第404話 無人島の定義とは?
「なるほど。じゃ、シャルたちは元気にしてるって……伝えられますかね?」
「どうかしらね? まあ、ラムネさんには話しておくわよ」
夜になってバーチャル部室に来ると、ベル部長の今日のライブはシトロン王国、つまり、ラムネさんの島に行くことになったらしい。
なんでも、向こうから「遊びに来ないの?」って話があったんだとか。
『レオナさんやアンシアさんもですか?』
「レオナさんは来るわよ。でも、アンシアさんはゲームドールズの人たちがいい顔をしないからパスですって」
と苦笑いのベル部長。
そういや、ハルネ聖国が滅亡した時にいろいろあったんだっけ。
あれ? でも……
「ゲームドールズの人たちが確保してた転移魔法陣を買ったみたいな話、ありましたよね?」
「あれも代理人を使って買ったあとに判明したらしいわよ。アンシアさんが行くと警戒されるからというのもあるのでしょうけどね」
「まあ、わかりますけど……」
そんな話をしてからベル部長とセスを見送る。
俺たちに関係ないといいんだけど、島にある転移魔法陣のうち、今日アズールさんに見てもらうやつがなあ……
***
[よろしいでしょうか?]
山小屋の隣、土間でアズールさんを迎えるための料理をしていると、ニーナから声がかかる。
「あ、うん。アズールさん来た?」
[はい。アズール、および、アルテナが大型転送室に転移してきました]
白竜姫様も来たのか。
アズールさんが一人で来ようとしたら見つかったって感じかな?
おみやげ用の甘味を用意してあったからいいとして、
『ショウ君、迎えに行かないんですか?』
「ちょっと、今、手が離せないっていうか、火を扱ってるし……」
もうこっちに向かってもらうようにニーナに言おうと思ったら、
「ワフ」「クルル〜」「〜〜〜♪」「ニャ」
「ああ、迎えに行ってくれるんだ。ありがとう。ニーナ、よろしく伝えて」
[はい。了解しました]
ルピ、ラズ、スウィー、シャルが迎えに行ってくれるというのでお任せで。
俺は俺でこの間もらったソーダウシス(ソウダガツオ)で宗田節……ソーダ節を作れるか試しているところ。
『鰹節って作るの大変なんですね』
「すごい手間だけど、一度うまくいけば量産できるからね」
『あ、そうでした』
料理マスタリーがあってホント助かる。
作り方としては、いったん煮てうまみを凝縮させ、次に骨を抜いてから、燻製にするっていう感じ。
骨をせっせと抜いて、今は燻製にしてるところだけど、いぶす火加減を調整中……
「おーやーつー」
「『あ』」
白竜姫様の声に階段の方を見ると、走ってくる白竜姫様と追いかけるルピ、ラズ、スウィー、シャル。
アズールさんはもう諦めムードで歩いてるし……
「おやつ!」
「いらっしゃい。そこに座って」
「はーい」
出すのはお昼に作ったパプの実のバターソテー、アイスクリーム添え。
一度、干しパプにしたものの皮を剥いてからバターで炒め、アイスを落としたもの。
隠し味にパプ酢と空砂糖を煮詰めた甘酢を少し垂らしてあるのがポイント。
「ごめんね、ショウ君」
「いえいえ。アズールさんもどうぞ。あ、これお酒少し入ってるんで」
遅れてきたアズールさんも席に着いたので、同じものにパプ酒を垂らしたやつを。
「やった!」
『お話は食べ終わってからですね』
「だね」
ま、今日は時間もあるし、ゆっくりでいいかな。
………
……
…
おやつを食べ終わり、白竜姫様はスウィーとラズを肩に乗せてお散歩に。万一があると困るので、レダとロイをお供につけた。
で、ピアノは帰りでいいと思うので、まずは例の南洋なんちゃらにつながる転移魔法陣の話を。
「ニーナ。南洋なんだっけ?」
[はい。南洋海底資源採掘施設です]
「おお、すごいね! って、いつの間にここでも話せるようになったの!?」
あ、うん。その話がまだでした。
まあ、それは魔導線を地道に引きましたよっていう話だけど。
「ニーナがここからの距離・方角・座標はわかるらしいですけど、アズールさん興味あります?」
「ある!」
ということなので、ニーナに説明してもらう。
正直、覚えてられないから……
「じゃ、今からその転移魔法陣が使えるか試してみる感じ?」
「あ、いや、それはちょっと避けたい事情が……」
もしその南洋のそれが無人島で、無人島スタートできるなら、ミオンがそこからスタートして、俺が迎えに行くことができるんじゃないかなと。
これなら誰にも見つからずに島にミオンを迎えに行くことができるはず……
で、転移魔法陣を使ってそれを確かめに行くと、無人島が無人島じゃなくなって、無人島スタートできなくなるかもだし。
「そうなの? じゃあ、僕が飛んで見てくるのがいいかな。ちょっと時間はかかっちゃうけど」
「それは全然。時間があるときにでもお願いします」
「了解。そこに行った時に確認しておくこととかある?」
「えっと、まずは誰か人がいる島なのかですね」
そもそも島なのか、無人島なのかが超重要。
「オッケー。空からぐるっと見て回るぐらいでいい?」
「ええ、それで十分です」
そこにいる動物とかを驚かせたりするのは、アズールさんとしても避けたいらしいのでちょうどいい。
上陸すると無人島じゃなくなるかもだし、この島からの方向、距離、島があればその形なんかを見て欲しいことを伝える。
「そっちはそんな感じで、あと壊れてるピアノの件なんですが……」
竜族はドワーフと知り合いだったはずだし、その伝手でなんとか直せればってところだけど。
「ピアノって楽器だよね? 一度、グラドっていうドワーフに見せてもいいかな? それで直せそうならいいけど、多分、彼らも使ったことないだろうし」
「それはもちろん」
グラドって名前、アミエラ領に来たドワーフだった気がする。
あの人なら直せそうな気もするんだけど、どうもピアノ弾くドワーフのイメージが思い浮かばない……
まあ、構造としては面白いし、興味を持ってくれそうではあるけど。
「でもって、それで直せない時って本土にいる人間に頼むんだっけ?」
「はい。その時はギルドを作ろうと思ってます」
「うんうん。アージェンタから聞いてるよ。竜族側の責任者は僕になるから、よろしくね!」
マジかー……
いやまあ、一番気楽に接することができる相手だけど。
「えっと、ピアノは今は屋敷の蔵にしまってあるんで……」
「〜〜〜♪」
向こうに行くなら白竜姫様もと思ったんだけど、ちょうど戻ってきたっぽい。
「じゃ、みんなで行きましょうか」
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