第407話 思いがけない遭遇

 夜も浴室のリフォームの続きを黙々と続けた結果。


「よし、綺麗になった!」


「リュ〜♪」「ニャ〜♪」


 手伝ってくれたパーンたち、シャルたちとハイタッチ。

 最後のタイルを貼り終え、浴室は見違えるほど綺麗になった。


『やっぱり明るくなると雰囲気も変わりますね』


「だね。黒ずんだ壁やら床やらは見てて気分のいいもんじゃないし」


 昼に代わりのタイルを作りまくったおかげで陶工スキルが7になった。

 ここしばらく焼き物は小瓶ぐらいしか作ってなくて、あんまりレベル上がってなかったもんなあ。

 さくっと片付けを終えたところで、


「〜〜〜♪」「クルル〜♪」


 スウィーとラズがやってきて両肩を占拠する。

 その表情は明らかに、


『おやつの時間ですか?』


「そうだね。さすがにちょっと疲れたし」


 ずっと同じ姿勢でいると疲れるのはIROでも一緒らしい。

 レッドマルスのタルトでVITにバフつけとけば良かったかな……


 ………

 ……

 …


 みんなでおやつを食べての休憩終わり。


「今って9時過ぎぐらい?」


『はい。もう少しで9時半です』


「じゃ、家具用に木材の確保だけしようかな」


 水路の向こうの森。

 水辺の樹を伐採して少し見通しが良くなったけど、少しずつ広げていきたい気持ちもある。


「あ、そういえば水車を作る話も残ってた……」


『夏休みのうちにゆっくりやりましょう』


「まあ、そっか」


 引越ししてからゆっくりやることにしよう。

 そのためにも、まずは伐採だよな。


「リュ!」「「「リュ〜」」」


 パーンとウリシュクたちはスタンバイオッケーって感じ。

 切った木の枝をはらってもらったり、皮を剥いでもらったりを任せられるのが、すごい助かる。


「ニャ!」「「「ニャー!」」」


 シャルたちも手伝ってくれるっぽい。となると、


「「バウ!」」


「レダとロイもよろしくね。あ、そうそう、森は奥まで行かないように」


「ワフン」


 あとは、


「〜〜〜♪」「クルル〜」


「はいはい」


 二人もついてくるのね。

 いつものように左肩にふんぞりかえるスウィーと、フードにおさまってゆらゆら楽しそうなラズ。

 みんなでゾロゾロと水路まで来て、前と同じ場所を渡る。


『気をつけてくださいね』


「うん。ルピ、レダ、ロイ。警戒お願い」


 森の中へと散っていくルピたちを見送り、しばらく感知共有をかける。

 やっぱり前に気になってたあたりを重点的に見回ってくれてるな。

 パーンたちはさっそく下草刈りをし、それをシャルたちが運んでくれている。


「じゃ、このあたりから始めるから、樹の倒れる方向には注意してね」


「リュ!」「ニャ!」


 ………

 ……

 …


 スウィーに選んでもらった樹、そこそこ大きなやつを2本切り倒したところでちょっと休憩。

 こっちも久々に伐採スキルのレベルが上がって7になった。

 斧スキルが5のままなのは、やっぱり戦闘に使ってないからかな。


「みんなもちょっと休憩しよう」


 休憩と聞いてと言わんばかりにスウィーとラズもやってきて、おやつを催促する。さっきも結構食べたと思うんだけど。


「ルピたちも呼んで……ん?」


 感知共有をかけると同時に、ルピたちの気配感知に引っ掛かる何かが……


『ショウ君?』


「ワフッ!」


「シャル! ここでみんなを守って! パーンたちも危なくなったら屋敷へ!」


「ニャ!」「リュ!」


 ルピのいる方へと駆け出す。

 インベントリから剣鉈と円盾を装備し、精霊の加護も発動。

 この気配は……


「グルアアア!」


『あっ!』


 随分久しぶりのアーマーベア。

 けど、今回はさすがに海に落とすわけにもいかないし、ガチでやり合うしかない。


「ウウゥー!」


 四肢を踏ん張ってうなるルピ。

 レダとロイも左右に陣取って、攻撃の機会を窺っている。


「〜〜〜!」「クルッ!」


 スウィーとラズが離れたのを確認し、盾を構えてルピの隣に並ぶ。

 しまったなあ。これ、初撃は隠密からバックスタブを打てば良かったかも。


「ガアッ!」


「んっ!」


 ギィーンと硬質な音がして、アーマーベアの爪を魔銀ミスリルの円盾が弾く。

 前は重いと感じた打撃も今回は問題なく弾くことができてる!


「バウッ!」


 体勢を崩したアーマーベアに襲いかかるロイ。

 脇腹への爪の一撃に、そちらを向くアーマーベアだが、今度は反対側からレダが襲い掛かる。さらに、


「クルッ!」


 木の上からラズが放った火の矢がアーマーベアのこめかみのあたりにヒット!

 上を向いたら下から、下を気にしたら上からと、アーマーベアを追い詰めていく。


「ガウッ!」


 ルピのクラッシュクローが膝裏にヒットし、よろめくアーマーベア。

 チャンス!


「<急所攻撃><加重>!」


 振り下ろした剣鉈に加重を掛けて、一気に叩きつける!


「グギャアァァ!」


 肩口に大ダメージを負ってのけぞるアーマーベア。

 ここで倒しきらないと、また変態するかもしれないし、一気に決める!


「みんな! 目を閉じて!」


 光の精霊を使って目潰し! からの隠密発動! そして、後ろに回って、


(バックスタブ!)


「グゴゥッ……」


 延髄に剣鉈を叩き込むと、アーマーベアはそのまま前のめりに倒れた。


【キャラクターレベルが上がりました!】

【盾スキルのレベルが上がりました!】

【隠密スキルのレベルが上がりました!】

【空間魔法スキルのレベルが上がりました!】

【特殊剣マスタリースキルのレベルが上がりました!】

【重力魔法スキルのレベルが上がりました!】


「ふう……」


 無難に倒せたけど、エリアボスってわけじゃないっぽいな。などと思っていると、


 ガサガサガサッ! ドサッ!


「うわっ!」


『えっ!』


 倒したアーマーベアの上に落ちてきたのは……なにこれ? 葉っぱの塊?

 スウィーやラズが落としてきたわけじゃないよなあと見上げると、


「〜〜〜!」


「え? 妖精!?」


 降りてきたスウィーが敵じゃないと叫んでいて、どうやら光の精霊の目潰しを食らっちゃったらしい。


『ショウ君、鑑定を』


「う、うん」


【ギリー・ドゥー:気絶】

『森の妖精。善良でおとなしく、深い森にひっそりと暮らしている。木の葉や苔でできた服を着ているため、見つけることは非常に難しい』


 うわ! まずいまずいまずい!


「スウィー、どうしたらいい?」


「〜〜〜♪」


「わかった。しばらく安静にしてればいいらしいから、とりあえずシャルたちのところまで運ぶよ」


『はい!』


 この葉っぱの塊みたいなのは服?

 うつ伏せに倒れているのを抱え上げると、長い黒髪の少年っぽい顔がうかがえる。

 この子、俺やルピたちの気配感知に引っ掛からなかったけど、隠密スキル持ってたりするのかな……

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