第415話 女神様を迎え隊

 ミオンの家からの帰宅は毎回椿さんに送ってもらっている。

 その車中、


「ショウ君。部長には……話しますか?」


「ミオンと合流できたらね。ベル部長とセスに隠し通すのは無理そうだし」


「はぃ」


 ミオンが無人島スタートできた南の島。

 スタート地点は海上に建てられた長屋……水上コテージっていうんだっけ? ああいうのがずらっと並んでて、リゾート地なのかなって感じだったけど。

 まあ、コテージっていうには家具も何もなかったし、中央にあった採掘プラント(?)のおまけみたいな感じだった。


「……ファンの皆さんには?」


「いや、それはしなくていいかなって思ってるけど……ミオンはどう?」


「はぃ。今まで通りが……」


 二人ともPV採用設定も都度選択にしてあるので、そこの部分は隠せると思う。

 ミオンも俺と一緒にのんびりが目標だということで、ライブ以外の時に二人でまったりゲームできればかな。


 ………

 ……

 …


「じゃ、今日はラムネさんの島のダンジョンへ?」


「ええ、向こうからのお誘いでね。レオナさんもいいって言うし」


「レオナ殿はケット・シー目的であろうがの」


 と笑うセス。

 午後8時からの魔女ベルのライブはお休みで、ラムネさんのライブにゲスト出演って感じらしい。

 で、ヤタ先生も不在っと。ということは、こっちの状況を確認することもないよな……


「では、そろそろ時間かの」


「ええ、じゃ、行ってくるわね」


「頑張ってください」


『後で見ますね』


 IROへ行く二人を見送ってから、ミオンと頷きあう。

 今日のうちにミオンと合流できればベストだけど、少なくとも転移魔法陣の先があの島だっていう確証は得たいかな……


 ………

 ……

 …


「よしっと。スウィー、ありがとな」


「〜〜〜♪」


 神樹経由で山小屋へと帰宅。

 荷物を置いて、まずはニーナに相談を。


「ニーナ。ちょっと今から南洋なんとかの転移魔法陣を使って、そっちの様子を見に行ってみるから」


[はい。古代遺跡の管理体制に変更はありますか?]


「ううん。今まで通りで大型転送室に誰か来ても、ニーナが知ってる人以外は通さないようにね」


[はい。了解しました]


 これで島は大丈夫。

 あとは、誰を同行させるかだけど、ルピは当然として、


『シャル君にスウィーちゃんを護衛してもらった方が』


「なるほど。ルピ、ちょっとシャル呼んできてくれる?」


「ワフッ!」「「バウ!」」


 駆け出すルピと追いかけていくレダ、ロイ。

 その間に保管庫に置いてあるヒールポーションを取り出して、インベントリに詰める。

 空間魔法の収納拡張はオフにして最大MPを増やしておこう。


「〜〜〜?」


「え? 何しに行くのって? まあ、女神様を迎えに?」


『ぁぅ』


 スウィーがミオンを見たらびっくりしそうな気がするんだよな。あとシャルも?

 というか、妖精は翡翠の女神様から生まれたとかいう話があったけど、翡翠の女神=ミオンになったのって、ゲーム内に影響出るのかな?


「ワフン」


「ニャ」「リュ」


 ルピに連れられて、シャルだけでなく、パーンもやってきた。


「お、ありがとう。シャル。これからちょっと冒険に行くから、スウィーの護衛としてついてきてくれる?」


「ニャ!」


 ビシッと敬礼するシャル。

 で、期待の眼差しのパーン……


「えーっと、戦闘になることがあるかもだけど、パーンも一緒に行く?」


「リュ!」


 そのつもりだったのか、持ってきた鍬をぐっと掲げて「もちろん!」とやる気満々な返事。

 皆に行き先を軽く説明はしたけど、実際に転移魔法陣の先がどうなっているかは、全くわからない。

 大型転送室に向かう途中、とにかく無茶はしないように念を押す。


『ショウ君。パーティの確認を』


「りょ」


 俺、ルピ、レダ、ロイ、ラズ、スウィー、パーン、シャルの8人パーティになっているのを確認し、転移エレベーターを下りる。


「さて、行けるといいんだけど……」


 南洋の島へと繋がるらしい転移魔法陣の前まで来て、封印代わりにおいてあった石壁の蓋をどけた。


「じゃ、みんな乗って」


「ワフ」「「バウ」」「〜〜〜♪」「クルル〜」「リュ!」「ニャ!」


 1m四方の転移魔法陣の上に、みっちりと集まって乗ったところで、


「行くよ」


 発動してくれよと願いつつ、転移魔法陣にMPを注ぎ込む。

 ゆっくりと光が溢れ始めたので、これは転移できそう。

 ふっと体が軽くなって……


「ん……。お?」


「ワフ」「「バウ」」


 出た先はどうやら古代遺跡の中?

 うちの古代遺跡と似た作りで、天井がうっすらと光っている。

 ルピ、レダ、ロイがスッと前へと出て警戒してくれるんだけど、広さ的には部室ぐらいで正面には扉が。


『ここって、あの塔の内部でしょうか?』


「多分そうだと思う。とりあえず、あの扉を開けて外を目指すよ」


『気をつけてくださいね』


「うん」


 まずは精霊の加護をかける。

 次にスウィーに念の為、光の精霊のあかりを出してもらう。


「俺とルピが先頭ね。スウィーはシャルと一緒に真ん中で。最後尾はパーンとレダ、ロイでお願い」


 後ろから襲われるってことは、しばらくはないだろうけど、道が分岐したあとが怖いからなあ。


「さて、これって普通の扉?」


『いえ。死霊都市で見た権限が必要な扉だと思います』


「マジか。ってことは、少なくとも死霊都市のワールドクエストが終わった後じゃないと来れない場所なんだろうなあ」


『でも、この島からスタートした人はどうやってその扉を開けるんでしょうか?』


「俺の時みたいにアンデッドが持ってるとか?」


『……』


 その答えにミオンがちょっと身震いしている雰囲気が。

 女神様なんだし、アンデッドは浄化しちゃえばいいと思うんだけどね。


「って、また忘れるところだった」


 アンデッドがいそうなら、みんなに神聖魔法の方の加護もかけておいた方がいいだろう。

 俺が精霊魔法の加護と干渉しちゃうかなと思ったけど、特に問題なく二重にかかってるっぽい?

 ただ、秒間のMP消費も両方分になって回復ペースが……


「そうだ。こういう時に食べるものだった」


「〜〜〜!」


 インベから出したライコスの花蜜漬けに真っ先に飛びついたのはスウィー。けど、今回は味わうよりも、MP回復のさらなるアップが目的。

 そして食べてみてわかる、MP回復60秒につき+5(1時間)、抗疫II(6時間)のやばさ……


「よし! じゃあ、女神を迎えに行くよ!」

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