第416話 裏口からお邪魔してました

【祝福を受けし者のアクセスを確認しました。最上位管理者権限を確認しました。解錠しますか?】


 扉の取手に手を添えると、権限確認と問いかけが聞こえたので「はい」と答える。

 皆の方を向いて目で伝えると、しっかりと頷いて返してくれた。頼もしい。

 そっと扉を押し開けた先も明るく……


「っ!」


 通路の先、数メートルのところに天井ギリギリまである大きなストーンゴーレム……の背中が見えた。

 さらにその先には人間サイズのストーンゴーレムが数体、二列に並んでいる。


『いったん戻った方が!』


 ミオンの言葉に反応したわけじゃないと思うけど、ゆっくりとこちらに向き直るゴーレムたち。

 一番近い、大きなゴーレムのネームプレートには赤く【ストーンゴーレムコマンダー】と表示されていて、どう考えても俺たちが不法侵入者扱いなんだろう。


「ここで迎え撃つけどいい?」


「ワフ!」「リュ!」「ニャ!」


 ルピを筆頭に賛成してくれるみんな。俺のわがままに付き合ってくれて嬉しい。

 突破しないとミオンを迎えに行けないだろうし、戻っても解決しない以上、今ここで倒す。

 俺がでかいやつを引き受けている間に、他のメンバーで周りの雑魚ゴーレムを排除できれば一番なんだけど……


「〜〜〜!」


「リュ!」「ニャ!」


「助かるよ!」


 スウィーが俺の想定を察してくれたのか、布陣を指示してくれる。

 俺とルピが正面。右側にレダ、シャル。左側にはロイ、パーン。ラズとスウィーが後方で援護。


「よっと」


 近づいてきたコマンダーの大きな振り下ろし攻撃を避ける。当たれば痛いだろうけど、よく見てれば食うことはないかな?

 となると……


「ニャン」


 シャルの細剣レイピアがストーンゴーレムのパンチを綺麗にいなし、


「バウ!」


 すかさずレダがゴーレムの足を払って倒す。


「クル!」


 ラズの額の宝石が光ったかと思うと、シャルの細剣レイピアの先端が赤く光り、


「ニャッ!」


 ゴーレムの延髄へと振り下ろされて突き刺さった。

 動きが止まったところを見ると、あそこが急所っぽい?

 で、パーンの方はというと、


「え?」


 なんか既に倒したゴーレム……の残骸のようなものが転がっている。

 戦い方はシャルたちと同じっぽい? ロイが牽制してヘイトを取ったところに、すかさずパーンが鍬を振り下ろすんだけど、


「リュ!」


 石でできてるはずの体が畑の土のように耕され、抉られた肩から腕が外れたように落ちた。


「すご……」


『ショウ君!』


「あぶねっ!」


「〜〜〜!」


 大きく横なぎに振られた腕を避けたところで、よそ見するなってスウィーに怒られた。

 シャルもパーンも大丈夫そうというか、俺もちょっと頑張らないと。

 コマンダーの二の腕に剣鉈を、


「<加重>!」


 ガギンという硬質な音と共に、右腕全体に痺れるような感覚が返ってくる。

 やっぱりというか、剣鉈で石の塊を殴るのは無理があるよな。


「ガウッ!」


 同様にルピのクラッシュクローが膝を直撃したんだけど、ちょっとぐらついたぐらいで効いてないっぽい。


「〜〜〜!」


「了解」「ワフ」


 スウィーから無理しないようにとの指令が。

 パーンが強いおかげで、雑魚ゴーレムはしばらく待てば殲滅し終わると。


「リュリュ〜!」「バウ!」


 って終わったらしい。早すぎる!

 で、さっそく左側から攻撃する機会を窺ってくれている。


「ニャニャ!」「バウ!」


 って、シャルの方も終わってるし強すぎない? うちの島の住人たち。


「〜〜〜?」


「りょ。やってみるよ」


 コマンダーの足を止めたいので、一発なんとか受け止めてとスウィーからオーダーが。かなり重そうな一発だろうけど、ちょうど試せることがある。


「行くよ! ……<固定>!」


 振り下ろされた拳を、円盾で受ける瞬間に空間魔法の固定を発動させる。


『ショウ君!?』


「大丈夫!」


 めっちゃMP消費した気がするけど、一度止めてしまえば、それ以上は消費しないか。


「〜〜〜!」


「リュ!」「ニャ!」


 パーンの鍬が右足を耕して壊し、シャルの細剣が左足の膝裏に突き刺さると、バランスを崩したコマンダーはそのまま腰砕けになって崩れ落ちる。


「ラズ!」


「クルル!」


 ラズの魔法(?)で赤く光る剣鉈をコマンダーの延髄へ……


「<急所攻撃>!」


 ビビ……、ビーガガガー……


「え? 何これ……」


 なんか変な音が鳴り始めてびっくりなんだけど、動きは完全に止まったし、倒せたでいいのかな?


『ショウ君。鑑定を』


「あ、そうだね」


 倒れたコマンダーをスウィーと覗き込む。


【ストーンゴーレムコマンダー:自爆まであと43秒】

『配下のストーンゴーレムに戦闘時の命令を行う指揮官。自身が先に破壊されないよう高い耐久値を持つが戦闘能力は劣る。

 戦闘不能となった場合、回収されないよう自爆する』


「〜〜〜!」


「やばっ!」


 このサイズのゴーレムが爆発して破片が飛び散るとかやばすぎる!


「えっと! えっと! <減重>!」


 で、扉の向こうへと蹴っ飛ばす!


「〜〜〜!!」


「リュ!」「ニャ!」


 パーンとシャルが扉を閉めてくれたので、手を添えて施錠!

 ……、……、……!!


「っ!」


 扉にコマンダーの破片がすごい勢いでぶつかり、すごい音と振動が手に伝わる。

 その振動もしばらくして収まり、


「はあ……終わったかな」


『良かったです……』


「まさか自爆するとは思わなかったよ。みんな大丈夫?」


「ワフ!」「〜〜〜♪」


 みんなが大丈夫なのを確認し、改めて扉を開けると、砕けたコマンダーの残骸があちこちに散らばって酷いことになっている。


「通路は大丈夫そうかな」


『天井の明かりもついてますし、この古代遺跡は稼働中なんでしょうか?』


「どうだろ? ニーナが保全状態だった時も、あかりがついてたフロアがあったし、古代遺跡によるんじゃないかな」


『なるほどです。だとすると、ここにも制御室があるかもですね』


「あー……」


 この古代遺跡も俺が管理者になっちゃう方がいいのかな?

 でも、あれってワールドアナウンスが流れちゃうだろうからなあ……

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