第447話 報告はしっかりと
「そういえば聞いてなかったんですけど、ベル部長とセスは本土へ戻るんですよね?」
「ええ、それなんだけど……」
「うちで使ってる宿舎があるから、そっちを使ってもらうよー」
とアズールさん。
「依頼と報酬についての打ち合わせということにしてあるの。今後、うちのギルドとの取り引きなんかも含めてのね」
竜族が押さえてる場所で一番いい宿を用意してあるので、戻った後はそこでログアウトするとのこと。
まあ、死霊都市をうろうろしてると、今回のピアノ修理の件とかでいろいろ聞かれそうだもんな。
「じゃあ、俺たちはこのまま地下10階から島に帰ります」
「おっけー。明日は先に来てるからね」
「あ、はい」
今日は最初の合流のところで、それなりに時間食っちゃったからなあ。
明日はサクッと始めて、もっとガッツリ調べたいんだろうな……
………
……
…
「ふう……、うわっ!」
「ぁ」
「ご、ごめん。びっくりしただけ……」
IROをログアウトし、そのままVRHMDをオフったら、ミオンが先に戻っていたのか、俺の顔を覗き込んでいた。
ちょっと近すぎだと思うんだけど……
「ん」
「う、うん。とりあえずリビングへ行こうか」
明日の予定をちゃんと詰めておきたいところ。
昼は泳ぎに行くのでIROは無しかな? となると、続きは夜なんだけど、このペースで探索するのかの話もあるし。
「終わりましたかー?」
「はい。って、あれ? ヤタ先生1人です?」
2人がけのソファーへと並んで腰掛ける俺とミオン。
オーナーの奥さんと飲むって話だったし、まだ全然続いてると思ったんだけど。
「明日もいい天気そうですしー、今日のところはほどほどでー」
そう言いつつ、お酒(泡盛?)の瓶とグラス、空っぽになった小皿を片付けに行く。足取りもしっかりしてるし、そんなに飲んでないのかな?
と、そこへベル部長と美姫もやってきた。
「セスちゃんと明日の調査について話したのだけど」
「明日は一気に上を目指した方が良いのではないか?」
そう言いつつ、向かい側のソファーへと腰掛ける2人。
今日の調査が軽めだったし、明日はガッツリというのは、アズールさんとも同意見らしい。
「上ってのは最上階ってことか?」
「できればの。魔術士の塔もそうであったが、やはり重要な設備は上にあるようなのでな」
魔術士の塔のことはあまり詳しくないんだけど、ベル部長の話だと希少な本の類とかはやっぱり上の方だったので、ここもそうなんじゃないかという推測。
地下で掘って、地上で加工、最上階は制御室っていうのは、なんとなくそれっぽい気はする。
「そういや、島の制御室も一番高いところにあるな……」
そのつぶやきを拾ったミオンがうんうんと頷いてくれる。
そういや、死霊都市の厄災を起こした塔も、一番上が最重要施設だったんだっけ。埋まっちゃった今は入口になってるけど。
「じゃあ、それで。制御室は見つけておいた方がいいだろうし」
「うむ」
「それで、制御室を見つけた時にどうするかも決めていないのだけれど?」
とベル部長。確かに決めてなかったけど、
「俺はベル部長が管理者になっておけばいいかなと。竜族も信頼できる人ならって話でしたし」
「うむうむ」
美姫が頷き、ミオンも同じく頷いている。
その反応に苦笑いのベル部長だったけど、
「じゃあ、問題なければそうするわね」
と受け入れてくれて一安心。
将来的に南の島を一般開放することも考えると、俺よりもベル部長に管理者になってもらって、竜族と『白銀の館』の管理でいいと思う。
「部長たちの明後日のライブは……」
「あ、そうだった。どういうライブにするつもりなんです?」
南の島で俺たちと遊んでることは言えないわけで、そうなると死霊都市で何かするんだろう。
「ピアノ修理の様子を伝えるのがメインね。あとは死霊都市の竜族の区画を歩いてみる感じかしら。ちゃんと許可はもらってるわよ?」
なるほど。
アズールさんなり、アージェンタさんなりの許可が下りてるならいいか。
転移魔法陣のある塔は詰所扱いなので、そこは責任者が一緒じゃないとダメって扱い。警備も厳重と聞いて一安心。
「気になるようなら、明日にでもアズール殿に聞いておくのが良かろうて」
「りょ。まあ、ここへの転移魔法陣がある塔以外なら問題ない、よね?」
「あの……、教会は?」
「いえ、パスするつもりだけど……見せた方がいいかしら?」
その問いにぷるぷると首を横に振るミオン。
「今はおやすみってことにしてるし、俺もパスでいいと思います」
ちょっと前に無人島を開放しろとか理不尽なことを言ってた連中はほぼ消えたらしいけど、そいつらを刺激しかねないからなあ。
自暴自棄になって、デスペナ&BAN覚悟で……とか洒落にならない。
「難しいお話は終わりましたかー?」
ヤタ先生が人数分のジュースを持ってきてくれた。
シークヮーサーのジュースらしい。
「あ、美味しい」
「うむ。爽やかな香りとすっきりした酸味がほどよいの。兄上、柏原家へのお土産に良いのではないか?」
「そうだな。あ、雫さんや椿さんにも買って帰ろうか」
「ん」
ミオンもうんうんと頷いているんだけど、
「今日来たばかりなのに気が早いわね」
「お土産は買い物に出る日がありますからー、その時に買ってー、配送してもらいますよー」
予定は成り行きでって感じの合宿だけど、天気次第なところが大きい。
雨降ってたら泳ぐのも観光も微妙なんだろうし、そういう日にお土産買いに出る感じかな?
「そういえばー、南の島の転移魔法陣はどうするつもりですかー?」
「え? 転移魔法陣は塔の入り口近くに置きましたけど」
「いや、先生が言っておられるのは、兄上の島と繋がっている方であろう」
「あ、そっちか……」
死霊都市と南の島を繋げた決断はいいとして、南の島とうちの島のつながりを残すかどうかは悩ましいところ。
南の島が一般開放されても、うちの島にある方をしっかり封印しておけばいいだけの話だけど……
「回収したい、かな。ベル部長に管理者になって貰えば固定を解除できると思うし」
外した転移魔法陣を持って、アズールさんに乗せてもらうとかかなあ……
「それだとショウ君は南の島に来れなく……もないのね」
「ええ、アズールさんに運んでもらえば来れますし、そのうち転移魔法も使えるようになると思うんで」
「「は?」」
あれ? 転移魔法の話ってしてなかったっけ?
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