第405話 期待値が高すぎる件
「すごいね。これ、全部ショウ君が直したの?」
屋根を修理し、壁板も新しくなっている屋敷を見て驚くアズールさん。
「パーンたちにもだいぶ手伝ってもらってです。裏庭の花壇とかはスウィーたちが熱心にやってくれてますし」
「〜〜〜♪」
俺の言葉に白竜姫様の肩でふんぞりかえる女王様。
スウィーたちとは言ったものの、実際に作業してたのはフェアリーズとウリシュクたちな気がするけど。
「こっちです」
玄関から入ってホールを右手側へと進む。
二人を招く前に床を張り替えておいてよかった。
蔵の扉を開けると、中にしまってあるピアノが現れる。
「へー、これかー」
「これなにー?」
「ピアノっていう楽器。今、壊れてて鳴らないけどね」
白竜姫様知らないのかな? 覚醒モードなら知ってるけど、とかそういう感じなのかも?
ミオンはピアノ弾けるらしいけど、白竜姫様に教えてあげたりできたら……すごく絵になりそうな気がする……
「じゃ、これ見てもらうのに、しばらく預かってもいい?」
「はい、お願いします。って、どうやって運びます?」
アズールさんが蒼竜の姿に戻って……だと、ちゃんと梱包しないと輸送中に壊れそうな気がするんだよな。
「僕たちがいつも来る場所に、大きな転送魔法陣があるでしょ。あれを使って、こっちから竜の都に送るのがいいかなって」
普段やってくる転移魔法陣はサイズが小さくて持っていけないとのこと。
アズールさんが転送の魔法を使ってもいいんだけど、そこは設置されてる魔法陣を使う方が安全かつマナコストも安く済む。
なんで、あの転送魔法陣を使って送るのが一番だと。
「あれってこっちからも送れるんです?」
「ニーナさんに頼めるかはわからないけど、僕が転移魔法陣を使えば向こうに送れると思うよ」
「なるほど」
『ショウ君。ギルドカードの魔導具の話を』
あ、そうだった。ここに置いたままだったし、あれも見てもらおう。
「アズールさん。これ知ってます?」
横の方にしまってあった木箱から『魔導証明書管理機』を見せる。
魔導証明書、いわゆるギルドカード(未使用)の束も。
「ああ、これ随分前に見たことある気がするけど、全部人族に譲っちゃったやつだ。これでギルドを管理してるんだね」
「らしいですね」
ギルドの機能というか、ギルドカードの機能を簡単に説明。
ただ、俺自身は使ったことがないので、あくまで聞いた話だということも。
「全部譲っちゃったってことは、竜族では使ってないんです?」
「そうだね。普段からアージェンタに任せきりだし、それでなんとかなってるもん」
アズールさんはそう言ってるけど、実のところはアージェンタさんが苦労してなんとかしてるんじゃ……
「ショウ君がギルドを設立する時に使うってことでいいんだよね」
「はい」
「じゃあ、僕もギルドに登録してもらえる?」
「そ、そうですね。俺がすぐ連絡を取りたい人っていうと、アージェンタさん、アズールさん、バーミリオンさん、かな?」
その言葉にニコニコになってくれるアズールさん。
「楽しみにしとくね〜」
なんかこう、頻繁に連絡が来そうでちょっと……
アージェンタさんは、そのあたり、気をつかってくれそうで安心なんだけど。
「おっと、じゃ、さっそく運ぼうか」
「あ、持てます?」
「もちろん。って、その前に姫様?」
あれ? さっきまでいたような……
『お話してる途中でいなくなったみたいです。ルピちゃんがついて行きましたよ』
女神様からお告げがあったので、廊下に出て左右を見回すと、ホールのところでルピがお座りし、こっちを見ている。
「ワフ」
「ん?」
そこまで行くと、こっちこっちと……寝室の方へと。
今は床の張り替えがあったし、何もおいてなかったと思うけど、
「『あ……』」
レダとロイに抱きついて寝ちゃってる白竜姫様が。その上にスウィーが大の字でいびきをかいてるし……
まあ、この部屋って窓が南にあって、天気がいい日は暖かいからなあ。
「ショウ君。ここで姫様を見ててくれる? 僕、その間にピアノをあの場所まで運んじゃうから」
「あ、はい。お願いします」
アズールさん一人で大丈夫かなって思ったけど、翡翠の女神像も軽々運んでたし大丈夫だよな。
それはそれとして、レダとロイが「どうします?」みたいな目をしてて……うん。
「ごめん。もうしばらく寝かせてあげて」
………
……
…
アズールさんにピアノを運んでもらい、戻ってきたところで白竜姫様もお目覚めに。お腹いっぱいになって、ちょっとうたた寝してたってあたりかな。
レダとロイをしっかりと褒めてあげてから、みんなで大型転送室へとやってきた。
「ニーナ。この大きな方の魔法陣って、向こうから来るだけじゃなくて、向こうに送れもするの?」
[はい。非生物であれば転送可能です。ただし、転送先に障害物がないことが前提です]
「やっぱりニーナさんすごいね。一応、向こう側には何もないのは確認してあるから、今あるピアノを送ってくれる?」
[はい。ショウの許可があれば実行します]
「うん。送ってくれるかな」
[はい。了解しました。転送します]
ニーナがそう答えた瞬間、大きな魔法陣が淡く光り、次の瞬間にはピアノが消えていた。
本当にあっという間に送れるもんなんだ。
『すごいですね』
ミオンに頷く。
やっぱり転送の魔法使えるようになりたいなあ。
もっと空間魔法を普段から使うようにしないと……
「じゃ、僕たちもそろそろ帰るよ。姫、おみやげもらったの、ちゃんとありがとう言おうね」
「お兄ちゃん、ありがとー!」
「うん、またね」
「〜〜〜♪」
「バイバ〜イ」
転移魔法陣へと乗って、竜の都へと帰っていった。
これで南の方に繋がってる転移魔法陣と、ピアノの修理の件は結果待ちかな。
あと、こっちでやっておけそうなことというと、
「ギルドどうしようかな? アズールさんもアージェンタさんも随分期待してたみたいだし……」
『ライブで聞いてみるのはどうですか?』
「ライブかー。そっちでも、みんな作ってって言いそうな気がするんだよね。それで依頼が増えて忙しくなるのは、なんか違う気がするし……」
のんびりできなくなるのは良くない。
なんか、のんびりする気があるのかって言われそうな気もするけど……
『あの、こちらから依頼を出すだけでもいいんじゃないでしょうか?』
「あ、そうか。ま、それでいいか聞いてみようか」
『はい!』
今からギルドの名前、考えておいた方がいいのかな……
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