第418話 指輪と管理者権限

 さっそくミオンをパーティに加え、スキルの話の前にステータスを見せてもらったんだけど、初期状態で【鑑定】【解体】【採集】が習得済みになっていた。

 それでいて初期SPが19あって、かつ、無人島スタート褒賞で30SPが足されて49SP余ってるという状態。


「いいんでしょうか?」


「やっといてなんだけど、かなり抜け道っぽいし、問い合わせに投げとこうか。それで修正入ってSP減っちゃうかもだけど……いい?」


「はぃ。ショウ君がそばにいてくれますし……」


 ということで、初期で普通にもらってる19SPを何に使うかを、おやつを食べながら相談。結果、ミオンのステータスはこんな感じになった。


――――――――――――――――――――

Name:ミオン Lv.1

HP:110 MP:172


STR:10 DEX:12 AGI:10

INT:16 VIT:10 LUK:12


鑑定:1 解体:1 採集:1 料理:1

調薬:1 裁縫:1 農耕:1 園芸:1

畜産:1 演奏:1 元素魔法:1


残りSP:43 残りBP:0

――――――――――――――――――――


「あとは精霊魔法、神聖魔法がアンコモンで4SPずつ。それで残りSPが35だし、無人島スタートの褒賞が無しになっても大丈夫かな?」


 とろとろ干しパプを食べながら、うんうんと頷いてくれるミオン。

 スウィーと取り合いになって……はないな。仲良くしてくれてるようで一安心。


「樹の精霊石はスウィーの方で用意してくれる?」


「〜〜〜♪」


 任せてとサムズアップしてくれるスウィー。頼もしい。

 光、水、火の精霊石は俺でも用意できるからオッケーだし、どっちかというと見つけてない土とか風の精霊石をどうにかしないとだよな。


「あとは服だけど……翡翠の女神の衣装は作るとしても、普段着がそれってわけにもいかないし」


「私はこのままでも……」


「今はいいけど、MP回復が遅いと大変だからね」


 亜魔布はまだ余ってるし、あれでローブとか作るのがいいかな?

 あ、エクリューの毛もまだちゃんと使えてないし、そっちを使うのでもいいか。ベル部長のローブがそうだったはずだし。

 って、MP回復すごいのがもう一つあったな……


「……ミオン、左手いい?」


「?」


 この間の時みたいにグローブを外すのと一緒に、蒼月の指輪も外す。

 差し出された左手、その薬指にそれを……


「と! とりあえず! ね?」


「はぃ!」


「〜〜〜♪」


 スウィーがミオンの肩に乗って、ほっぺたをつんつんと……なんていうか「このこの〜♪」って感じ?

 嬉しそうにしてくれて良かった。これで拒否されてたら、夏休みずっと寝込んでた気がする……


「じゃ、そろそろ島に、家に帰ろうか」


「はぃ」


 時間は午後10時を回ったし、他の妖精たちとの顔合わせは明日以降だな。

 二人になったし、屋敷への引っ越しも急がないと……


 ………

 ……

 …


 南の島の他の階層も気になるところだけど、それはまた後日ってことで、島に戻ってきた。

 使った転移魔法陣に蓋をしつつ、ニーナにいなかった間のことを、


「ニーナ、ただいま。異常は無かった?」


[警告。管理者権限の認証に失敗したため警戒状態へと移行しました。72時間以内に解消されない場合は保全状態へと移行します]


「え?」


 管理者権限の認証ってなんで?


「ぁ、あの、私が指輪をもらったから……」


「あー! ……ごめん」


「ぃえ」


 うなだれる俺の左手に蒼月の指輪を付け直してくれるミオン。

 いろんな意味でガッカリなんだけど、


[認証成功。通常状態へと復帰しました]


 とりあえずニーナは元通りになった模様。


「ホントごめん! 蒼星の指輪があるから、あとでそっち渡すよ」


「はぃ」


 管理者権限については、後でニーナに説明してもらう機会を設けよう。

 蒼星の指輪をミオンがつけることで、ニーナに指示が出せるようになるかもだし。


「えっと、ニーナ。新しく島に住むことになるミオンね」


[はい。了解しました]


 これでオッケーかな?

 あ、いや、待て。メニューを開いて……


「島民増えてない」


「ぁ……」


 これはベル部長が言ってた、本土の人が島でログアウトしても、次のログイン時は元の場所に出ちゃうってやつ? うーん……


「ラムネさんは建国宣言してるから、国民にすればいいんだろうけど、うちはしてないからなあ」


「マイホーム?」


「なるほど。まずはそれを試そうか」


 さくっと山小屋へ戻ろうかと思ったんだけど、


「ワフ」


「「え?」」


 ルピが吠え、レダとロイたちも見つめる方向は、竜の都に繋がる転移魔法陣。

 それが淡い光を放ち始め、消えた後に現れたのは、


「ああ、アージェンタさん」


「ショウ様! いつもお世話になっております」


 俺たちのところまで走ってきたアージェンタさんが、いつも通り丁寧な挨拶をくれる。

 で、やっぱり俺のそばにピッタリくっついて、パーンやシャルに守られてるミオンが気になってるようで、


「……そちらのお方は?」


「えーっと、この島に住むことになるミオンです」


「ょ、よろしくお願いします」


「こちらこそ、よろしくお願いします」


 ニッコリ微笑んで頭を下げるアージェンタさん。

 ミオンが翡翠の女神にそっくりなのは、気づいてないわけじゃないだろうし、スルーしてくれてるんだろうか。


「っと、すいません。ついさっきまで、彼女を例の南の島に迎えにいってて……」


「なるほど。アズールはお役に立ちませんでしたでしょうか?」


「いえいえ! アズールさんにはちゃんと下見してもらいましたし! で、報告したいこともあるので山小屋の方へ来ませんか?」


 殺風景なここで詳しい状況を立ち話も微妙だろう。

 ミオンもうんうんと頷いてるのを見て、アージェンタさんも納得した様子。


「では、少々お邪魔させていただきます」


 ………

 ……

 …


 向こうの島とそこにある古代遺跡についてざっくり話した。

 古代遺跡っていうか、採掘プラントっぽい感じの塔は、地上10階、地下30階にもなることや、ゴーレムが自爆したこともついでに。


「ショウ様。そちらの古代遺跡の管理者になるおつもりはありませんか?」


「え……。うーん、今はちょっとそこまで考えられないですね。ずっといられるわけでもないんで」


 そもそも、制御室がどこなのかも全然だし。


「承知しました。そのことは他のどなたかには?」


「今はまだ誰にも。一応、前の交流会の時に紹介した人とかには話すつもりです」


 ベル部長、セスには話すつもりだったし、隠し通すのも無理がある。

 ミオンがいることは秘密にしてもらうけど、島の存在自体はバレてもいいかなと。

 アージェンタさん的にも特に問題はないとのこと。今は行く方法がないもんな。


「あとピアノの話も聞いたので、ギルドを作ろうかと思ってます。それで死霊都市の方に出張所をと思ってるんですが」


「はい。我々の方で信頼できる人物を選び担当させましょう。さしあたり、アズールで問題ないでしょうか?」


「ええ、助かります」

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