第446話 初日は軽く小手調べ
結論から言うと、通路にいたストーンゴーレムは全てパーンの
一体釣ってセスが受け、それをパーンが耕してる間に次が来て……の繰り返しっていう、俺もベル部長も全く出番無し。自爆するコマンダーもいなかったし。
「リュ!」
「うん。ありがとうな」
パーンが「やったよ!」って感じで戻ってきたので、頭を撫でて褒めてあげる。
ベル部長とセスがパーンの強さ、そして、
「手前の部屋から行きましょうか」
「はぁ……、そうね」
中にまたゴーレムがいるかもということで、注意しつつ扉を開ける。気配感知に反応は無いけど真っ暗で見えない。
光の精霊のあかりを出し、部屋全体を照らすように天井近くへと送ってから踏み込んで……大丈夫っぽいのでみんなを呼ぶ。
「このフロアは鍛治の作業場という感じかしらね?」
「そのようだの。これだけ鍛治関連の施設があるということは、採掘だけでない複合施設なのであろう」
「やっぱり地下で採掘した鉱石を加工してるのかな」
教室サイズの部屋に、俺も見たことがある古代魔導火床が2つと、鍛治のための道具が揃っている。
「島の作業室と似てますね」
「だね。炉がないぐらいで、あとはそっくり。って、いてて!」
ミオンとそんな話をしていると、急にスウィーに耳を引っ張られた。
どうやら何かを見つけたっぽい?
「どうしたの?」
「いや、ちょっと……」
アズールさんを後ろに、スウィーの導く先へと向かう。
特に何かあるわけでもない、普通の壁だよなと思ってたら、
「〜〜〜!」
ちょうど膝ぐらいの場所をスウィーが指差していて、そういえばこういう場所には……
「あ、これか。上にスライドして……あった。非常用魔晶石だ」
「「「え!」」」
アズールさんだけでなく、ベル部長もセスも驚いている。
俺とミオンは、島の大型転送室でこれと同じ物を使ったことがある。
ただ、魔晶石のサイズは小なので、このフロア用って感じかな?
「試していいです?」
「もちろん!」
即答のアズールさんに、他のメンバーも異論は無し。
ここの照明が復活するとかそういう感じかな。多分だけど。
「おお!」
MPを注ぐと、予想通り照明が復活。
これだけなら、別に精霊魔法のあかりだけでいい気がするなあと思ってたら、
「バウ!」
「え? レダ?」
急に吠えたレダの方を見ると、彼女の前のちょっとした作業台っぽいものが光を放ち始めた。
「任せよ!」
セスが大盾を構え、レダの隣へと並んだところで光が収まり、
「ふむ、兄上。インゴットが転送されてきたようだぞ」
「は?」
セスが大盾を下ろし、面白いといった表情で皆を招く。
近寄ってみると、作業台の上にインゴットが5本置かれていて、どれも魔導鋼だな、これ。
「ショウ君、そのインゴットどけてもいい? 下に転送魔法陣があると思うんだよね」
「なるほど。セス、それどけよう」
「心得た」
手分けして作業台から下ろすと、そもそもこれが作業台じゃなくて、転送のための台だったんだなとわかる。
台の表面に魔導鋼製の魔法陣がピッタリと埋め込まれていて、アズールさんの言う通り、転送魔法陣なんだろう。
「あー、やっぱりそうだね。ショウ君、解析してみてくれる?」
「え? あ、はい」
アズールさんがやっても良さそうだけど、スキル経験値のためにってことかな?
せっかく取得したのにあんまり使ってなかったし、ちょっと思い出しながら魔法解析を行う。
無事(?)、魔法解析スキルのレベルも4に上がったので改めて鑑定。
【転送魔法陣(受領専用)】
『MPを注ぐことで乗っている無生物を、対となる転送魔法陣から受け取る。
ただし、魔法陣の上に障害物などがある時は安全の問題があるため発動しない。
個体番号:EB37F548-1457-449E-BA2F-365FA19A026D。
<解析結果>
構成魔法:測位、その他不明。
現在の指定空間の固有識別番号:250D345D-6566-47E3-9458-A30705F3E425』
「えっと、転送魔法陣ですけど、受け取り専用っぽいですね」
「ふむふむ。じゃ、送る側がどこか別の場所にあるんだろうね。多分、この塔の地下かな?」
送られてきたインゴットを使って、ここで製品を作ってって感じの場所っぽいなあ。
魔導鋼が送られてきたってことは……魔導具を作る施設?
「兄上。考察は後でよかろう。残りの部屋を確認しようぞ」
「そうね」
「おっけ。じゃ、さくっと次行きますよ?」
「いいよー」
今日はこのフロアを全部見ておきたいところだけど、ちょっと時間足りないかなあ。
………
……
…
最初の通路の左右は全て同じような鍛治作業場。
突き当たりの扉を開けると、左右へと繋がる通路と、上下への階段があった。
「「バウ」」
レダとロイが素早く左右の通路に警戒に出てくれる。
で、俺とルピは階段へと近づくんだけど……
「なんか、非常階段っぽいな」
「実際、転移エレベータでの移動がメインであろうからのう」
「でも、1階の通路じゃない場所へはここから行けそうね」
ベル部長がセスの後ろから下りの階段を覗き込んでいる。
通路と同じようにあかりに照らされていて、しばらく降りた先に踊り場があって、反対へと折れて続いている。
「どうしますか?」
「うーん。先にこのフロアの他の場所を探索でいいですか?」
一応というか、ゲストに確認をとってみると、
「うん、いいよー。あ、今日で終わりって話じゃないよね?」
「はい。もちろん」
予定としては、明日火曜日はまた同じ時間に。水曜日はベル部長のライブがあるのでお休みにして、木曜にまたの予定。
「では兄上、どちらに進む?」
「どっちでも同じな気がするし、右から行こうか。ぐるっと周りつつ、フロア全体を埋める感じで」
「そうね。このフロアの構成がわかれば、他のフロアもどういう感じか想像もつくでしょうし」
という感じで異論無し。
「念の為に僕が最後尾にいることにするよ」
「助かります」
そんな感じでストーンゴーレムを倒しつつ、部屋を確認して回ったんだけど、どこも同じような鍛治の作業場だった。
受け取り専用の転送魔法陣があるのも同じで、非常用魔晶石にマナを補充するとインゴットが転送されてくるのも同じ。
「この階は、全体的に鍛治のためのフロアということかしらね」
「みたいですね」
この階が鍛治の作業場メインって感じなら、下に炉がありそうなんだよな。だとすると、やっぱり上がどうなのか気になるところ。
「ふむ。続けて上か下かへ行きたいところではあるが……」
「そろそろ時間ですね」
ミオンが言うように、時間は10時半をまわったところ。
合宿で夜更かしはお約束な気もするけど、明日は泳ぎに行くことになってるし、早めに寝ないとだよな……
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