第408話 恥ずかしがり屋な森の妖精

「ミオンごめん。時間オーバーしてそうだけど……」


『大丈夫です。私もその子が心配ですし』


 多分、11時は回っちゃうよな。

 森の妖精ギリー・ドゥーを抱え、シャルたちのところまで戻ってきたんだけど、スウィー曰く、木陰の方がいいとのこと。明るいところは苦手とか?


「〜〜〜♪」


「あー、うん、わかった。じゃ、アーマーベアを解体してくるよ」


 スウィーがパーン、シャルたちと介抱するというので、アーマーベアのところへと戻る。

 ルピたちに見張りをお願いしてあるので大丈夫だろうけど、別のモンスターが来るかもだし。


『びっくりしました。ショウ君もルピちゃんも気づいてなかったんですよね?』


「うん、全然。あ、いや、前に来た時にルピが不審がってたことがあったけど、その時もいたのかも」


 俺たちがこの森に来たのを見張ってたのかな?


「ワフ」


「さんきゅ、ルピ。レダもロイもね」


 しっかりアーマーベアを確保してくれていたので、さくっと解体。肉、骨、皮と中サイズの魔石をゲット。

 今回変異しなかったのは、やっぱり一気に倒したからかな? 解体で取れる皮の性能を考えると変異させた方が良かった?

 同じようにマントを作ってみて、スキル補正を確認するのが一番なんだろうけど、それよりは鎧を新しくした方がいいか。


「はい、これご褒美ね」


 ルピたちが熊肉をじっと見つめてるので、一番良さそうなところを分けてあげる。

 アーマーベアの肉、ちょっとクセがあるんだけど、ルピたちは平気っぽいんだよな。


「クルル〜」


「おっと、ラズもありがとね」


 木の上から肩へと降りてきたラズがほっぺすりすりでご褒美を要求。

 ラズもしっかり連携して戦ってくれたし、小ぶりのレグコーンを丸々一本あげよう。

 みんなが食べている間に、気配感知でしっかり周りを確認してみたんだけど……もう何もいないよな。


『まだ何かいますか?』


「ううん。もういないと思う……」


 気配感知スキルはもうレベルMAX。それでも気づけないってなると、もっと上位スキルが必要なのかな。


「ワフン」


「ん。そろそろ戻ろうか」


 慌てて戻るとあの子を驚かせちゃいそうだし、ゆっくりと穏やかな足取りで。

 まずは謝らないとだよなあ……


「〜〜〜♪」


「あ、気がついたんだ。えっと……」


 パーンの後ろに隠れてこっちをうかがうギリー・ドゥー。

 俺たちに敵意がないことはスウィーがちゃんと説明してくれたらしいけど、めっちゃ警戒されてる。


「ゥゥゥ……」


「えっと、ごめん。君が木の上にいるのに全然気づいてなくて……」


「〜〜〜?」


「あ、うん。あるよ」


 スウィーに言われたので、とろとろ干しパプを木皿に盛って渡す。


「〜〜〜♪」


 えっと、それをスウィーが食べるのは、安全だよって見せるためだよね? 自分が食べたいからじゃないよね?


「リュ〜」


 パーンが美味しいよと渡し、おずおずとそれを受け取って口へと運ぶと、


「ゥ!」


 すごい勢いで食べ始めた。

 お腹空いてたのかな?


「おっと、シャルたちもありがとう。これ食べて」


「ウミャ〜」


 おやつ代わりのめざし(小魚の干物)をシャルたちに配る。

 やっぱり「美味い」って言ってるように聞こえるんだよな……


「〜〜〜♪」


「ゥゥゥ」


『スウィーちゃんは何を?』


「この森に住んでるの? とかそういう感じかな」


 俺とルピたちはちょっと離れたところに座って、小声でミオンと会話。

 ルピ、レダ、ロイと順番に撫でながら、スウィーとギリー・ドゥーの話に耳を傾ける。


「この森にそれぞれ縄張りっていうか、担当があるんだって。彼は比較的安全なこのへんを任されてるらしいけど」


『え? でも、あの熊が……』


「たまに現れてふらふらしてたみたい。別の区画の担当? 仲間に警戒するように連絡とかするっぽいよ」


『そうなんですね』


 前回は俺たちが警戒されてた方なのかな? まあ、見ない顔だし警戒して当然だよな。


「ゥゥゥ?」


「〜〜〜♪」「リュリュ〜」「ニャーニャ」


 まあ、俺たちの素性は気になって当然だよな。

 で、やっぱり俺がこの島の主みたいなことをスウィーもパーンもシャルも言ってるっぽいし……

 俺たちへの警戒心もとけたのか、パーンの後ろから出てきて、とろとろ干しパプをもっと食べたそうな様子。


「リュリュ」


「ゥゥゥ」


 それを察して皿ごとギリー・ドゥーの前へと持っていくパーン。やっぱり兄貴分的なところがあって頼もしい。

 なんだかんだと15分ほど話し合って、さすがにそろそろ時間がなあと思ってると、


「〜〜〜?」


「え? アーマーベアの骨が欲しいって? もちろんいいけど、ちょっと待ってね」


『何かに使うんでしょうか?』


「どうなんだろ。討伐されたって証拠みたいな感じかも?」


 俺たちがアーマーベアを倒したって話を仲間にするにしても、証拠が必要だろうし。

 ミオンに答えつつ、インベントリからアーマーベアの骨を取り出す。結構でかいし、量もあるんだけど……


「これ、全部持って帰れる?」


「〜〜〜?」


「ゥゥ、ゥゥ」


 こくこくと頷いて、着ている木の葉を纏ったマントから、折りたたんである麻袋を取り出した。で、一番大きな骨だけを入れて満足したっぽい?


「他はいいの?」


 とスウィーに通訳してもらったんだけど、それでいいらしい。俺たちが倒したことを伝えるために仲間に見せるんだとか。

 そういうことなら……


「スウィー、残りの干しパプってあげちゃっていいよね?」


「〜〜〜♪」


「リュリュ」「ニャニャ」


 スウィーがオッケーってことで、パーンとシャルが余った分をギリー・ドゥーに渡す。なんかスウィーの気が変わらないうちにって言ってるし……


「ゥゥ、ゥゥ」


「今日は本当にごめんね。また、遊びに来てくれるとみんなも喜ぶから」


「〜〜〜♪」「リュ〜」「ニャ〜」


 何度も何度も頭を下げてから、森の奥へと帰っていくギリー・ドゥー。

 また来てくれて、この森のこともう少し詳しく聞けたらなあ。

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