第445話 合宿本番?

 まずはお互い顔合わせ……主にうちの島の子たちとだけど、ってことで、古代遺跡と島を繋ぐ通路の階段に座る。

 定番のとろとろ干しパプをおやつに出したところ、スウィーとセスがそれを奪い合い……


「〜〜〜♪」


「うむうむ」


 することなく、半分こして食べていた。妙に仲が良いように見えるのは、俺の気のせいじゃないはず。

 その一方で、シャルがベル部長の前に片膝をついて、


「ニャ。ニャニャ」


「え?」


「えーっと、死霊都市ではお世話になりましたって」


 同胞を助けていただいた恩義を返したいのですが、今は翡翠の女神に仕える身ゆえ……みたいな。

 騎士っていうか侍っぽいんだけど、そう言ってる間もベル部長が頭を撫でてるんだよな。


「リュ?」


「パーンは初めてですよね」


「ええ、よろしくね」


「リュ〜♪」


 嬉しそうにベル部長やセスと握手する。

 パーンは本当に人見知りしないし、誰とでもすぐ仲良くなれるタイプだよな。

 ルピやレダ、ロイ、ラズたちとも一通り顔合わせという名のもふもふタイムをして、さて……の前に、


「アズールさん、依頼の抽選も無事終わったって聞いてますけど、そのあとに困ったこととか起きてないです?」


「ううん、全然。当選した人たちも、みんなちゃんとしてたしね」


 とのこと。アズールさんは真贋スキル持ちだし、その辺もちゃんとチェックしてるんだろう。

 抽選会自体は、今日の飛行機の中でベル部長から話は聞いていて、一喜一憂の大盛り上がりだったらしい。

 楽譜集4巻の依頼をマスターシェフさんの知り合いが当てたとか、水晶鉱石の依頼はナットの知り合いの『月夜の宴』のプレイヤーが当てたとか。


「そうそう、もう納品されてるものがあるんだけど」


「あ……」


 楽譜集の依頼はもう1、3、4、5、8と納品されているらしい。

 いや、それはもう予想されてたし、想定の範囲内。報酬のワイン中樽はすでに渡してあるので、納品された物は明日持ってきてくれると。

 それだけでなく、紫鋼鉱石5箱も納品済みだそうで、俺から報酬の魔銀ミスリルインゴット待ちって状態……


「うわ、すいません。今度持ってきます」


 魔銀ミスリルインゴットは余ってるので、忘れないようにしないと。


「おっけー。納品した人たちは、報酬は急がないって言ってくれてるから」


「了解です」


 水晶鉱石もすぐに集まる気がするし、木彫りのルピも早めに仕上げないとだよな。合宿から戻った土日で終わらせよう。


「じゃ、そろそろ行かない?」


「あ、はい」


 と、その前にベル部長たちにスウィーの方のパーティに入ってもらおう。

 今日は、俺、ミオン、ルピ、レダ、ロイ、ラズのパーティと、スウィー、シャル、パーンのパーティのアライアンスにしてある。

 アズールさんとベル部長、セスはスウィーの方に入ってもらえばちょうどいいかなと。


「〜〜〜♪」


「よろしくー」


「よろしくね」


「よろしくの」


 順番にスウィーとタッチして、無事、パーティ加入完了。


「「は!?」」


「?」


「どうかしました?」


 ベル部長もセスも何か驚いてるんだけど、


「フェアリーの女王の加護というのがついているのだけど?」


「「あ」」


 そういうのは後で説明します……


 ………

 ……

 …


「ふむ。魔術士の塔は1階から入り組んでおったが、ここは通路だけのようだの」


「フロアの大きさはかなりありそうだし、上の階から降りて来れるのかしらね?」


「それはあるかもねえ」


 セス、ベル部長、アズールさんが真面目な考察をしている。俺、何も考えずに歩いてたな……

 ほどなくして、転移エレベータ前に到着。


「兄上は地下10階から来たのだな?」


「うん。で、今日はどうする? 上? 下?」


「制御室を探すのであれば、まずは上であろうが……」


 とアズールさんに全員の視線が。


「あ、僕は中が見れたらなんでも。この島自体を僕とショウ君の信頼できる人で管理できてれば、姫様も問題なしって言ってたからね」


 その返答に、今度は視線が俺に集まる。

 なんで俺って気もするけど、誰かが決めないと進まなさそうだしなあ。


「じゃ、上で。まずは一つ上の階を見てみましょうか」


 ということで、転移エレベータに全員で乗る。

 例のアナウンスを一応聞いてから、△2のボタンを……


「待て待て、兄上。ミオン殿、加護をもらえるか?」


「ぁ、はぃ」


「そうだった。すまん……」


 ミオンの加護がしっかりと全員に掛かったところで、セスが扉の前に立つ。準備オッケーの合図が来たのでボタンをポチッと。

 転移エレベータでの移動はみんな慣れてるからか、特に驚くこともなく2階へと到着し、チーンという音と共に扉が開く。


「ふむ。誰もおらんようだな」


 構えていた大盾を下ろすセス。

 そのままエレベータを出ると、すぐにルピたちも続いて、あたりを確認してくれる。

 感知共有をかけてみたけど、特に何かって感じはないか。


「エレベーターホールのようね」


「魔術士の塔もこんな感じでしたっけ」


「ええ、そうね。あっちはもう少し、塔自体が小さいというか細かったのだけれど」


「へー、そっちも興味あるんだよねー」


 で、見た感じまっすぐと左右に道が続いていて、左右は多分エレベーターの裏側へと繋がってるんだろうなと。


「どうしますか?」


「悩んでてもしょうがないし、まっすぐ行こうか」


「うむ。では、ルピ殿」


「ワフ」


 セスの意を汲んで、少し先を警戒しつつ歩き出すルピ。賢い。

 通路の幅は結構あるけど、レダとロイも並ぶスペースはないので、後ろを見てもらうことに。

 しばらく進むと、地下10階と同じように曲がっていて……


「ん。セス、ちょっと待ってろ」


「うむ」


 ルピが俺をちらっと見るのは敵がいる合図。

 隠密をしっかり意識し、ルピも潜伏を発動して、2人でこっそり曲がり角へと。

 で、その先を覗くと……通路の左右にある扉の前にゴーレムが立っている。左右に3部屋ずつの計6部屋と、多分、奥に1部屋かな。


「なんで、7体かな。あ、大きいゴーレムコマンダーっていうのがいたら、そいつは最後にした方がいいです。倒した後に自爆するんで……」


 戻ってきて、みんなに説明。

 人数的には余裕で勝てると思うけど、ゴーレムコマンダーがいて自爆されるのは怖い。


「ふむ。前から順に倒していけば良いのだな」


「自爆するゴーレムはどう対処すればいいのかしら?」


「とにかく、遠くで爆発させるぐらいですかね。俺の時は部屋に入ってやり過ごしましたけど……」


 爆風もそうだけど、ゴーレムの破片が飛んでくるのがやばそうなんだよな。

 セスの大盾でカバーできるのは、良くて2人ぐらいだろうし。


「じゃ、とりあえず手前のを倒した時点で、そこの扉を開けるのはどう?」


「向こうが集まって来なければできそうですけど……」


「いいんじゃない? いざとなったら、僕が押さえ込むし」


 ……この人、こんな感じだけどドラゴンだったな。


「じゃ、手前から釣って行く感じで」


「うむ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る