第450話 VSポリモゴーレム

「はあっ!」


 セスの大盾が変形(?)したポリモゴーレムの突進を受け止めた。

 四つ足の獣の形をしてて、頭があるのに顔がないのが気持ち悪い。


「ガウッ!」


 ルピのクラッシュクローがその頭部分にヒットして、その一部を削り落とす。

 レダとロイの攻撃も同様に、ポリモゴーレムの体を削ぎ落としていくんだけど……


「まずいっすね」


「昔の映画で見たことあるわ……」


 削り落とされた金属が、流体のようにすーっと床を這って本体へとくっつき、削った部分は何事もなかったように元に戻る。

 これ、ダメージ入ってないパターンな気がするんだけど……


「リュ?」


「ごめん。パーンはもうちょっと待って」


 これは攻略法を何か見つけないとダメなやつだろうし、パーンの耕す攻撃はここぞっていう時に使いたい。


「<氷槍>!」


 本体へと戻ろうとする破片にベル部長の魔法がヒットするが、さらに細かく分裂して……やっぱり本体へと戻っていく。


「クル!」


 同様にラズの火の矢でも……


「〜〜〜?」


「ウニャ……」


「なかなか面白いゴーレムだねえ」


 スウィーとシャルが「困った。どうしよう?」みたいな話をしてる後ろで、アズールさんだけが楽しそうっていう……

 でも、どうやってっていう攻略法を聞くのもちょっとなあ。


「部長。剥がれた部分を隔離できませんか?」


「なるほど。本体へ戻れなくということね」


 ミオンのアイデアを聞いたベル部長が、どの魔法を使うべきか少し考え込む。と、その前にそろそろか?


「兄上」


「りょ」


 セスといったん盾役をスイッチ。

 大盾を使って受け止めることでダメージはシャットアウトできてるけど、スタミナの消耗は避けられない。


「セスちゃん、強壮を掛けます」


「かたじけない!」


 ミオンがスタミナの回復速度を上げる神聖魔法<強壮>をセスへと。

 俺が神聖魔法を知らなすぎでもあるんだけど、3分ほど上がるかわりに満腹度が下がる、要はお腹がすくんだとか。


「おっと」


 四つ足ポリモゴーレムの右手(右前足?)の攻撃を円盾で受け流す。

 俺の盾の使い方は、セスの受け止める防御ではなく、受け流す防御なので、よそ見してると危ない……


「いけるわよ」


「よし、ルピ!」


「ガウ!」


「<物理結界>」


 削り取った破片は淡い紫の立方体に囲まれ、その壁に阻まれて右往左往しはじめた。

 俺が前に傘がわりに使った物理結界、本当はこう使うのが正解なんだな。


「おおー、なるほどね」


「ベル殿。その結界はいくつまで作れそうだ?」


「6つまでなら10分は持つわ。それ以上はMPが無理よ」


「心得た。兄上、代わるのでベル殿のサポートを」


「おっけ!」


 左手(左前足)の攻撃を円盾でいなし、相手がいったん距離を取ったところでセスとスイッチ。


「パーン。相手の頭を首あたりから耕しちゃってくれる?」


「リュ!」


 鍬を頭上に掲げて、やる気満々のパーンが頼もしい。

 できるだけ大きく抉り取ってもらって、それを物理結界で閉じ込めるのが良さそうだよな。俺が作れる物理結界は、3つぐらいが限度だろうし。


「では、ゆくぞ!」


「おう!」「リュ!」


 グッと身を屈めたセスが、ゴーレムの突進攻撃に対して、


「シールドストライク!」


 アッパーカットのようなシールドアーツで、その体を弾き上げると、


「リュリュ!」


「<物理結界>!」


 ジャンプしたパーンが、魔銀ミスリルの鍬で頭を耕して削ぐと、それを俺の物理結界で閉じ込める。


「やったか?」


「おい!」


 セスのやつ、わかっててフラグなセリフ言ってるだろ!

 ベル部長も呆れ気味だけど、それよりもゴーレムの方が気になっているようで、


「これはどうなるんだろうね? ちょっと観察したいところなんだけど……」


 気持ちはわからなくもないんだけど、さっさと倒してしまいたい。

 結界魔法は一度発動すれば放置でいいんだけど、継続的にMPを消費するし、時間を掛けるとジリ貧になる。


「あれって、どこかにコアとかないのかしら? 元に戻るための目印がどこかにあるはずだから、それを壊せばいい気がするのだけど」


「んー、ショウ君、真贋で見えない?」


「え? あっ!」


 鑑定の上位スキル、真贋は『偽装されたもの』に対して発動することで、その効果を発揮する。

 つまり、この残ってる体のどこかにコアが隠されてるはずで……


「喉の下あたりにだけ、拳大の何か違う場所があるっぽく見えます」


「おっけー、僕が見てるのと同じだね。多分、そこがゴーレムのコアだよ」


「どもっす」


 壊せばいいところがわかったなら、あとはやるだけなんだけど、喉の下っていうのが微妙に攻撃しづらい位置なんだよな。


「む」


「えええ、しまった……」


 どうしようか悩んでたら、他の場所の体積を減らして頭を再生し始めやがった……


「パーン。もう一回! ベル部長、次の結界はお願いできますか?」


「リュ!」「ええ、大丈夫よ!」


「では、もう一度ゆくぞ!」


 向こうが再生中で動かないのを見て、今度はセス自らが突進する。

 そして、


「シールドストライク!」


 今度は左から右へと大盾が払われ、吹っ飛んだゴーレムに、


「リュ!!」


 もう一度、頭を首から耕すパーン。

 あとはベル部長がやってくれるのを信じて、


「<加重>!」


 露出したコアに加重をかけた剣鉈を叩き込む!

 ギイィィンと硬質な音が響いた次の瞬間、球体のコア部分だけが地面へと叩き落とされた。


「おっけー。<封魔結界>っと」


 アズールさんの軽い声と共に、コアが淡い青い結界で囲われた。


【キャラクターレベルが上がりました!】

【真贋スキルのレベルが上がりました!】

【結界魔法スキルのレベルが上がりました!】

【特殊剣マスタリースキルのレベルが上がりました!】


「え?」


「ふむ。終わったようだの」


 セスが見下ろすゴーレムは最終的な形のまま横倒しになっており、それ以外の破片も物理結界の中で動かなくなってしまっている。


「結界も解除していいかしらね」


 ベル部長が試しに一番小さいのを解除し、長杖ロッドで突いてみるが……大丈夫っぽい。


「もう大丈夫だと思うよ。これがゴーレムのコアなんだけどもらっていいかな?」


「ええ、俺は全然いいんですけど……」


 ベル部長やセスはどうなんだろう?


「私たちも問題ありません。おそらく、それを受け取っても現時点でどうしようもないと思うので」


 セスも隣で頷いてるし、それならいいのかな。

 あ、そうだ!


「アズールさん。後でいいんで、俺がもらった『蒼竜の鱗飾』を2人に渡してもらっていいですか?」


「あ、それいいね。僕がいない時に見せれば、ある程度の無理は通るから渡しておくよ」


 これで、さっきの真贋の話はチャラにしてもらおう……

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