第444話 全員集合!

「ええ、その方がいいかしらね」


「ふむ。ヤタ先生が良いのであれば、我は構わんぞ」


「いいですよー」


 綺麗な海も見たし、美味しい夕食もいただいて、お風呂から出てきたら、女性陣が何やら話してる模様。


「どうしたの?」


「ん」


 とVRHMDを見せるミオン。

 そして、


「我と部屋を変わって欲しいというのでな。先生も良いというので……」


「おい、待て! そりゃダメだろ!」


「フルダイブの間だけですよー」


 はあ、びっくりした。

 ベル部長や美姫が笑ってるけど、ミオンも不満そうな顔しないで?

 部屋は2つあって、俺と美姫、ミオンとベル部長という振り分けで決まってた。

 ヤタ先生はリビングに簡易ベッドでっていうのが申し訳ないんだけど、本人がそっちの方がいいっていうし。


「ではー、私はここで優希さんと飲んでると思いますのでー、みなさんは楽しんでくださいー」


 ……ヤタ先生、酔っ払ってすぐ横になれるからリビングでいいとか、そういう考えだったりしないよな?


「午後11時にはログアウトで。そのあとここに集合ね。よろし?」


「うむうむ」


「りょっす」


「はぃ」


 ちゃんと合宿ですよという意味でのミーティングをやることになっている。多分、雑談というかIROの話をするだけだろうけど。


「ごゆっくりー」


 ヤタ先生のご機嫌な見送りがあって、それぞれの部屋へと移動。

 各部屋にはPCパーソナルコアが2台ずつ、リビングにも1台あって、それぞれ好きに使えるようになっている。


「そっちが美姫のベッドだから」


「はぃ」


 手前側のベッドに置いてあったVRHMDを被って、ごろんと横になる。

 隣のベッドのミオンをチラッと見ると、目が合ってニッコリされて……やばい。

 さっさとログインしよ……


 ………

 ……

 …


「ぉはよう」


「う、うん。おはよう」


 隣に横になっていたミオンから声をかけられると、やっぱりドキッとするんだよな。

 いつもの寝室で目を覚ますと、待ち構えていたルピが飛びついてくる。


「ワフ!」


「ルピもおはよう。レダとロイを呼んできてくれる?」


「ワフン」


「私はスウィーちゃんとラズ君を呼んできますね」


「うん」


 一応、昨日の夜に話はしてあったので準備万端のはず。まあ、スウィーとラズの場合は準備も何もないと思うけど。

 俺はその間にアズールさんに連絡しないと。


「アズールさん。今、大丈夫ですか?」


『おー、ショウ君、待ってたよ! 行くんだよね?』


「はい、お待たせしました。しばらくすると、前に話してた2人が行きます。転移魔法陣を開けるのは30分後ぐらいになると思うんで、その時また連絡します」


『りょうか〜い』


 連絡よし。

 俺もミオンも向こうへ行く準備は終わっている。

 シャルとパーンは教会で合流の予定なので、あとは……


「〜〜〜♪」「クルル〜♪」


「おっけ。じゃ、行こうか」


 ………

 ……

 …


「ニーナ。しばらく留守にするから、いつもの知らない人は通さないやつでお願い」


[はい。了解しました]


 さて、忘れ物はないよな。

 死霊都市へとつながる転移魔法陣はインベントリに入れたし。

 南の島へとつながる転移魔法陣の蓋をどけて、出発準備オッケー。


「じゃ、乗って乗って」


「はぃ」


「ワフ」「「バウ」」「クルル〜」「〜〜〜♪」「リュ」「ニャ!」


 転移魔法陣が狭いので、全員が収まるようにみっちりと乗る。

 ミオンが密着しすぎな気がするんだけど……さっさと転移してしまおう。

 MPを注ぐと足元から淡い光が溢れ出し、やがて俺たち全体を包み込み……


「よし」


「ワフ」「「バウ!」」


 すかさず警戒に出てくれるルピたち。

 そういえば、扉の向こうのゴーレムって復活してるかも?

 前に来た時の帰りはいなかったけど、あれから時間も経ってるしなあ。


「ミオン、お願い」


「はぃ。加護を」


「さんきゅ。パーンは隣で。シャルはミオンとスウィーをお願いね」


「リュ!」「ニャ!」


 パーンのクワはゴーレム特効だったので、戦闘になったらフォローしてもらおう。

 みんながしっかり配置が取れたことを確認し、扉を開けると……


「あ、いなかった」


「よかったです」


 とはいえ、油断は禁物なので、そのまま警戒しつつ前進。

 結局、敵は出ないまま転移エレベータに到着した。


「一度倒しちゃうと出ないのかな? ってことは、インスタンスじゃないのか」


「ぁ」


「まあ、その方が楽でいいけどね」


 そんな話をしつつ、全員が乗ったところで1階へと。

 一応、1階も警戒しつつ進んだけど、特に会敵することもなく外へ出た。


「ショウ君。魔法陣はどこへ置くんですか?」


「まだ決めたわけじゃないけど、とりあえず、この出たところの広場に置こうかなって」


 南の島だって話をしてるわけだし、いろいろ説明しやすそうだし。

 ルピたちが四方に散って様子を見に行ってくれたけど、ここにモンスターが出てくることもなさそうだし。


「ミオン。この辺でいいから、適当に置く場所決めちゃって」


「はぃ」


 そっちは任せて、俺はギルドカードを準備。

 メニューを開いてみると、行く前に連絡してから20分ぐらいしか経ってないし、じっくり選んでもらおう。


「ワフ」「「バウ」」


「ありがと。この辺は安全っぽいし、レダもロイもそんなに気を張らなくて大丈夫だよ」


 ルピたちを順番に撫でつつ、ミオンとスウィーの様子を見守る。

 しばらくすると、こっちを向いて手招きしてきたので、みんなでそっちへと移動する。


「ここでいい?」


「はぃ。向こうに見える景色が綺麗なんです」


「お? おお、すごい!」


 島の東側、ちょうど「C」の右側に当たる部分で、南国の海がずっと遠くの水平線まで見える。

 ……なんか、今日、リアルで見たばっかりな気もするけど、それはそれ、これはこれということにしよう。


「こんなもんかな」


「はぃ」


 雨降ったらどうしようってところでもあるんだけど、まあ、今後の運用に関してはベル部長とセスに任せればいいや。

 転移魔法陣を設置して、少し下がったところで待機。目の前に誰かいるとびっくりすると思うので。

 で、連絡連絡……


「アズールさん?」


『お! 行っていいんだよね!』


「はい。設置終わったんで」


『じゃ、行くね!』


 どんだけ楽しみにしてたんだよっていう……ってか、ベル部長とセスは合流できたのかな?

 そんなことを考えてると、すぐに転移魔法陣が光り始め、現れたのはアズールさんとベル部長。


「やあ、ショウ君! 呼んでくれてありがとう!」


「いえいえ。こっちこそ、遅くなってすいません」


 そんな社交辞令(?)を交わしている間に、ミオンとベル部長も手を取り合って喜んでいる。


「セスちゃんは来られないんですか?」


「しばらくしたら来るわよ。セスちゃんが大盾を持ってるのだけれど、それで転移魔法陣を1人でしか使えなくて」


 ああ、なるほど。

 インベントリに入れたら、その分、持って来れるポーションとか減るもんな……

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