金曜日
第406話 お金以外の報酬案
『今のところはプレイヤーよりもケット・シーの方が多い感じかしらね』
「確かにナットも猫島って言ってましたね」
ベル部長がミオンのスタジオに来ていて、昨日のライブの話をしてくれている。
ちなみに、俺はひたすら浴室のタイルを剥がしているところ。洗ってどうにかと思ったんだけど、タイル=陶器なわけで、陶工があるなら作った方が早いよなってなった。
『島への入場制限って大変な気がしますけど、どうしてるんでしょう?』
『ファンクラブの人が交代制でやってるそうよ』
条件としては、どこかのプレイヤーズギルドに所属していて、かつ、訪れる際に竜貨を一人一枚預けることが前提らしい。で、ラムネ島で粗相があった場合は没収と……
竜貨はこれからのワールドクエストでも使われそうなアイテムだし、竜の都に行けるようになったら絶対に必要だろうしなあ。
「うまい考えっすね」
『アンシアさんのアイデアらしいわよ。ラムネさんがそう言ってたもの』
「はは……」
ちなみに今日、美姫はナットん家、奈緒ちゃんの家庭教師に行っている。
学校がある間は日曜だったけど、夏休みの間、宿題が終わるまではそういうことになったらしい。
8月頭から美姫が俺らの合宿についてきたりするもんな。
「ふう、これ持っていって」
「ニャ」
剥がした古タイルは木箱に入れ、ある程度溜まったらシャルたちが外へと運び出してくれる。裏庭でまとめて処理するためだ。
『部長たちは島の観光だけですか?』
『ええ。一応、古代遺跡や噂の作りかけの船とかを見せてもらったけど、攻略はあくまでラムネさんが主導でやるべきだと思うもの』
「それってレオナ様が暇そうにしてたんじゃ……」
『そうでもないわよ? あの人、結構可愛いもの好きだから……』
とのこと。
ケット・シーたちをずっと愛でてるだけで満足してたらしい。
気持ちは良くわかる。俺もルピたちを愛でてるだけで満足するし。
「リュ」
「さんきゅ」
パーンが最後のタイルを剥がし終わり、床と壁が剥き出し状態になった。
石膏ボードみたいなこれって石壁の応用かな? 建築スキルがゲットできればわかったりしそうなんだけど。
『船はどうでした?』
『私はその辺は詳しくないけど、うちのメンバーで気にしてた人も多いから、図面のコピーはもらって来たわよ』
船はキャラック船って呼ばれるサイズのもので、まあまあ荷運びとかできるサイズになるんじゃないかと。
とはいえ、今のところそれが有用そうなのって、海に面してる王国、共和国、そして、魔王国かな?
「そういえば、魔王国アップデートがあったけど、そっちには行ってないんですね」
『始めたばかりの人も多いから、今行くのもちょっと気を使うわね。もう少し落ち着いた頃を考えているわ』
『あの……お義姉さんはどうしてるんでしょうか?』
そういやそうだ。
マリー姉、魔王国一番乗りとかしてたわけだし、やっぱり魔王国の王都まで行ったりしたのかな?
『マリーさんなら、一昨日、アミエラ領に来て、レオナさんとドワーフのダンジョンに行ってたりしてたわよ』
「えー、なんか珍しい。魔王国の次は竜の都とかに突撃しそうなのに……」
『シーズンさんが一度戻りたいって話でね。装備品もよくできるだろうしって』
『なるほどです』
うわー、何から何までホントすいません。
もうこれ、お中元とか送ったほうがいいレベルなんじゃ……
『それで、そろそろそっちの話を聞かせて欲しいのだけど。昨日は蒼竜が来たのよね?』
「あー、はい。ピアノを直せないかって話とプレイヤーズギルドの話が主に」
白竜姫様も一緒に来たこととか、ドワーフならピアノを直せるかも、直せなかったらギルドを作って、死霊都市でプレイヤーに依頼するかとか、そのあたりの話を。
転移魔法陣については、いろいろとわかるまでは伏せる方向で。
『部長はショウ君がギルドを設立するのは賛成ですよね?』
『もちろん、うちが全力でバックアップするわよ!』
と乗り気。
俺がピアノの修理依頼を出したとして、『白銀の館』で受けてくれるのが一番安心ではあるんだよな。
『でも、うちでピアノを直せるかどうかは、実物を見ないとかしら。あと、調律ができる知り合いもいないわ』
「うーん。とはいえ、素性もわからない人に頼むのもなあ。ピアノ盗られちゃう可能性もあるし……」
『さすがにそれはないと思うわよ? ショウ君を敵に回すと竜族が敵に回るんだもの』
『そうですよ』
えー……、と思ったんだけど、確かにアージェンタさんとかめっちゃ怒ってくれそう。うん、なんかやばい気がするな。
「一応、今度のライブの時にでも視聴者さんにいろいろ聞いてみます」
『いいと思うわ。二人のチャンネルは視聴者参加型のライブは無理だと思ってたけど、依頼の形なら参加可能になるものね』
なるほど……
でも、それをやるとして、
「依頼の報酬ってどうすればいいんでしょう? 俺、ゲームのお金持ってないっすよ」
『ショウ君が作った武器とかはどうですか?』
『あとは島の野菜や果物とかかしら? でも、鮮度の問題があるから、ドライフルーツなんかにして……』
そんなものでいいのかな?
あー、大人相手ならお酒とかもありか。ってか、アージェンタさんならお金持ってそうだし、別に代払いでもいいよな。
「リュ?」
「ああ、ごめんごめん」
考え込んじゃってたせいで、パーンが「大丈夫?」と心配してくれる。
古いタイルは粒化で細かくし、水で洗ったのちに赤粘土と混ぜて再利用の予定。
『あとは、ショウ君が作った翡翠の女神の木像とかどうかしら?』
「それは……なんかミオンを渡すみたいで嫌です」
『ぁぅ……』
死霊都市のは教会に飾ってるし、竜人族の人たちがちゃんと管理してくれてるからいいけど……
『はいはい。じゃあ、ルピちゃんの木彫りとかどう?』
「まあ、それなら……」
そういえば、ルピやスウィーの木彫りを作ろうって話もあったんだよな。
今度、天気が悪い時にでもやってみよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます