第426話 お互い助け合って

 本の整理をしていた書斎を出ると、玄関ホールに3人のギリー・ドゥーが。

 前にあった子とは違うかな? 少し背が高い気がするし。


「えーっと、どういうことか説明してくれる?」


「リュ」


 彼らをここまで案内してくれたらしいパーンに聞いてみると、どうやら水路近くで畑作業をしていたところに現れたらしい。

 で、一緒に作業してたミオンを見て、翡翠の女神様だーって……


「あー」


 俺の反応に不思議そうな顔をしてる女神様、もとい、ミオンに説明。


「ぁぅ……」


「いや、俺のせいなところもあるから」


 俺がパーンたちに翡翠の女神様が遊びに来てるって言っちゃったし余計にだよなあ。


『ゲーム内の翡翠の女神のイメージがー、ミオンさんで適用されちゃってるんでしょうかねー』


 スウィーたちが初めてミオンを見た時もそうだったけど、ミオン=翡翠の女神ってなっちゃってるっぽいし、ゲーム全体に適用されてる気がする。

 なんか「それっていいの?」って感じだけど、反応しないのもおかしいし……深く考えてもしょうがないか。

 で、当然、


「〜〜〜♪」


「やっぱりそうなるよな」


「ショウ君?」


「島民になりたいって」


 スウィーにパーン、シャルもいたし、俺たちのことを説明して勧誘したらしい。

 俺としては全然オッケーだし、これから先のことを考えると、あの森を案内してもらえるだけでも嬉しい。


「ニャ。ニャニャ〜」


「え? 仕事? 裁縫できるの?」


「お裁縫ですか?」


 シャルの話だと、ギリー・ドゥーたちは裁縫が得意。草木から繊維を取り出して紐や糸にできる特技があるんだとか。

 着てる木の葉の服も自分たちで作ったものらしい。


「すごいです!」


「だとすると、こっちからも何か出さないとかな。お仕事してもらう分、報酬はちゃんと出さないと」


「そうですね」


「リュ〜!」「ニャ!」


 パーンが野菜はまだまだたくさん作れるよと宣言。続いてシャルも兎狩りを手伝えると手を挙げてくれる。

 トゥルーのところから干物を持ってくるのもあるし……って、そもそもギリー・ドゥーって何人いるんだろ?


「えーっと、全員で何人いるのかな? ここにいる3人だけじゃないよね? あと、あの森に住んでるって聞いたけど、そのあたりのこととか教えて欲しい」


「ニャニャ」


「ゥゥ」


 シャルが通訳して、ギリー・ドゥーに質問。あれやこれやと聞き出してくれているのをまとめると、

 ・全員で33人。11人一組の3グループ。

 ・水路の向こうの森をそれぞれのグループが分担して管理している。

 ・モンスターは出るけど、森の奥、湖のほとりに大きな神樹があって安全。

 こんな感じらしい。

 森の奥、湖がすごく気になるけど……


「30人ぐらいなら野菜とかは大丈夫だよね?」


「リュ!」


 どんと胸を叩くパーンが頼もしい。現状、畑の作物は取れすぎてどうしような部分もあるし。

 ちなみにギリー・ドゥーたちは普通に肉も野菜も食べるとのこと。普段は木の上を移動して、地上のバイコビットとかを狩るらしい。


「おお、すごい。木の上からってことは弓矢とか使うの?」


「ニャ?」


「ゥゥゥ」


 リーダーの1人が見せてくれたのは50cm弱の細い木の筒? ああ!


「吹き矢!」


「え?」


 ミオンが全然わからないけど当然だよなと。

 どういう武器かを簡単に説明。実際に使ってるところを見てもらうのが早いんだろうけど、ここで試すのはちょっと危ないかな?


「〜〜〜?」


「あ、そうだった。島民になってくれるのは歓迎だよ。もし、困ってることがあったら、出来るだけの手助けはするから遠慮なく言ってね?」


 通訳してくれたスウィーの言葉にうんうんと頷くギリー・ドゥーの3人。

 じゃあ、あとは名前かな?


「えーっと、ミオン?」


「はい。クロちゃん、ラケちゃん、アトちゃんでどうでしょう?」


「おけ。じゃ、クロ、ラケ、アト。よろしくね」


 それぞれと握手。

 俺に続いてミオンとも握手してるけど、そっちの感激度がすごいことに……


【ギリー・ドゥーの守護者:3SPを獲得しました】


 守護者の称号を獲得したので島民数をチェック。しっかり151人になっている。


「名前の由来って何か聞いていい?」


『ギリシャ神話の運命の三女神でしょうかー』


「はぃ」


 ミオン曰く、ギリシャ神話の三姉妹の女神。クロートー、ラケシス、アトロポスから名前をもらったとのこと。

 ヤタ先生の解説だと、運命の糸を紡ぐ女神だそうで。裁縫が得意だって話とも絡めてて……ん?


「えーっと……3人とも女の子?」


「そうですよ」


『ショウ君らしいですねー』


 ニッコリのミオンと、やや呆れた声のヤタ先生。

 全然気づかなかった俺って……


「リュ〜リュ?」


「ゥゥ、ゥゥ」


 落ち込んでる俺をよそに、クロとパーンが現実的な話をしている。

 特に水路に水車小屋を作る話とか、いろいろあって手付かずだったんだけど、


「あ、うん。クロたちも問題ないなら作ろうか」


「リュ!」


 パーンがめっちゃ乗り気で申し訳ない……

 小屋を作るのは問題なさそうだけど、水車の方は俺がやらないとかな。

 水を汲み上げるような複雑なのじゃないけど、まずは小さいのでちゃんと回るか確かめないと……


「ゥゥ?」


「リュ〜」


 で、どうやらクロたちはフロスコットンが気になってるらしい。あれを糸にして、布にして、衣類とかにしてくれるのはすごく嬉しい。


「ニャ?」


「あー、ごめん。せっかくシャルたちに刈ってもらったエクリューの毛も、加工できないままなんだよ」


「ニャ〜ニャ」


 気にしないでとシャル。

 せっかくもらったのに、加工する暇もなくて申し訳ない感じが。っていうか、どれもこれも俺がやれてなくて止めちゃってるっていう。


『ショウ君のやることが多すぎですしー、ミオンさんに頼めるところはー、頼んじゃった方がいいと思いますよー』


「任せてもらえますか?」


「じゃあ、裁縫関連は任せちゃっていい? クロたちと一緒に作ったりとかも楽しいだろうし」


「はぃ!」


 まずはミオンのためのローブをエクリューの毛で作ってもらうのがいいのかな?

 あとはみんなのためのバンダナを作ってもらうとか、家の中にクッションとか置くのもそれっぽいし。


「そういえば、亜魔布も余ってましたよね?」


「あ、はい……」

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