。


「ショウ君。先に行っていい?」


「あ、はい」


 アズールさんが気にしてるのは、ゴーレムがいた場所のさらに奥。見たことがある制御室のコンソール(?)が設置されている。


「兄上。あれを」


「ん?」


 向かって左側の端に穴……というか下の階へと続く階段が見えた。

 正規ルートだとこっちから上がってくるのかな?


「下から敵が上がってくる可能性あるかな?」


「ないのではないか? あるようなら、ゴーレム戦の時に来ておったであろう」


「まあ、そうだろうけど……。ルピ、レダ、ロイ、ちょっとここ見張ってて」


「ワフン」「「バウ」」


 それ以外に特に何かおかしなものは見当たらないかな。


「そういえば、かのゴーレムが最初に問うていた解除コードとはなんなのだ?」


「いや、わからん……」


 うちの島で使われてたやつじゃなかったし、そうなると思いあたる節も何もない。

 まあ、合ってたら、それはそれで「適当に設定しすぎだろ」って話だよな。


「一足飛びでこの最上階に来ちゃったからかしらね」


 とベル部長が下への階段の方を見る。

 1階から順にクリアしていけば、どこかで『解除コード』を知ることができて、それを使えば戦うこともなかった、とかかな?

 それを、俺が持つ『蒼月の指輪』の最上位権限でショートカットしちゃった気がする……


「じゃ、ちょっと見させてね」


「お願いします」


 アズールさんが装置全体を魔法解析するようなので、そっちは任せるとして……


「えっと、制御室用の非常用魔晶石のスロットって、どういうのかは見たことありますよね?」


「ええ、死霊都市の地下で見たわ」


 ということなので、ベル部長に右側をお願いし、俺は左側を見ていくことに。セスとミオンは一応警戒しつつ、休憩でいいかな。


「〜〜〜?」


「うん、スウィーたちも休憩してていいよ。ミオン、さっき渡したおやつ、みんなで食べちゃって」


「はぃ」


 シャル用に煮干しも渡しておこう。

 そっちはミオンに任せて、左側にスロットがないか探していくんだけど……


「これよね?」


「あ、見つかりました? ちょっと開けるの待ってください」


 魔法解析を掛けてるアズールさんの邪魔にならないように、開けるのはそっちが終わってからで。

 アズールさんの後ろを、少し離れた場所を通ってベル部長のところまで移動すると、見たことのある大きなスロットの蓋があった。

 この蓋のサイズ、うちの島よりもちょっと大きい気がするし、死霊都市の副制御室にちょうど良かったりするかも?


「終わったよー。やっぱりここが制御室で間違いないかな? 今、その中にあるのが非常用魔晶石で間違いないと思う」


「じゃ、開けてみましょうか。せっかくなんで、お願いします」


「わかったわ」


 別に開けるだけだと思うんだけど、神妙な顔をしてスロットの蓋を開けるベル部長。いつの間にか後ろにいたミオンやセス、スウィーがそれを覗いていて……


「ぁ……」


「おお!」


「でかっ!」


 ニーナの非常用魔晶石よりも一回り大きい、死霊都市の副制御室に使えそうな魔晶石が現れた。


「いやー、良かったよ。先に見つけられたのはラッキーだったね」


「ですね。で、どうするかまだ決めてないんですけど、竜族の希望ってあります?」


「そこはショウ君の要望を優先でいいよ。死霊都市の転移魔法陣を外すのも、今すぐじゃ無くてもいいんだよね?」


「あ、はい。今はもうこの島と繋がってますし」


 教会から続く地下にある副制御室。

 あそこに使って再起動できそうなサイズだけど、結局、その後も監視は続けないといけないから、急ぐ必要はないらしい。


「ふむ。なら、まずはこの古代遺跡、採掘施設を再起動するのがよかろう? ここの管理者はベル殿で良いのだな?」


「うん。アズールさんもそれでいいですよね?」


「もちろん。元々、アージェンタとも知り合いだったし、是非って感じだね」


 とのこと。

 前の交流会のこともあったし、その前のワールドクエストの話もあったし、俺よりずっと真っ当に信頼を勝ち得てる気がする。

 あ、それと、


「たしか『蒼星の指輪』を持ってましたよね? それでも管理者になれるのか、気になるなと……」


「確かにそれは気になるわね」


 とベル部長。

 蒼星の指輪で試してもらって、ダメなら俺がってことで行きたい。


「それで試していいです?」


「いいよいいよー。そういうのはわからないところから試していかないとだよね!」


「ありがとうございます」


 あ、これでうまくいったらワールドアナウンスが出るんだっけ? 俺の時はワールド初だったからとかかな?

 まあ、今回は俺って話にはならないだろうし大丈夫だよな。

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