第428話 島と本土の価値観の差

 俺にはさっぱり把握できなかったんだけど、ミオンとヤタ先生の方でざっくりと集計してくれたらしく、それを読み上げてもらうことになった。


『では、多かったアイデアから順に挙げていきますね』


「さんきゅ」


 1位 翡翠の女神像(素材種類問わず)

 2位 ルピやスウィーの木彫りの像セット

 3位 島の食材詰め合わせ、俺が作った武器か防具

 ……


<3位はほとんど同数でしたのでー>


 とヤタ先生からのフォローが。今も追加でコメント欄に流れててキリがないもんな。


「りょ。えーっと、ごめんなさい。翡翠の女神像は……報酬とか取り引きはしたくないので」


 その言葉に視聴者さんも納得してくれたみたいでホッとする。で、


「それ以外の、武器か防具は魔銀ミスリルを使うってことで納得なんですけど、ルピの木彫りの像とか島の食材とかって安すぎません?」


 と率直な感想を言ってみたら、


【リラクサ】「ファンアイテムだからいいのよ?」

【フェル】「食材はやべーのしかねーから!w」

【ミイ】「木彫りの像、欲しいです……」

【ワサンコ】「簡単な依頼も増やそう」

 etcetc...


 食材の中でもフェアリーたちが集めた花の蜜、セルキーが絞ったオリーブオイル、ウリシュクが育てたコハク(小麦)の価値がめちゃくちゃ高いらしい。

 さっきのパンもそうだったのは確かだけど、釣り合うって気があんまりしないんだよなあ。


「じゃあ、食材なら量は多めで、ルピやスウィーの木彫りはトゥルーやパーンも加えてでどうかな?」


『はい! あ、転売はしないでくださいね?』


「まあ、どうしてもってこともあると思うから」


 武器とか防具とかは、良いものに更新するだろうし、そうなった時に古いのは売るかするだろうし。


『今のところは他に依頼はない感じでしょうか?』


「考え中かな。探してるものはあるし、お米、ハクだっけ? やっぱり味噌、醤油、みりんが欲しいし。ただ、島の探索がまだ残ってるし、そこにあるかもだから」


『島にないことがわかったら、ですね』


 その認識を視聴者さんたちにも共有しておいてもらおうかなと。

 ただまあ、その話をすると当然、


【シェケナ】「北端にあった塔はいつ行くの?」

【ウメーズン】「島の北側はぼちぼち?」

【ヤアー】「慌てんでもええやんねえ」

【マジプ】「未踏地域ってあとどれくらい?」

 etcetc...


 って話になるよなあ。


「とりあえず、夏の間に北側はまわりたいと思ってるんですけど、ちょっと装備が貧弱かなって」


 一番良くしたいのは剣鉈。次に鎧かな。

 細かいアクセ類は何を作ればどう良くなるかはわからないし、今以上のものを作れる気はあんまりしないし。


「まあ、そんな感じなんで、気長に待ってもらえると」


『ですね』


【シュートン】「オッケーオッケー」

【チョコル】「準備、超重要だもんね」

【ザフー】「ショウ君が新武器を作ると聞いて」

【ジャズゥ】「またやべーやつできそうな予感……」

 etcetc...


 特殊剣の範囲がどれくらいなのかもあるし、ちょっといろいろ調べないとなんだよな。

 あ、そう言えば、


「普通の鉄より固くて重い鉱石ってあります?」


 視聴者さんに質問を投げてみたところ、結構いろいろあるみたいで参考になる。

 で、前に錬金術の本にも書いてあった、紫鋼しこう鉱石という名前が……


『紫鋼鉱石は島では掘れませんよね?』


「だね。そういう鉱石も依頼に出していいのかも」


 紫鋼鉱石は魔銀ミスリルよりもまあまあ取れるらしい。

 鉄よりも固くて、1.2倍ぐらい重いとのこと。理想的なんだよな。


「もうちょっと錬金術スキルも上げたいとこなんだけどなあ」


【ナタイ】「は?」

【アシリーフ】「錬金術取れたの!?」

【ティージョン】「まーたやらかしてるー」

【ディソル】「詳しく!」

 etcetc...


 ……あれ?


『ショウ君。説明をお願いします』


「あ、えっと、前提が採掘Lv5と鍛治Lv5だったかな。あと、錬金術関連書籍の所持だったかな」


 前提スキルは全然足りてる人がいるんだけど、関連書籍が見つからないらしい。

 俺がもらった基礎錬金術の本って、実は竜の都のアップデートが来ないと手に入らないやつなのでは……


「うーん、うちにある本が本土の皆さんにもまわるといいんだけど」


『一冊ということはないと思うので、あまりがないか聞いてみるのはどうですか?』


「なるほど」


【サーコ】「いやいや、無理せんでええよ?」

【ルタイバ】「クエスト報酬に入れて!」

【アマツノユ】「無償でもらうのはなんか違うよ〜o(`ω´ )o」

【シデンカイ】「こっちにある本と交換は?」

 etcetc...


 あー、本の交換はいいかも。

 音楽の本だっけ? なんかナンバリングで何冊かあるやつ集めたいし。

 なので、本土にある本の調達を依頼してもいいんじゃないかって話を。


『あ、そろそろ時間です』


「りょ。じゃ、歌って終わりでいいかな?」


『はい!』


 俺が笛を取り出すと、スウィーたちがわあっと集まってくる。

 ラズたちカーバンクルは机の上に整列。持ってるオーカーナッツのサイズが少しずつ違って、その差で音色の違いを出すっぽい?

 ルピたち、パーンたち、シャルたちも種族ごとに集まって、なんだか気分はオーケストラっぽく……


【古代童謡<お昼寝の時間>が選曲されました】


 新曲だけど、タイトルから推測するにスローテンポな曲のはず。

 俺にできるのはミスらないように、だな……


 ………

 ……

 …


<終わりましたよー。お疲れ様でしたー>


『お疲れ様でした』


「うん。お疲れ」


 曲がスローだったからか、歌ったミオンもテンションは普通。

 というか、歌い終わった後にルピたちはそのままお昼寝モードに。

 まあ、起こすのもなんだし、ログアウトする時間まではのんびりでいいかな。


「あ、そうだ。ヤタ先生に質問があるんですけど」


<なんでしょー?>


「合宿中もライブはやるんですよね?」


 次の土曜はいつも通りだけど、その次の水曜はもう合宿中のはず。

 向こうでもゲームできるとは聞いてるし、配信もやるんだろうとは思うけど一応。


<もちろんですよー>


『向こうにも配信もできる環境があるんですね』


<ですですー>


 ベル部長の叔父さんが経営してる民宿らしいけど、結構な設備が整ってるだとか。


「すごいっすね。趣味にしてはお金かかりそうですけど……」


<仕事のためでもあるそうですよー。スキューバに来たのに台風が来ちゃったりとかした時のためだそうですー>


「すげえ……」


 そういう時はバーチャルで体験(?)してもらうってことか。

 天気のいい日のダイビングで海中の様子を録画して、ソフトに取り込んで更新とかしてるそうで、なるほどなあと。


「うーん、やってみたいかも」


『え? リアルの方ですか?』


「まあ、浅いところだけ? トゥルーたちが泳いでるのとか見るとね」


 そういえば、セルキーたちってどれくらい潜るんだろう?

 やっぱりアザラシと同じぐらいなのかな……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る